第29話 じゃどん「ぐひ」は余計じゃっどね、先生
第29話 じゃどん「ぐひ」は余計じゃっどね、先生
直さんはいきなりぷっと吹き出しよった。
「…何言ってんのさ、そりゃはるか先生だからだよ」
「訳わからん」
「私の初めての人って事、初めて見る生きた人って事…ね、はるか先生はどうだった?
初めて女とした時、どうだった? ぐへ…興味あるう、教えてよはるか先生、ね?」
「んー、直さんが教えてくいたらな」
「ぐへ」とか…何ちおなごね、こげん時に言わんでん良かろうもんが。
直さんはごろんち横ん向きっせえ、ぼそり言うた。
「…私は遅かったよ、二十歳の時だったから。
私も昔は先生をしててさ、その教え子と…当時はその子の事好きって訳じゃなかったんだけど、
その子が求めてくれたから…犯罪だよな、それって。
ただ私がしなけりゃその子は、女を知る事もなく一生を終えるかと思うと…」
「直さんも先生しちょったとけ…」
どうりであのアニメーションがわかりやすかち思もたら。
そげん事け。
「でも普通の学校じゃないよ。まあ早い話、障害児の施設みたいなもんだ」
「なるほど、特別支援学級け…おいは逆で、15ん時に施設ん先生とやったど。
あん頃はただただ純粋に先生ん事好いちょったから。
もしお互いに自由ん身じゃったら、18ん誕生日で結婚ば申し込んじょったかも知らんね」
おいは視線ば流っせえ、笑うた。
直さん、もしかすっとおまんさがそん先生やなかけ?
「へえ…で、その先生はどうしたのかな」
「そん先生はすぐ消されてしもうた、訳は大体想像出来っ。
じゃどん相手はアメリカぞ、普通んおなごがアメリカから逃げられっ訳なかろうもん」
「勝手に殺すなよ、はるか先生は」
直さんは目ば細めよった。
スカートん中んペチコートんフリルが揺れっせえ踊っ。
先生はそげん成熟した大人ん、淫らなおなごやなかでね。
おいは直さんが上ば取った。
「逆転じゃっど、こんゲームはおいが勝ち…降参しやんせ、先生」
「どうかな? 運命は私の味方だ、少年が男になっただけの事。
ならもっと簡単。ここは房中、女は魔法を使うまで…負けるかよ、先生」
魔法け…まこち上手かおなごね。
そげん事されたら、男はただん言いなりじゃっど。
じゃどん嫌いやなかでね、おなごに鼻っ面ばつかまれっせえ翻弄されっとは。
そいでこそ男は燃えっから。
部屋んドアが静かに開きよっ、男らが入って来よっ。
「…やっと見つけたぞ、新井ゆう」
男らは島津んやつらじゃった。
なしてここが…?
「最近この城に不穏な動きをする出入りの男がいると言う」
「だから何ね?」
「冒険者らは我々『電脳シーマンズ』の支配下にある、そう言ったはずだ。
王妃付きミンストレル、新井ゆう」
「くそ、監視け…趣味ん悪りか」
おいが隣で直さんはどろりとした視線ば、島津んやつらに投げかけた。
「…うちのミンストレルがどうした、邪魔すんなよ島津が」
「ミンストレルとは寝所に侍るものかね、チェルビアッタ元王妃」
「私はそのつもりだが? 色事も芸のうちだ…お前らもう下がれ」
直さんは手ば上げっせえ、島津んやつらん事追い払うた。
そん細か手首に手錠んごた手枷ががしゃりはめられてしもうた。
「…直さん!」
「逮捕する、チェルビアッタ元王妃…反逆者と密通していた罪だ」
「逮捕かよ、冒険者がいっちょ前に警察気取りか?
まあいいだろう…ならば司法取引だ、お前ら島津にとっても損な話ではない」
司法取引、そん言葉に島津んやつらは目ば丸うした。
直さんも良う気が回りよっ、司法取引は日本じゃまだ一般的やなか。
そいはアメリカん話じゃっど…。
「何を取引する? 減刑か?」
「いや、そこのヒゲの丸顔のおっさん…新井ゆうの身柄の自由の保証、それだけだ。
新井ゆうの自由と引き換えに、私が王妃として知り得た事の全て…どうだい?
国軍の機密、国家の機密、侵略と支配の成功の秘密…素敵じゃないか」
「…元王妃、お前はそうやって支配から身を守って来た。違うか?」
「当然だね、女が力で男に敵う訳ないだろ。さ、連れて行っておくれ。
取引成立だ、いい事教えてやるよ…早くしてくれ、ばばあは男に飢えてんだよ。ぐへ」
直さんは島津ん長ん目ばじっと覗き込みっせえ、立ち上がりよった。
そいはおいがためけ? いけんが!
「いけんが直さん!」
テレポーテーション、おいが腕ん中へ。
「えっ…無効…」
おいが能力は牢屋ん中んリートでん救えっ、どげん拘束でん助けられっはず…!
じゃどんこんこまんか手枷ん内ん直さんにゃちいとも効きよらん。
「ごめんなゆう、予想済みだ…結婚の話はまた今度、ゆっくりしようぜ。
出来れば今度こそ最後までして欲しいな…感じてよ、私を好きなら。
どんな小さな事でも見逃さないでさ、私のして欲しい事を先回りして読んでよ」
「直さん…おまんさ、こげん時に何エロか事ば…」
「それがお前のため、きっといける。お前は絶対いける…特別だよ、内緒だよ」
ユー・キャン・ワーク・イット・アウトっての? ぐひ、パンツ濡らして待ってるよ」
直さんは下品に笑ろっせえ、島津んやつらば引き連れっせえ出て行きよった。
彼女はおいが能力ん発動ば予想しっせえ、避けよった…。
発動対象と地点、予測さえ出来りゃ避けられっ…直さんはおいが能力ん弱点ば読みよった。
「感じてよ」、「見逃すな」、「先回りして読め」…じゃどん「ぐひ」は余計じゃっどね。
…そげん特別で内緒なんぞ要らんが、先生。
一人残された部屋で、おいは泣いた。
おいが先生はきっと直さん、おいはただん少年。
尾行はなか、もっぺんテレポーテーションじゃっど。
おいはアタんぶういちおやっどんが店に飛び込んだ。
「ハルカ!」
「おやっどん、直さん…王妃さあが逮捕されよった、助けたか」
ぶういちおやっどんは店先でスナック菓子ばぼりぼり食いながら、店番ばしちょった。
わっぜか余念のなか事じゃっどな、さすがはやとん豚ん長。
おやっどんはおいに口ん中ん菓子ば、ぶうち吹き出しよった。
…きっさね!
「は? 逮捕? それって即死刑って事だよね? だめじゃん!」
「ちょっ、待ちい…即死刑ち何ね?」




