第20話 間違いついでんコードネームんしちゃっ
第20話 間違いついでんコードネームんしちゃっ
「軍師? ナカムラ先生が? 下品ち事なら知っちょっけんど…」
ナカムラ先生にそげん才能まであっとは…恐ろしか。
「確かに下品だけどさ…ナカムラ先生ね、今の国になる前の戦いで軍師やったんだよ」
「どげん事ね?」
「はるか先生」ち、ウドんおやっどが引き取っせえ説明した。
「この『はやとん国』は冒険者らと文化が近くてね、いろんな勢力がこの国を狙っている。
侵略も今の国王一派が初めてじゃない、ちょっと前にも支配を試みた勢力があったのさ。
ナカムラ先生は当時の長老を中心に、原住民らをまとめ上げて軍師として活躍した。
それは見事だったんだけど、戦いの後はどうしたかなあ…」
「ウドんおやっどはナカムラ先生と会うた事あっとけ?」
「いや、私も家内もないね…通信教育の先生だし、参謀だったしね」
そうだよな…通信教育の先生ち、まず会う事はなか人じゃっど。
しかも参謀ちなれば、表ん出っ事も少なか。
そいからおいはウドんおやっどと、集会んついて話し合うた。
離島、アタ、ウスミ、ヒユガ…それぞれん地域でまず話し合うてから、
そん代表らで話し合う事、連絡はおいが請け負う事。
そいと原住民が長老は代替わりで、今はアタんおやっどんになっちょっ事。
「ところで、前ん戦いち…こん『はやとん国』が原住民らは戦えっとけ?」
「戦える、我らはやとん民は戦闘民族だ。
古代は狩猟民族として日々の糧のために、今は自由のために戦う民族だ。
だがはるか先生も相当に戦える…なんであんなに戦えるんだ?」
げんなかあ、おいは笑うた。
「ここん来っ前、おった施設でちいと…じゃどんもうだいぶなまっちょっ」
施設は幽閉されっ前んおいに戦闘ん基礎から、銃火器ん扱い、徒手格闘、
果ては空爆ん誘導まで訓練した。
おいが能力ん軍事利用目的がばればれじゃった。
そいが急に訓練も教育も取り上げられっせえ、施設ん深部に幽閉されてしもうた。
おいはゲーム廃人にされてしもうた。
毎日毎日何もなか部屋で、すっ事はゲームしかなかった。
理由はわからん、きっとおいは使いにくかったと。
おいが能力は欠点がまず多かと。
多重能力者じゃからか、どれかひとつに特化しちょっち訳やなか。
つまり能力が全体的に劣っちょっ事。
遠距離んテレポーテーションがなか、必ず中継地点ば挟まんといけん。
クレアボヤンスは遠距離まで見えっ事は見えっけんど、透視は出来ん。
そいからおいにゃテレパシーがなか、だから声ば送信しっせえやりとりすっ。
何より対象がわからんと能力が発動出来んち事…。
だからおいにゃナカムラ先生ん姿は見えん。
ナカムラ先生が許へ移動も出来ん。
不必要な外出は避けっせえ、戸締まりばしっかいしやんせち言うて帰っと、
おいはすぐ着替え、一般市民に扮装した。
上半身裸はまずかと。
音声データん再生機と一緒に、直さんがくいたミンストレルん通行証ばポケットにしまう。
…使う事はまずなかろうが、いざち時必要じゃっど。
そいからおいは地下室んナカムラ先生ガチゲーマー部屋へ降りた。
ちいと忘れもんじゃっど。
で、テレポーテーション、直さんが部屋へ。
ところが直さんが部屋にゃ、肝心の直さんはおらんかった。
城ん内部でテレポーテーションば繰り替えす…。
「おいお前、何者だ」
城ん家臣に姿ば見られてしもうた。
今こそ出番じゃっど、おいは通行証ば提示した。
「ふん、王妃付きミンストレル『新井ゆう』…」
「えっ、はる…」
おいは「はるか」ち改めようとしたけんど、とっさに口ばつぐんだ。
おいが名ん「悠」は高確率で「ゆう」ち読まれっ。
「はるか」ち読む事は、こん城で直さん以外まだ誰も知らん。
「ゆう」で通した方が良か、直感がそう言うちょっ。
「これは失礼をした」
おいは一礼ばすっと、すぐ角ば曲がっせえテレポーテーションした。
危なかあ! 姿ば知られてしもうた、じゃどん声は知られちょらんはず。
直さんは庭んおった。
おいは現れっなり、茂みん中に引きずり込んだ。
「ちょっ…はるか先生!」
「はい、こんにちは直さん…おまんさが同志じゃっど。
…どうやらおいはこん城じゃ『ゆう』らし、間違いついでにそいで通す事んした。
直さん以外誰もおいが名ば『はるか』ち読む事に気付いちょらん」
「なるほど、コードネームだな…『新井悠』と書いて『あらい ゆう』か、覚えとく」
「コードネームけ…施設でん貰うちょったど」
おいは直さん姿ば背中で隠しながら笑うた。
「マジ? 映画みたいだな、何て名前?」
「『IF YOU CAN』…ソフトウェアん開発コードんごたもんじゃっど。
訓練で標的ば『IF YOU CAN』、『IF YOU CAN』挑発しちょったら、そんまま」
「『IF YOU CAN』て…かっこ悪! 『ミッドナイト』とかじゃねえのかよ!
通信で『こちらIF YOU CAN』とか言うのか? ぷっ」
「ああん! そこは気にしちょっが! おいだけ短文とか!」
直さんはおいが口ば塞ぎよった。
「しっ、静かに…何をしに来た?」
「話があっと、誰にも聞かれとなか…こんまま飛べっけ?」
「警備の目がある、長くは城を開けられない。それでいいか?」
「良か…」
テレポーテーション、城ん裏手ん山へ。
山なら緑も多か、直さんが事隠せっ。
おいたちは山ん緑ん中、抱き合うた。
…ずっと触れたかち思もちょった。
「原住民らが決起ば考えちょっ、そんためん集会ばすっど…」
おいは直さんが首筋で言うた。
「集会…」
「直さんにも協力して欲しかと、良かけ?」
「もちろん…何をすればいい?」
直さんはおいが腹に白か手ば滑らせながら、かすれた声で答えた。
指が服ん中ば侵っせえ、腹ん毛がさりさり言うちょっ。
「直さんは権力ん中央んおっ…そん力ば借りたか」
「わかった、私に出来る限りの事を尽くす」
「そいと、タイラ島に知らん冒険者らが来よった。おいが倒したけんど…」
「…タイラ島に?」
直さんが目がぴたり止まりよった。




