第2話 火山島ん全裸待機おんじょん通販生活
第2話 火山島ん全裸待機おんじょん通販生活
テレポーテーションば発動したは良かけんど、どこん行こけ…。
とりあえずこん街から離れ、おいは街ん近くん島にたどり着いた。
「火山…」
そん島は海面から頭ば出しただけん火山島じゃった。
溶岩で黒か事、植物ん一本も生えちょらん。
まるで不毛ん地ごたとこじゃった。
そいでんおいはここで暮らして行っ事に決めた。
ここなら街から離れちょっ。
敵が来てん、火山がおいが事ば守ってくれっ…。
こん火山島はもちろん無人島じゃったが、かつて人がおった気配はあっ。
気象ん観測所じゃろか、火山が麓に白んこまんか小屋が建っちょり、
そこにゃ本土から引いちょっらしく、水道も便所もちゃんとあっ、
小屋ん中にゃこまんかキッチンにこんろ、シャワーまであっ。
誰か暮らしちょったとか、ほこりばかぶっちょったけんど一通りん家具が揃っちょった。
じゃどん引っ越しかなんかで引き揚げたとか、小物類や使いかけん食材はなかった。
火山島ん暮らしはまず火山灰との闘いからじゃった。
島ん頂ん火口からは毎日毎日煙がもくもく湧きっせえ、空んたなびいっせえ、
そこだけおかしか形ん雲ば作っちょった。
こまんか噴火もちょくちょくあっと、そんたびん灰がどかんち降って来よっ。
スコップやらちりとりやら、家ん中から前ん人ん使うちょったもんで毎朝、
積もった灰ばかきっせえ、そいから一日が始まっ。
服や靴は本土へ渡っ時んためん、大事んせんといけん。
パンツも靴下も大事んせんといけん、普段は裸で過ごしちょった。
おいが着て来たもんはみんな、水道ん水できれいに洗濯しっせえ、
家ん中んクローゼットんごた戸棚に直し、大事ん保管した。
誰が見てん良か、裸でんちいとも寒うはなか。
風もぬっか、ここはきっと南国じゃっど…。
食料は最初、浜ん貝や磯ん小魚ばかい食うちょった。
日差しん強か日中は家で昼寝ばしっせえ、朝夕に動いた。
そんうちビタミン足らんち、海藻も食うようんなった。
そげん暮らしんたまんご馳走は、こん島ん来っ冒険者らじゃった。
皆こん島にゃレアアイテムばドロップすっ、伝説んモンスターがおっち、
こっから生きっせえ本土ん戻れたら、経験値大量ゲットち言いっせえ、
勇者気取りで意気揚々と上陸して来よっ。
アメリカん施設じゃちいとも使えんかった能力は、ここで初めて役ん立った。
おいはそいつらん首ば手も触れんともぎ取り、肉ば食ろうた。
薬草も持っちょっ、苦かもんじゃったが貴重な野菜じゃった。
半分は食べてん、あとは薬としてこいも戸棚ん保管した。
そいつらは服ば着ちょっ、無駄ん装飾ん多か武具も装備しちょっ、銭も持っちょっ。
いつの間にかおいは、冒険者ん来訪ば楽しみん待っちょっようんなった。
ほんなこつ、こいがわくてか全裸待機ちもんじゃっどね。
毎日満足にとはいかんけんど一応食料はあっ、何より水道が使えっ。
朝日で目が覚め、朝夕だけ動き日中は昼寝ばしちょれば良か。
服も着んで良か、誰に見られてん良か。
おなごもおらんで構わん、おいはもう40近いおんじょじゃっど。
夜は時々星空ん下で子種ばまき散らせば、そいでもう良か。
施設で幽閉されちょった暮らしだけに、こん不自由な自由は嬉しかもんじゃった。
じゃどん食んバリエーションん無さは死活問題じゃった、さすがに栄養が偏っ。
そこでおいは買い出しば計画した。
おいはこん火山島で散々冒険者ば食いもんにして来た、
たぶん本土でんおいが事は知られちょっ。
…「向かいん火山島にゃ裸んおんじょがおっ」ち。
どげんかならんか…そうじゃ、良か事思いついたど。
おいは能力ん新しか使い道ば試してみっ事にした。
銭はあっ、こん島ん来っ勇者気取りん冒険者らからようさん巻き上げた。
おいは台所ん買い物かごに銭ん入った財布ば入れっせえ、能力でこん島から飛ばした。
メモん代わいにおいが声も一緒に…。
おいは能力ば使うたら、はるか遠か、遠かところまで見えっ。
クレアボヤンス、「テレ」は付かんけんど一応遠隔操作ん一種じゃ。
買い物かごはテレポーテーションば繰り返っせえ、
海ば渡っせえ、本土ん商店へと駆け込んだ。
「おやっどん、おやっどん」
おいは島から、声ば店ん小太りんおやっどんに送っ。
「いらっしゃ…あれ? 買い物かごだけ?」
「声だけですんもはん、おいは向かいん島ん住んじょっ新井悠ちもんじゃっど」
「ははあ、向かいの島のモンスターか」
「モンスター!」
やっぱい! モンスターち、本土じゃそげん事んなっとけ!
「して、そのモンスターがうちの店に何の用だね?」
「あのですよう、通販ばしてくれんね」
「通販?」
「銭はここんちゃんとあいもす。モンスターは街にも出れもはん、本土ん渡れば捕まっ。
…おやっどん、どうかたのんあげもす!」
商店のおやっどんは突き出た腹ばぶりぶり揺らっせえ笑うた。
「私も商人の端くれ、金は金、客は客だ。金を払ってくれるなら客は選ばぬ。
…いいだろう、何が欲しい。ゆっくり見て行っておくれ」
「おおきにおやっどん、あいがとございもす!」
以来、おいはこんおやっどんが商店ば通っせえ、通販で買いもんも出来っようになった。
声での注文じゃったから「メールオーダー」やなかで、「ボイスオーダー」ちとこじゃった。
買いもんば繰り返すうち信用も出来、おやっどんはいろんなもんを取り寄せてくいた。
待望ん野菜など食料品を始め、石鹸などの日用品、衣料品、そいから書籍、コンピュータ…。
おいが火山島暮らしは一気に豊かんなった。
昼間ん強か日差しから肌ば守っため、衣料は黒かもんが多かった。
石鹸でんちり紙でん歯磨き粉でん、消耗品は大事んちびちび使こっせえ、
食料は根菜類や芋類など、日持ちんすっもんばようけ買うた。
ある日唐芋ん使い残しば種芋んしっせえ、灰かきんついでに家んそばに植えてみた。
一応芽は出っ、じゃどん期待は出来んかった。
出来てん小指ん先んごた、こまんか芋に決まっちょっが。
中古で買うたコンピュータはインターネット環境がなかけんど、
本土にゃわっぜ速か回線が走っちょっ。
そこでおいが「テレ」ん力ん出番、なんせおいは「はるか」じゃからな。
能力で回線に干渉し、そっから信号ば家まで引っ張って来っ、
…テレキネシスん応用じゃっど。
こん交通んなか火山島じゃ、通販は出来んかったけんど閲覧すっだけで十分じゃった。
ヒゲで黒か肌ん丸顔んおんじょは、裸からふんどしに、ふんどしからズボンへと進化した。
そん頃じゃった。
銭と声ば送っせえ、おやっどんが商店にいつもの買い物と書籍ん通販ば頼みに行った。
エロ本ならまだわからんでもなかけんど、テロメア長とがんの関係ん詳しか本はなかかも。
今興味があっとは、読みたかはそこなんじゃけんど。
「ハルカはいつもずいぶん難しい本を読む…勉強が好きなのか?」
おやっどんはおいが事ば「ハルカ」ち呼ぶようになっちょった。
「勉強は好きじゃっど、知っ事はいつでんわっぜ楽しか。そいが?」
「ハルカ、子供たちを教えてみないか?」