29話 政田鷹留の自堕落
序章です
今日は三連休の月曜日、只今の時刻は午前9時。
三連休の月曜日とはなんと優雅なことだろうか。いつもは学校に行っているせいで見れないニュース番組がテレビで流れているのである。あぁいとをかし……それに外は晴天、どこを見ても青、蒼、碧である。窓から差し掛かる日差しのおかげで部屋の電気をつける必要もないし、その浮いた電気代をソシャゲの課金に回せる。なんと嬉しいことだろうか。
「さあ、今日も一日、頑張るぞい!」
そう言ってボクは、ゲームのコントローラーを握った。
「ほいや、そい!……」
PCゲーやソシャゲもいいけれど、やっぱりコントローラーを使って戦う格ゲー『大格闘スラッシュシスターズ』は最高だ。コンボ技が上手く決まった時の爽快感、スラッシュボールを取ったあとの必殺技までの駆け引き、そして画面に大きく『KO』という文字が出たときの達成感。オンライン対戦が止まらない。
もう12時? でも格ゲー止められねぇ!
だがさすがにそろそろ腹の虫がうるさくなってきた。時計を見ると14時、本当にゲームというものは恐ろしい。あまりに熱中しすぎるせいで時間感覚がなくなってしまうのである。
確か、冷蔵庫に……あった!
まあ、今日を見越して昨日の分の夕飯を少し多めに残しておいて正解だった。
ちなみに昨日の晩御飯はチャーハンである。鉄鍋を持っていないのでステンレスの鍋で作ったけれど、案外うまくできた。ちなみに味付けの塩と胡椒は、塩コショウではなく、塩と胡椒で分けるスタイルで作った。
冷蔵庫からチャーハンを取り出す。あとはラップを外してレンジでチン!
「あぁ、美味い……」
一日前のものだけど、旨みはしっかりと残っていた。パラパラのご飯粒が口の中で広がって……うん、美味い。
一瞬で食べ終わってしまった。
「――あ、そういやぁ……!」
ボクは咄嗟にタブレットを開く。危うく忘れるところだった。今日の昼からSSR確率大アップの『厨神祭』が来ているのだ。石は約1500個、新キャラは絶対に4体は確保しておきたいところ。さあ行け――
「――あぁ、終わった……」
1時間後、ボクはリビングに大きく横たわっていた。
決して別の意味ではない。単純にガチャが終わったのである。結局新キャラが5体、限定キャラが合計12体という結果に終わった。まあ、そこそこの引きだ。
「…………暇だな」
もう石はないし、別に課金する意味もないし、格ゲーも十分にやったし、PCゲーももう上の順位がないし……
それにしても、本当に一人暮らしは最高だ。こんな風に好きな時に好きなことができて、自由というか、のんびりというか、幸せというか……
「空もこんなに明るくて……ボクの心もこんなに晴れやかで……」
いつの時代の詩人だよ……
――いかんいかん! このままだと暇すぎて短歌100首くらい簡単にできてしまう。政田百人一首ができる前に何かやらなくては……!
「そうだ! 散歩にでも行こう!」
散歩でもしていればひとつくらいは面白い何かに出会えるはずだ。こんな暇な日常に大きな刺激を与えるような――
思い立ったらすぐ行動、靴を履き、鍵を閉める。
こうして、ボクは何かを探す小さな旅に出かけた。
☆☆☆
食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ、食う寝る遊ぶ――
一人暮らしを謳歌し、自堕落な生活を続ける政田 鷹留、何でも足りている彼ゆえの悩み、それはむしろそれが暇であるということだ。
そんな政田に、思いがけない出来事が待ち構えていた。
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