第18話 こげんぶにせが顔出しはいけんが
第18話 こげんぶにせが顔出しはいけんが
そいから直さんとはしばらく会わんかった。
おいはいつも通り、朝ん灰かきから一日ば始めっせえ、朝夕だけ海ん出っせえ、
日中は昼寝したり、仕事したりしっせえ過ごしちょった。
仕事ん合間に直さんがくいたDVDば見っ。
方程式ん基礎、英語ん基礎、物理ん公式と説明など、
大事なとこがアニメーション化されちょった。
良う噛み砕いてあっ、わかりやすか…。
やっぱい直さんは相当頭が良か人じゃっど。
しかし、こんナカムラ先生からパクったち素材はどげんかならんけ。
どこん風俗んチラシけ。
直さんはこんアニメに音声ばつけろち言いよっ。
おいがストックからじゃったら…こいしかなか!
「うっきゃあ! イケメンボイス来たあ! 萌え殺されるう!
このCVは…伊藤幸宏、明石薫、新川よしたかだな! そうだろ!」
「はるか先生、何だよこれ…Web授業のつもりか? なんというエロ動画…抜ける。
男の俺でも余裕だよ、はるか先生実はむっつりだな?」
先行しっせえ、おいはリートとタビタん年長ん生徒に公開してみた。
二人にはリートんタケ島に集まってもろうた。
デートん良か機会じゃっど。
「どげんね? こんアニメーション、直さんがくいよったもんで、
おいが能力で他ん子らに送ってみよかち思もちょっけんど…」
「『直さん』て…? 誰?」
しもた、そういやタビタは直さんが事知らん。
「もしかして! はるか先生の彼女? やっだあ、はるか先生もやるう!」
「違うよタビタ、直さんは王妃さま…俺たちの同志」
「同志…王妃さまが…」
「直さん…王妃さあは民間出身じゃっど、こん『はやとん国』が民ん事もわかっちょっ。
入植者らとの関係も、民が遭うちょっ苦しみも」
おいは直さんが事情ばタビタに説明した。
「で、タビタ。はるか先生は王妃さまの事が好きなんだけど、
ほら、はるか先生てピュアな童貞じゃん? 俺らでなんとかしないと」
「まじ? ちょっとうちらがんばろうよ、リート。でも王妃さまって四十ぐらいだよね?
やっだあ、あねショタ? うちらとおんなじじゃん、同志だよ!」
童て…? あねショ…?
まあ良か…とりあえず同志ち事はわかってくいたらし。
「そいから…こんあたりは中村姓が多か、ナカムラ先生はよう見つけきらん。
直さんも消息ば知らんち言うちょっ」
「ああ…そうだね、俺もタビタもアタのおっちゃんもみんな苗字『中村』だし」
「ぶっ!」
「みんなどうせ『中村』だからいちいち苗字つけないんだ、名前で区別してるんだよ」
道理でみんな名前しか知らんち思っちょったら…そげん事け。
「『中村』ち…ナカムラ先生もこん『はやとん国』ん原住民じゃっどけ…」
「あ、それ違うはるか先生」
タビタはふと思い出しっせえ、言うた。
「前に連絡帳で昔ははるか先生と同じ、『アメリカ』に住んでたって書いてたよ。
『アメリカ』で学校の先生をしていたとか」
「何ち、ナカムラ先生もアメリカから来たとけ!」
「でもね『アメリカ』の暮らしが辛くて、この『はやとん国』に来たんだって」
「へえ…」
おいは施設ん中で一生ば終えっとが嫌じゃったから、逃げて来たけんどな。
ナカムラ先生にとってアメリカはどげん国じゃったろう。
さすがに幽閉ちほどやなか、じゃどんアメリカもアジア人への差別はあっと。
アメリカん英語もちいとだらりとしっせえ、日本人にゃわっぜ難しか。
アメリカ育ちやなか限り、さぞ暮らしにくか国じゃったろう。
アニメーションば使うた授業は子どんらに好評じゃった。
おいが許にゃ続編ば希望すっ声や、使用すっ音声ん声優んリクエストが、
連絡帳に書かれっようんなった。
ある日年少ん子どんら2人に、こんアニメーションば使うた、
理科ん授業しちょった時じゃった。
「…俺たちは磁石だね、僕がSで君がN…なんでだろ、正反対なのに。
どうしてこんなにも君に魅かれるのかな」
アニメーションは「磁石」について扱うちょった。
もちろんここにも、編集した音声データが使われちょっ。
すっと、クレアボヤンスが先にウドち少年が手ばあげっとが見えた。
ウドはナカムラ先生が頃からん生徒じゃった。
「はい! はるか先生、質問があります!
なんで正反対なのにくっつこうとするんですか? ツンデレの仲間?」
ツンデ…?
さすがナカムラ先生、こげんこまんか子どんにまで下品な…。
てか、参った…こい以上ん詳しか説明ん音声は作っちょらん、説明しきらん。
「『イヤよイヤよも好きのうち』だよね? 『イヤ』と言いながらも女は男を受け入れるのよ」
もう一人テクラち少女が胸に手ば当てっせえ、ウドに言う。
「なるほど! 『イヤ』って言われれば男は燃えるもんな!」
「はるか先生もきっと『イヤ』で燃えるのよ」
「ちょっ…おいはそげん事なかでね! …しもた、いけん」
おいはついうっかり、地声ば送信してしもうた。
子どんらがにたあちすっ。
「あ、はるか先生だ」
「はるか先生だな、今の声…うおお、まじリートの言う通り男の人だ!」
「はるか先生、イケメンて本当? リートがすっげかっけえて電話で言ってたよ。
てかはるか先生の顔見て見たい!」
「えっ…あの、そのう、おいはイケメンやなかでね…いけんが、がっかいすっ」
「えー! 見たーい!」
「もうばればれだよ、いいじゃん!」
子どんらに押されっせえ、おいは渋々姿ば送信した。
「あのですよう、こんにちは…はるか先生です」
あん「美しか文字んはるか先生」が、こげん色ん黒か、丸顔ん、ヒゲん、
むきむきんおんじょち…さそがっかいすっに違いなか。
子どんらは目ば丸うしっせえ、一瞬黙り込みよった。
…やっぱい!




