第40話 遠くからはるか☆IF YOU CAN
第40話 遠くからはるか☆IF YOU CAN
直さんボイス…こいはナカムラ先生が再生け? そいとも直さんが生声け?
ちいと声が遠か、判別しきらん。
じゃどん直さんはオフライン表示、たぶんこん声はナカムラ先生。
「ナカムラ先生、聞こえっけ? ナカムラ先生!」
「…なぜ私が!」
いけんが、おいが声に気付かんらし…もっとナカムラ先生好みん声にせんと。
確かナカムラ先生はシブメン悪役ボイスが好みち、タビタが…。
そげん内容んデータは持っちょらん、おいが自分で声ば作っしかなか。
テレキネシス、おいが声帯ば対象に。
のどん奥で声帯がごにょごにょ変形すっ…。
おいは吐息混じりん、甘〜か台詞でささやきかけっ。
「ナカムラ先生、今夜おいとBLん華ば咲かせもんそ…」
どげんね! おいが渾身「ナカムラ先生用シブメン悪役セクシーボイス」は!
答えてくいやんせ、ナカムラ先生!
「断る! 断固断る…!」
やっぱい聞こえちょらん。
「軍を動かすなら声だけで十分だ」
声だけ…やっぱいナカムラ先生。
ナカムラ先生がそばで男ん声がすっ、おいは耳ば澄ました。
「先生はかつて敵の行動予測に長けた、両兵衛以上の名軍師だったと言う…。
その緻密な観察と計算はスパコン以上…いや、超能力の域と言っても過言ではない。
千手先をも見越せる神算…前の国王も欲しがるはずだ。
…そして今こそ我ら冒険者のために、その神算を発揮する時」
ナカムラ先生、おまんさ…。
「…私ごときがお前らの軍師で良いのか? 私の計算は神算などではない。
今、私を軍師に据えたところで、そこにはもはや敗北しかない。
はやとん民には私以上の神算がある、私が両兵衛なら彼は次世代の千兵衛万兵衛…」
「ナカムラ先生…! 今行っど! 待っちょれ!」
おいは再びナカムラ先生に呼びかけた。
「ふふ」、ナカムラ先生は笑うた。
「来るな、イフ・ユー・キャン」
「何訳のわからぬを言う…狂うたからもう計算は出来ぬとでも申すか?」
「まさか、私が全力を尽くしても彼には敵わぬという意味だ」
「先生はなぜその者を知っている?」
「先生だからさ…私は彼に逃げろと教えたつもりだが、その逃亡先がまさかこの国とはな。
しかもいい男になっての再会だ、お前ら『イケメンアイドル声優んごた』とは訳が違う。
私の嫁だ、お前ら手出しは許さんぞ…私が彼と薄い本になるのだからな、ぐへ」
「イフ・ユー・キャン」ち…そいはおいが施設時代んコードネームじゃっど。
「Catch me if you can」、「Try it if you can」、「Kill me if you can」…。
訓練でアメリカん太てか男ら相手に挑発すっ時ん、英語ん言い回しじゃっど。
ただ「イフ・ユー・キャン」じゃ意味通じんが、なあ直さん。
「あっ、ハルカ!」
おいは飛んだ。
ぶういちおやっどんがおいが事ば止めようとした。
じゃどんテレポーテーション、ナカムラ先生が許へ…直さんが許へ。
移動した先はアタん城ん敷地内ん敵陣ど真ん中じゃった。
敷地ん外ではやとんおなごどんが冒険者らと戦うちょっ。
「誰だ!」
冒険者ん男ん叫びで戦いは止まっせえ、そん場ん皆がおいに注目した。
「先生…!」
「お、男がいきなり現れたぞ…! 一体どっから来たんだ?」
「魔法で遠くから飛んで来たのか?」
「いや今、何も無いところから突然ふっと現れたぞ!」
まこちびっくいじゃっどね、じゃどんこいは魔法やなかでね。
「『遠くからはるか☆IF YOU CAN』、どげん遠かとこにおってんおいは現れっ。
どげん遠かとっからでんおいはやれっ…こいが『テレ』ん力じゃっど。
なんせおいは『悠』ち書きっせえ『はるか』だからよ…!」
おいは冒険者らば押しのけっせえ、前ん出た。
そこにゃひょろかキモオタヒキニートん冒険者らん長と、そん近衛ん兵しかおらん。
ナカムラ先生はもちろん、直さんが姿もなか。
「生徒『イフ・ユー・キャン』推参、うちん先生がわっぜか世話んないもしたな…」
「生徒…なるほど、超能力者の生徒か。
確かにその素材なら教育すれば師も超える、藍より青くもなる」
「…来るなと言ったはずだ、イフ・ユー・キャン」
ナカムラ先生がだみ声がすっ。
「まこち上手かね、ナカムラ先生は…そげんしっせえおいが事また煽りよっ。
入れち言われたら入りともなか、行っなち言われたら行きともなっ。
まるで魔性んおなごんごたね、そげん事さいたら男はもうたまらんが…。
夜ごとおまんさん事思もっせえ、股ば膨らかっせえ甘か恋ん夢ば見よっ」
くじ久どんが島津は、直さんがログイン状態ば非表示んしたち言うちょった。
そいはたぶんナカムラ先生も同じじゃっど。
非表示なら姿もなか、出ても来れん。
物理的攻撃が無効んなっとなら、そん方が確かに安全かも知らん…。
おいはふと近衛ん兵ん中に、ずうっとパソコンばいじっちょっもんば見つけた。
「おい、まだか」
冒険者らん長がそん男に苛つきっせえ、声ばかけよった。
「は、今しばし…あともう少し、もう少しで解除出来ます!」
「解除ち…」
そうじゃった、そん技術ば持ちよっとは何も島津だけやなかち事。
他んもんが非表示ば解除すっち事もあっち事…!
「…ナカムラ先生!」
「構わんよ、私は。それがあいつらの魔法なら…」
そん時何もなか空間に、いつか見た緑んドレス姿ん、
ひとりんおばちゃんの姿がすうと現れよった。
「…解けるのも時間の問題」
そんおばちゃんが喉から知っちょっ、男んだみ声が出て来よっ…。
「ナカムラ先生…直さん…」




