31話 幼女をお家に「も、もちろん…ボクは、犯罪者ではないよ!」By政田
物語上結構大切になってくる回なので慎重に書いています
起こさないようにゆっくりと体を持ち上げる。幼女特有の成人の人より少し高い体温が腕から全身に伝わる。
できるだけ揺らさないように、慎重に丁寧に……
よし、あとはこのまま誰にもバレずに家まで――
「――お、お前……な、何……やっとん……?」
「し、シゲ盛くん……!」
なんとスタートからたった2歩でのゲームオーバーだった。
すっかり日の暮れた、もう完全に冷たい風が吹いた。
今ボクは、寒さ以外の別の理由で小刻みに震えている。
「……うーん………ふぇっくしょん!」
少女も体が冷えてきたのだろうか、かわいいくしゃみと共に起きてしまった。
そして腕で目をこすったと思うと、ゆっくりと周りを見渡している。その時、少女は不意にシゲ盛くんと目が合ったようだ。シゲ盛くんはその少女と目が合うやいなや
「はろー、ぼんじゅーる、あにょはせよー、ぐーてんもるげん、こんにちは……」
と、小さく手を振っている。
だが、シゲ盛くんはだんだんと困ったような表情になってきた。少女の顔を覗いてみると、目にだんだん涙が溜まってきている。とりあえずこのままでは色々な意味で危険なので、ゆっくり優しく地面に下ろしてあげると、少女はボクの脚の裏に身体を隠してしまった。
「政田……一体なんなんだよ……」
シゲ盛くんはそれにだいぶショックを受けたようで、ガクリとうなだれて、そっぽを向いてしまった。背中からは哀愁が漂っている。
この場合はどちらを慰めればいいのだろうか。
「うーん、かくかくしかじか――」
とりあえずじっとしている訳にはいかないので、少女の頭を優しく撫でながら、シゲ盛くんに経緯を話す、という最も年齢に合った慰め方を実践してみるとしよう。
「――なるほど、つまりお前はこの子の命と自分の風評を天秤にかけた結果をやっているってことなのか」
とりあえず一件落着、シゲ盛くんも落ち着いてくれたようで、少女も涙が乾いている。
「うん、決してロリコンとかそういうことはないから」
これは大事なことなので念を押して言おう。ボクは完全な善意により家に連れて帰るという決断を下している。
「分かってるよ――」
ボクの熱意に呆れるように笑っているあたり、どうやらシゲ盛くんも納得してくれたようだ。そしてシゲ盛くんは勢いよく親指をピンと立てた。
「オレもロリコンじゃないから!」
なんだこのどうでもいい仲間意識は……
「……ぐぅっ!」
何故か少女も、身体の半分をボクの脚から出し、シゲ盛くんに合わせて親指をピンと立てている。本当の意味を分かってやっているのだろうか。
まあとにかく、そろそろ夜も近いし足早に家に戻るとしよう。
家に帰ることを少女に説明すると、少女は笑顔で頷く。
そして、ボクは合法的に少女と家に歩き出した。道中、少女がボクのズボンをグイグイ引っ張っていたので、手を繋いであげることにした。少し手が冷たい。シゲ盛くんの納得が早かったのが幸をなしたのか、どうやら風邪には至らなさそうだ。
そして歩きなれた道を進み、少し遠く感じたがやっと家に到着した。
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