第19話 逃げれっもんなら逃げてみやんせ
第19話 逃げれっもんなら逃げてみやんせ
「ぐはあ! 男の中の男だよ、マジかっけえ! 惚れるわあ!」
「うは! 大人の男の色気に乙女心わしづかみ! 来たわあ!」
「えっ…」
こいは意外な反応じゃっど。
ひょっとすっとこん「はやとん国」じゃ、美ん基準が違うとかも。
おいんごたぶにせでん、イケメンなっ低か基準かも知らん。
「てか、はるか先生なんで上半身裸なんだ? 女とやってたの?」
「すっごい筋肉、女はきっとみんなはるか先生に抱かれたいって思うよ」
「あ…いや、服は出かけっ時んため大事に取っとかんと。
先生は貧乏じゃっど、あんま服持っちょらん」
そん時、ウドとテクラん悲鳴が聞こえた。
「ウド! テクラ! どげんした!」
「これは…はやとん族の子供がこんな離島に…純血か、お前ら」
男ん声がすっ、人さらいじゃっど。
リートがはやとん族がもんは、人身売買市場で貴重品扱いち言うちょった。
テレポーテーション、おいはウドとテクラんおっタイラ島まで移動した。
タイラ島はタビタんイオ島からだいぶ南、アタから船で9時間ほどんとこにあっ。
正直、おいがテレポーテーションはそげん遠か移動はしきらん。
途中んタケ島、イオ島、エラブ島ば経由しっせえ、テレポーテーションば繰り返す。
南下すっにつれっせえ、海は緑と透明度ば増しよっ。
タイラ島まで来っと、海は完全に南洋ん海じゃった。
例ん無駄ん装飾ん多か装備ん男らが、ウドとテクラば抱えちょっ。
接近ば待たんでん良か…おいはかけ寄りながら、指し棒代わいん定規ば投げた。
テレキネシス…定規は意思ば持っせえ、敵目がけて宙ば駆けっ。
こん直線定規に鋭か刃はなか、じゃどんスピードがあれば十分。
「貴様ら、おいが生徒に何しよっ…殺されたかけ」
樹脂製ん定規はスピードで刀んなった。
露出した敵ん皮膚ば切り裂きっせえ、目ば突いた。
「ウド! テクラ! 逃げえ!」
ウドとテクラはそん隙に逃げ出し、おいが背中に隠れた。
「はるか先生…!」
「先生が何とかすっ、隠れ!」
敵が砂浜ば駆けっせえ向こうて来よっ…。
テレキネシス、おいはウドとテクラん隠れちょっ茂みば砂浜ん石で囲っせえ守った。
囲うちょっとは子どんらだけやなか、敵も攻撃も岩ば動かしっせえ囲む。
閉じ込めっ事が出来ればあとは簡単じゃっど、おいは小石ば囲いん中に投げ込んだ。
小石は敵ん入っちょっ囲いん中ば、跳ねっせえ飛びよっ…。
「逃げれっもんなら逃げてみやんせ…イフ・ユー・キャンじゃっど!」
こん絶対包囲じゃ、敵は逃げきらん。
飛び跳ねっ小石に何度も当たっせえ、みるみるうちん血だるまんなりよっど。
そんうちに悲鳴が聞こえんようんなった、け死みよったか。
おいは陣ば解いた。
「はるか先生…こわかった!」
子どんらがおいが腰に抱きつきよっ、おいは彼らん事ばまとめて抱いた。
「もう大丈夫じゃっど、敵はみいんなけ死みよったど…」
「はるか先生て強かったんだね…これが男の中の男か、てか強過ぎだろ」
「すっげ…大人の色気だけじゃなくて、無双なんてマジかっこ良過ぎ」
そいからおいはウドに招かれっせえ、ウドん家で飯ばご馳走んなった。
ウドんおっかんが豚肉ん煮物ば運んで来っ。
はやとん族ん純血じゃっどか、肥えていてんくっきり華んあっ顔ん美しかおなごじゃった。
「先生、ウドとテクラの事ありがとうございました」
「あ…いえ、そげん事なか…」
「まさかこんな立派な男の人とは意外でしたよ、てっきり女の人かと…」
ウドんおっかんはうふふ笑うた。
やっぱい、おなごち思われちょったとか…。
「このタイラ島は本土から移り住んだはやとん族が住んでいてね、
離島の事だから今まで純血が守られて来たんだけどねえ…」
「じゃどん、こん離島まで冒険者らが来よった…」
しかも死体ん装備ば見っと、今まで見た冒険者らん装備とはまた傾向が違うちょっ。
「はやとん国」んおった冒険者らやなか。
たぶん王ん死がもう冒険者らん間で知られちょっ。
直さん…無事け、会いたか。
「ウドんおやっどにおっかん、おまんさら今ん冒険者らん支配について、どげん思もちょっ?」
「冒険者らか…あいつらの支配は我慢ならない、やりたい放題だ。
だから俺らもこのタイラ島に逃げてきたんだが…」
「そうですとも、あいつら原住民を奴隷としか思っていない。
私らは奴隷なんかじゃない、人だ。人には人の心ってもんがあるのさ」
やっぱい良うは思もちょらん。
入植者の追放ち意思は、原住民ら共通ん思想らし。
「おいも冒険者らん横暴は見ちょっ、良か印象はなか。
アタや他ん島ん原住民らも皆おんなじ考えじゃっど…」
「あのさ、はるか先生…先生は特殊な力を持っている。
うちのウドやテクラ、それからタケ島のリート、イオ島のタビタと、遠くから会話出来る、
教材も映像も送る事が出来る…しかも電話や郵便ではない」
ウドんおやっどが突然おいが能力について話し始めよった。
何言いたか。
「出来っ、そいが?」
「もっと大勢の人間と同時に会話出来るかね?」
「大勢ち…わからん、やった事はなか。じゃどん試してん良かよ」
「他の原住民らと話し合いたい、そのためにはるか先生に協力して欲しい」
「…そいは集会け? 国家ん転覆ば狙うちょっ集会…わっぜか危険じゃっど」
ウドんおやっどはかにぱんごた丸か手でおいが手ば握っせえ、横ん首振りよった。
「そこではるか先生の出番だ、はるか先生の能力は国の通信を利用しない。
つまり、検閲や傍受の対象外だ」
「そげん言論統制が厳しかね…確かにおいは国ん通信網ば使うちょらん。
紙ば使わんで音声だけんすっと証拠も残らん…。
ウドんおやっど、集会すっならひとり同志ば紹介したかち思も」
「誰だね?」
「こん『はやとん国』ん王妃さあじゃっど、ちいと訳あって王妃さあん事知っちょっ。
民間出身ち事も、人民解放ん同志ち事も…あん人ほど頼りになっ同志はなか」
隣に座っちょっウドがによによしっせえ、肘で突きよった。
「訳って何だよはるか先生、王妃さまと付き合ってるのか?」
「アホけ、王妃さあとはそげん関係やなか。王妃さあはナカムラ先生が元カノじゃっど」
「えっ…ナカムラ先生て、あのすっげ天才軍師の?」




