第44話 こん家は「ナカムラ家住宅」、ナカムラ先生が家
第44話 こん家は「ナカムラ家住宅」、ナカムラ先生が家
「はやとん国」は夜明け近か燎原で、はやとん民ん国として復活ん声ばあげた。
日が昇っと皆は解散しっせえ、さっそく復興に動きだしよった。
「さらば中世ヨーロッパ建築、新しいアタの街は俺らの伝統建築で行くぞ」
「アタはおとぎの国なんかじゃねえ、俺らはやとん民が暮らす現実だ」
「そうとも、俺らは昔以上の街にするぞ」
新しか「はやとん国」は放射能が守ってくれっ。
もう冒険者らは近づききらん、近づきゃ死が待っちょっ。
ほんなこつ「はやとん石」は民んお守りじゃっどな…。
「はるか先生、どこに行くのさ」
直さんがおいが事ば追いかけよっ。
おいも様子ば見に、一旦カゴ島へ帰っ事んした。
「カゴ島、直さんも一緒にどげんね?」
おいは直さんが腰に腕ば伸ばした。
もう城もなか、行っとこもなか。
テレポーテーション、直さんが帰っとこはカゴ島…ナカムラ島しかなか。
「うっそだろ…!」
ナカムラ島に降り立ちよった直さんはおらびよった。
溶岩が流れっ方向と、火山が影で、旧ナカムラ家住宅は奇跡的にそんまま残っちょった。
白か、こまんか小屋がごつごつしちょっ溶岩が向こうに見えっ。
じゃどん近づいて見っと、形はそんままでん傷んじょっ、家ん中も散らかっちょっ。
おいたちはそん日から、比較的無事じゃった地下室に寝泊まりしっせえ、
毎日朝早うから夜遅うまで、家ん片付けと修理に追われちょった。
家ん中ば片付けちょっ直さんは、時々懐かしそうな目ばしっせえ、
壁ん染みに、柱ん傷に、しまりん悪りか引き出しにと、
あちこち触れっせえ、昔ば思うちょった。
「昔、この庭にりんごの苗木を取り寄せて植えたら、しゅう〜としぼんで枯れちゃったよ」
「ここの引き出しにエロ同人誌しまっといたらさ、ぐちゃぐちゃになって指も挟んでしまったよ」
「あそこの浜からスクーリングに行こうとしたんだけどさ、結局キンコー湾も出られなくてさ、
遭難して湾内のチリンガ島に流れ着いたよ」
直さんは楽しげにこん島ん思い出ば語りよっ。
こげんしっせえ見っと、まるで乙女子んごた…。
…そうじゃった、ここは旧ナカムラ家住宅…ナカムラ先生が、直さんが家。
直さんがCVでんナカムラ先生が帰って来よった今、ここはもう「旧ナカムラ家住宅」やなか。
こん家は「ナカムラ家住宅」、ナカムラ先生が家…おいが家やなか。
おいはただん不法占拠者、冒険者らとちいとも変わりはせん。
最初からおいはナカムラ先生が代わいじゃった。
先生ん仕事も、生徒らも。
おいはもう必要なかけ? どげんしたら良かけ?
みんなナカムラ先生がもん、返さんといけんちわかっちょっが。
じゃどん、何ち辛か事…。
片付けもあらかた終わったある日ん午後、おいはアタん街へ買い出しに出た。
ぶういちおやっどんが露店で、皆ん近況ば聞きっせえ買いもんばすっ。
すっとぶういちおやっどんは、カメラば勧めて来よった。
「これ…動かないけど、修理は簡単そうだ。
一応メモリーカードも入ってるし…どうだハルカ、直して使ってみないか?」
こんカメラは…確か城で直さんが部屋ん…。
「王妃さま…直さんと結婚するつもりなんだろ? 結婚記念写真が要るよ」
「ひっ!」
こんカメラんメモリにゃ確か、「悠ん危なか☆ナイトンマジック」が!
あげんげんなかデータは消さんと!
「買いもす!」
おいは引ったくっごた、ぶういちおやっどんからカメラば買い取っと、
急いで買いもんば済ませっせえ、赤か顔ばしっせえ露店から走り去った。
瓦礫ん影でこそこそカメラからメモリば抜いちょったら、そん側で男らん声がしよった。
「What is here? It's like the when the war has finished....」
(何だここは、まるで戦争でも終わったばかりのような…)
「I don't know. Are you sure he's here?」
(知らんな、本当にここにいるのか?)
ひい、英語じゃっど…!
なして英語ば話しよっもんがここんおっ、こん「はやとん国」が主言語は日本語じゃっど!
テレポーテーション、おいはとっさに逃げた。
…あいつらが探しちょっとは、きっとおいが事。
追っ手じゃっど、とうとう居場所が知られてしもうた…!
おいが事ば知っちょっもんはたぶん知らんふりしっせえ、黙秘ばしてくれよっ。
じゃどんおいがアメリカからん逃亡者ち事ば、こん国ん全員が知っちょっち訳やなか。
誰かん口から情報は漏れっ、発見も時間の問題…。
「おかえりはるか先生、今夜は放射能ぎっちりみっちりの魚介汁だぞ〜」
カゴ島ん戻っと、直さんは庭で鼻歌ば歌とっせえメシん支度ばしちょった。
こげんしちょったら、妻んごた、おいたち夫婦んごた…。
ずうっとこげんしっせえ暮らしたか…イフ・アイ・キャン、出来っとなら。
「もう直さんは…はやとん民ん薬がなかったらシャレんならんが」
「ありがたいよな、こうして放射能汚染された物も食べられる…旨そうだな、ぐへ」
窓ば開け放した、荷物だらけん居間で直さんと夕食んすっ。
こげん放射線量ん高か国じゃっど、あいつらはすぐにけ死みよっ。
そいでん情報はもう本国に回っちょっかも知らん。
明日にでん応援が到着してんおかしなか。
いくら国が、民が、直さんが自由んなってん、おいはまだ支配ん中じゃった。
遠か国へ逃げたつもりでん、ちいとも逃げきっちょらん。
アメリカはきっと施設ん能力者ば使こっせえ、おいが事ば探させよった。
こい以上ここんおったら、直さんが危なか。
直さんもおいと同じアメリカからん逃亡者じゃっど。
おいは心ば決めた。
食後、地下室ん「ナカムラ先生ガチゲーマー部屋」に、寝支度ばすっ直さんに言うた。
「…直さん」
「何だ、部屋を使うのか?」
「おいはよう寝きらん、ちいと散歩につき合うてくれんね」




