第27話 じゃどんナカムラ先生伝説
第27話 じゃどんナカムラ先生伝説
ウスミんポチャ弘どんが家は海沿いん日本家屋じゃった。
珍しか、アタんごた中世ヨーロッパ風やなか。
「なしてポチャ弘どんが家は日本家屋け? アタん街は中世ヨーロッパじゃっど」
「そりゃこんなウスミとか田舎だから…アタは首都だから冒険者らがいっぱいでさ、
ハルカの言う『中世ヨーロッパ』風に建て替えられてしまったんだよ。
…元あった日本家屋なんかみんな壊してさ、はやとん民も住んでいたってのにさ」
ポチャ弘どんは引き戸ば引きっせえ、中に声ばかけた。
「ただいまあ、デブ久まだいるか?」
「早いなポチャ弘、もう帰って来たのか」
家ん中で太てか影がむくり動きよっ。
おいは目ばむいた。
「ん…もしかしてお前がハルカか?」
初めて会うデブ久どんは、ポチャ弘どんよか更に太てか大男じゃった。
見たところ、デブ久どんはドワーフとエルフん混血らし。
耳は出ちょらんけんど、ちいと先が尖っちょっ。
じゃどんドワーフ…? こげんわっぜ太てかドワーフとかなかろうもん。
てか、デブ久どんも「デブ」ち言うちょってん、ちいとも「デブ」やなか。
近くで見っと、脂肪ん下にわっぜか筋肉がついちょっ…力士んごた。
「ポチャ」とか「デブ」ち、願望け…。
「ぶひょっ」
「あ、ハルカだ。ふおお…生ハルカ! ポチャ弘見てよ、これが男の中の男だよ!
マジかっけえ! 無人島漂流の絵そのままだよ!」
そいはつまい「野人」ち事け…!
「うおーん! やっぱいこげんぶにせが顔出しとかいけんが!
こげん色ん黒か、丸顔でヒゲんぶにせじゃ…うおん! うおん!」
おいは三和土に突っ伏しっせえ、うおんうおん泣いた。
施設でんおいはぶにせぶにせち良う言われちょったからな…。
「『ぶにせ』って…ハルカはそんなまずくはないだろ、デブ久。
売り買いされる原住民ほどではなくとも、あいつら冒険者らに比べたら絶対イケメンなはずだ。
実はハルカのイケメン基準の方が間違っているのだ」
ポチャ弘どんはデブ久どんに議ば言うた。
おいは顔ば上げた。
「はっ…そうじゃっどな、あいつらは『イケメンアイドル声優んごた』じゃったな。
こげんぶにせでん、イケメンアイドル声優んごたに負けたらいけんでね!」
「さ、入って入って。今夜は飲み会しようぜ、デブ久も」
「持って来た鳥肉もあるよ、これで俺らはぶういちとブタ元に差をだな…」
「飲んかた? …初めてかも」
実は飲んかたは初めてじゃった。
施設暮らしじゃったから当然、食事に酒なんか出て来っ訳なかろうもん。
たばこは割と自由じゃった、施設にゃ成人もおったから。
おいも成人してから良う吸うちょったど、施設暮らしはストレス溜まっから。
アメリカん事じゃったから、日本ごた強かたばこはなかったけんど。
初めてん酒は苦か、そん旨さなぞちいともわからん。
すぐ頭が痛となっせえ、おいは水んした。
じゃどん、ポチャ弘どんもデブ久どんも良う飲みよっ、良う食いよっ。
デブば目指しちょっつもいらしけんど、農業と漁業ん肉体労働じゃ無理じゃっどね。
どげん食うてん飲んでん、すんぐ燃えっせえ筋肉んなりよっ。
おんじょでん彼らも相当んよかにせじゃっどな、くっきりした華んあっ顔ばしちょっが。
デブち切実な願望じゃろな…若か頃きっと何度も危険な目に遭うたとね。
寝っ前、風呂場ん鏡ば覗くと、色ん黒か、ヒゲん丸顔んぶにせがおっ。
まこちおいはぶにせじゃっどな。
奥二重ん目つきは悪りか、鼻も高うはなか、唇も男にしちゃ分厚か。
頬にゃほうれい線が薄う見えっ…おいは歳ば食うた。
おいが若か花ん頃はみんな施設ん中だけで終わってしもうた、青春もなか。
施設ん中でだけん人間関係で、施設ん中だけで恋ばしっせえ、
何もかんも施設ん中でだけん事じゃった。
外ん世界にゃ楽しか事がまこち多かね、おいは何も知らんかった。
何ち、おいは無駄な時間ば…。
鏡ん中んぶにせん目からは涙がぼろぼろこぼれちょっ。
翌朝、ポチャ弘どんとデブ久どんに礼ば言うて火山島ん家に戻っ。
家ん事すっと、子どんらからプリントば回収しっせえ、採点しっせえ添削すっ。
生活費んバイトんつもいで引き受けたこん仕事じゃったけんど、
子どんらはおいに働く喜びちもんば教えてくいた。
おいもそいに答えたか、助けたか。
「はい、みなさんこんにちは。はるか先生です…こげんぶにせがげんなかあ」
「すげえ、マジかっけえ! リートの言ってた通りだ!」
「な? 俺の言った通りだろ、はるか先生がすっげかっけえてさ」
もじもじすっおいに、リートが割り込んで子どんらに笑いかけよっ。
「むきむきで男の中の男とか、もうばればれだぞはるか先生!」
「はい! はるか先生は美少女とか声優とか好きですか?
ナカムラ先生の後任って事は、当然おもらしとかも好きって事ですよね?」
そいからおいは能力ば使うたスクーリングに踏み切った。
告知やスクーリングん方法ん説明など、タビタとリートが協力してくいた。
「おも…? 美しょ…?」
ナカムラ先生は何ち事教えちょっ、下品じゃっど。
おいはナカムラ先生が後任じゃったから、当然子どんらん中に彼ん生徒もおっ。
「スクーリングて初めてかも。前、ナカムラ先生もやろうとしてたんだけど、
遠過ぎて途中で遭難しちゃったんだよ、しかも漂着したのがチリンガ島でさ。
てか、まだキンコー湾すら出てないし!」
「それからね、ナカムラ先生は俺らに漫画も描いてくれたんだけどさ、
それが男同士でいちゃいちゃすっげエロい事してる内容で、なんか意味不明だったよ。
ヤマもないし、オチも意味もないし…BL同人誌ての? しかも字が汚くて読めないし」
子どんらがこんスクーリングば喜んでくれちょっが良うわかった。
じゃどんナカムラ先生…?
「あとナカムラ先生は授業の解説を、『むきむき生放送』しようとしてくれたんだけど、
全員にネット環境がある訳じゃなくてさ、聞けたのは年上の子2、3人だけだよ?
でもねナカムラ先生て器用らしいよ、算数の問題でシブメンから幼女の声までやるとか」
ナカムラ先生も生放送で音声データん再生ばしちょったか、
さすが「サクライゼーション」TAS3秒動画ん主。
「私、ナカムラ先生に会った事あるよ」
年少んコジマち少女がふと言い出しよった。
何ち!




