第34話 親子は血でん思想でんなか、心じゃっど
第34話 親子は血でん思想でんなか、心じゃっど
「貴様…島津ん…」
声ん主が奥ん牢屋から出て来よった。
前に見た事あっ、島津ん4人が一角。
良う見っとわっぜ太てかじじどんじゃっどな、ヒユガんデブ久どんごた。
見たとこ純血んドワーフらし、じゃどんドワーフがこげん太てか訳なか。
…デブ久どんもドワーフん混血じゃった、そいでやっぱいこげん太てかと。
「島津のとは失礼な、俺にはパパ久という名がある」
「『パパ久』…」
「本名、『中村パパ久』…元はやとん国原住民、国を裏切って中央に、島津についた者だ。
はやとん国に長男のデブ久がいる」
ナカムラ先生がこっそり耳打ちしてくいた。
「何ち、デブ久どんがおやっど…まこちパパ久け」
「だから何だ? デブ久とは確かに血のつながった親子だが、思想が違う。
思想は血を超える、つまり思想が違えば親子も敵だ…」
パパ久どんはおいが事ば廊下ん壁に叩き付けよった。
テレキネシスで衝撃ば緩和してん、壁が割れっせえへこんじょっが。
何ち怪力ね、こいがドワーフん力…!
「可愛らしいミンストレルだな、新井ゆう。
ちょろちょろ動き回られると邪魔なんだよ、子豚ちゃん…!」
「…壁ドンだと? 貴様、俺の嫁に壁ドンだと?」
通信が先でナカムラ先生が黒うなっちょっ。
「…断る、『悠×パパ久』などカップリング、断固阻止する!
悠は俺の嫁…お前の嫁じゃない、違う…」
通信ば通っせえ、ナカムラ先生は音声データば再生しよった。
音量MAX! わっぜえ太てか声じゃっど、耳が割れっが…!
おいは指で耳ば塞いだ。
「違〜う!」
パパ久どんが太てか身体がびりびりしよっ、こいはいけん…!
テレポーテーション、こん部屋ん外へ。
「ナカムラ先生、おまんさおいが事殺すつもいけ! 危なか!」
パパ久どんが入れた壁ん亀裂が走っ…崩れっ。
もう一度テレポーテーション、続けてテレキネシス。
「悠!」
「すまん、ナカムラ先生…」
瓦礫はパパ久どんが頭上で止まっせえ浮遊しちょっ。
「くそ、チートか…情けなど要らぬ! 俺は『電脳シーマンズ』四人が一角!
争いの絶えぬ国ならば、どこかが平定するまで!」
パパ久どんはおいが首ば取った。
片手で十分ち事け…わっぜ強かね。
「例え国の名が変わろうと、平和こそ民のため! 俺はそのために…!」
「パパ久どん…! おまんさは間違うちょっ、間違うちょっが…」
ナカムラ先生がテレポーテーションちおらんじょっ。
テレポーテーションすればそいで良か…じゃどん拒否すっ。
間違いは導きっせえ正すとが先生ん仕事じゃっど。
…息が苦しか、涙が出っと。
「こん国が『はやとん国』であっ事、はやとん民が『はやとん民』であっ事、
彼らん願いはそんだけじゃっど…例えそいが戦いであってん。
パパ久どん…おまんさもはやとん民ならわかっはずじゃが」
「よそ者に何がわかる、ガキが」
「だからよ、おいはよそもんじゃっど…じゃどんよそもんだからこそわかっ。
そいとおいはガキだからよ、ガキがおやっどが事思も気持ちもわかっ。
…思想が血ば超えてん、親子は親子じゃっど」
おいがおやっど…おいはこげん丸顔ん男じゃけんど、おやっどん顔は細かね。
目も細か、唇も薄か、ちいとも似ちょらん。
今だからわかっ、おいとおやっどはたぶん血がつながっちょらん。
そいでんおやっどは優しか、まだこまんか頃んおいが質問にわっぜか困ったろうに、
ネットであれこれ調べっせえ答えてくいた。
実家ん博物館が展示物ん事も、ひとつひとつ丁寧に教えてくいた。
炊いてくれよっ飯も旨かと、寝しなに本ば読んでくいた声も柔らしか。
「愛してん憎んでん子もおやっどが事思うちょっ。
親子は血でん思想でんなか、心じゃっど…!」
…頭ん中が白うなっ、気ば失いそうじゃ。
じゃどんこいだけは言っとかんと。
そん時、首がふっと軽うなった。
「…ミンストレル、デブ久のやつはどうしてる?」
パパ久どんは背中で言うた。
さっきまでおった牢屋で瓦礫ん崩れっ音がしよっ…。
「デブ久どんは…そん名ん通りデブば目指しちょっ、こん国で」
「あれじゃデブになる日は遠いだろう…」
パパ久どんが背中が波ば打ちっせえ震えちょっ。
「デブ久は…あいつは俺にそっくりだからよ」
「パパ久どん…!」
おいはパパ久どんが背中に抱きついた。
「デブ久どんは、おまんさん息子は、ヒユガん立派な長んなっとよ。
普段は国境ば守っちょっけんど、今ははやとん豚として戦うちょっ…」
「俺は敵に身を売った、もうヒユガには帰れん…でも会いたい、
ひと目でもいい、デブ久に会いたい…!」
むきむきん太てかじじどんは涙ばぼろぼろこぼっせえ、泣いちょった。
「パパ久どん、おいと一緒にこん戦ば手伝うてくれんね…。
早よ終わらしたか。そんで一緒にデブ久どんに会いに行こけ」
「くっそ…パパ久め、絶対『悠×パパ久』の定番化狙ってるだろ」
ナカムラ先生が通信が先でぼやいちょっ。
「さっきから誰だ? 王妃か? …下品だな」
パパ久どんは辺りば見回しよった。
「俺だ、中村先生だ! 俺の嫁とべたべたしやがって、いい加減悠から離れろ!
『悠×パパ久』? そんな事させるか、悠は『悠×ナカムラ先生』!」
「…中村先生? あ、まさかあの…?」




