第5話 半エルフんリートVSナカムラ先生ん下ネタ連絡帳
第5話 半エルフんリートVSナカムラ先生ん下ネタ連絡帳
「見つけたぞ、レアモンスターだ!」
「倒せば経験値大量ゲットだ!」
「ステータスオープン…あれ、何も書いてないぞ」
当たり前じゃっど、おいはただん住民ぞ。
敵は例ん勇者気取りん冒険者らじゃった。
こいは嬉しか、リートばおもてなし出来っ。
おいは手に持っちょった剣ばぶん投げた。
テレキネシス…続いてテレポーテーション、剣は意思ば持ちよった。
宙ば自在に駆けっせえ、びりびり敵ん皮膚ば切り裂きっせえ、ぱんぱん首ば跳ねた。
剣は敵ん首ば串刺しんしっせえ、手許ん戻って来た。
「…貴様ら経験値わっぜか大量ゲットじゃっどな。
勇者でん敗北は、死は珍しか経験じゃっど、こげん経験そうそうなかろうもん」
おいはテレキネシスばまた発動しっせえ、敵ん死体ば逆さ吊りんしっせえ血抜きした。
「リート、もう良かよ…」
リートは怖々ち身体ば起こした。
そいから目ば見開きよった。
「…ぶっ、何じゃこら! はるか先生がこいつら殺ったんか?
てかこれ殺人だよね? なんでこんなナチュラルに人を殺せるんだ?」
「簡単じゃっど、おいが殺人童貞やなかちだけん事。
実験で使われっラットでん、兎でん、猿でん、人と何も変わらん…」
能力者ん訓練施設ん実験にゃ、良う動物が使われちょった。
おいは言われっがまんま、能力で何でん殺した。
…もちろん人も。
「ぷっ、勇者が情けない…てか、はるか先生強くね? 悪の組織の黒い閣下かよ。
しっかし、まさかあいつらもこの島で返り討ちに遭うとはね」
リートは笑った。
髪ん間からちいとだけ覗いちょっ耳んピアスが光っちょっ。
どうやら彼もこん冒険者らん事は良う思もちょらんらし。
「…リート、こげんとこまでよう来てくいた。おいはまこち嬉しか。
家で飯でん喰うてかんね、用意すっど」
おいは敵ん首が串刺しんなった剣ば肩ん担ぎ、にいと笑うた。
リートも頬ば赤うしっせえ、笑顔で頷いた。
おいたちは積もっちょっ灰ば踏みっせえ、家まで歩く。
「リートん耳はちいと飛び出しちょっ、エルフけ?
じゃどんエルフにしちゃえらい短か、丸か耳じゃっどな…」
「あ、俺、混血。父ちゃんがエルフ、母ちゃんがはやとん国のはやとん族。
ま、原住民どうしだよね、俺みたいな子はちっとも珍しかないよ」
リートはおいがぶりぶり太てか腕ん絡み付いた。
「…『リート』はおいがおった世界で、『歌』ち意味じゃっど」
「歌…素敵だね、はるか先生の『悠』は何て意味なの?」
「『遠く』ち意味…だからよ、おいは遠くんもんいじっとが得意じゃっど」
家が見えて来よった。
おいは白か小屋ば指差した。
「あいがおいん家」
「あ…もしかして、あれって」
リートはそん小屋ば知っちょっ様子じゃった。
「こん島に来た時からあっと、気象ん観測所かなんかじゃったらし。
シャワーも便所もあっと、水道もガスも来ちょっ、電気も来ちょっ」
おいが説明すっ横ばすり抜けっせえ、リートは家ん駆け寄った。
「この家! 絶対ナカムラ先生ん家だよ、はるか先生!」
何ち! こん小屋は「ナカムラ先生」が元ん家け!
こげん火山島に住んじょったち、ナカムラ先生も相当ん猛者じゃっどな。
おいんごた、いやおいよかむっきむきんおんじょかも知らん。
「じゃどん、そんナカムラ先生はおらんが」
「俺もナカムラ先生とは直接会った事はないんだけど、
ひとりでこの島に住んでるって、連絡帳に書いていたよ」
ひとりち…わっぜ恐ろしかあ、ナカムラ先生!
ゲームばっかいしちょった、おいんごた廃人上がりとは次元が違うちょっ。
見えっ、むっきむきんおんじょんナカムラ先生が、こん島に来っ冒険者らば、
ばっきばきなぎ倒っせえ、殺戮ん殺戮ば重ねっせえ、そいで暮らしちょっ光景が…!
カニバリズムじゃっど! きっと冒険者らん間でラスボスじゃったに違いなか!
じゃからこん島に勇者気取りん冒険者らが、経験値大量ゲットち言うて来っと!
耕作ん形跡がなか事から、ナカムラ先生が狩猟民族ちゅうとは良うわかった。
ナカムラ先生は何ドロップすっね? レジェンドレア装備け?
きっと課金どころやなか性能ん装備ばドロップすっと!
「熱心な人だったけど、字が汚いから絶対おっさんだよ、ナカムラ先生てさ。
だって俺と連絡帳で下ネタばっかり書き合ってて、二人で怒られたんだもん」
「下…? ひー」
狩猟民族だから性欲も旺盛ち事け、そいはつまり強かちゅう事じゃっどね!
強か男は色ば好むち言うと!
そん強か男と、当時毛ん生え始めじゃったろう少年がタッグば組みよったら…。
ほんなこつ、最凶最悪んコンビじゃっどな…!
「はるか先生はナカムラ先生とちょっと似てるかも、おじさんだからかなあ。
あ、でもはるか先生の方が下品だよね…『殺人童貞』て何それ? 超笑える!」
おいたちは家ん入っせえ、リートば椅子ん座らせた。
こん小屋は一部屋だけで、他にこまんか台所とシャワーん浴場があっだけじゃった。
そん部屋にゃささやかなもんじゃったけんど、縁側があっ。
やっぱいナカムラ先生が日本人、日系人じゃったからか。
リートち珍しか訪問客に、取って置きん芋ば使こっせえ飯ん支度ばすっ。
こん小屋にガスがあっとは、ナカムラ先生んおかげじゃっど。
…感謝すっど、ナカムラ先生。
「へえ…旨いや、はるか先生は料理も得意なんだ!」
リートは芋ん炊いたんば食うと、驚きよった。
「…さすがに慣れたど」
「この家は本がいっぱいだね…はるか先生は勉強好きなんだ。
てか、この家にエロ本とかAVとかないようだけど? 男の一人暮らしがおかしいだろ。
あっ、動画だな! 動画で抜いてるんだ、そうでしょ?」
「動…? 抜い…?」
エルフも混血んなっとわっぜ下品になっ訳か…さすがナカムラ先生が相棒じゃっどな。
「あのようリート、ナカムラ先生はなしておらんようんなっとか」