第14話 来やんせ国王さあ、おいが敵
第14話 来やんせ国王さあ、おいが敵
直さんは国王ん腕ん中で、ぎゅうち目ばつぶっちょった。
「ちょっ、やめっ…」
「お前は変わったね…前はそんな顔をしなかった、そんな声を出さなかった。
会わない時間も悪くない、お前がこんなにもなまめかしくなるのなら…」
「いやだ、誰がお前なんかと」
国王は直さんが上になっせえ、自分の脚ん間に手ば入れよった。
そいからより深く沈みよった。
…見とうなか、おいは思わずひとり屋根ん上にテレポーテーションばしてしもた。
おいは所詮ただん遊びん男、こいが現実。
テレポーテーションでリートば屋根ん上に呼び出しっせえ、島ん戻っ。
今からじゃったらもう遅かと、タケ島ん両親に連絡すっ。
リートに飯ば食わっせえ、おいは縁側から外ん出た。
波ん音が暗がりでおいが心んごた騒いじょった。
「…はるか先生さ、なんで王妃さま助けないんだよ」
リートが縁側でおいに硬か声で話しかけよった。
おいは振り向かんとそんまま言うた。
「夫婦ん情事ば邪魔すっもんがどこんおっと。
ぐらしかち思もけんど、おいが直さん助けたらいけん」
「助けろよ、はるか先生! そこは割り込んででも助けるところだろ!
だって王妃さま、あの後泣いてたんだよ? 国王が行って俺が呼ばれるまでずうっと。
王妃さまが何て言って泣いてたと思う!」
リートはおいが肩ば掴んで、怒りばぶつけよった。
「はるか先生、はるか先生…ずっとはるか先生の事呼んで泣いてたんだよ?
そんな人を助けないなんてひどいよ!」
「…おいだって助けたか。誰よりもおいが直さんが事助けっせえ、自由んしてやりたか。
じゃどん直さんは国王ば夫にしちょっ王妃、おいはただん遊び相手、
そげん男が助けて良か訳なかろうもん、こいが現実ぞ…!」
おいはこぼれっ涙ばぐしゃり手ん甲で拭うた。
「すまん直さん…ごめん…!」
「はるか先生…」
リートはおいが背中んかぶさった。
「…王妃さまを自由に出来るのは、はるか先生だけ…王妃さまを助けて。
あんな国王から解放して、幸せにしてよ。
むきむきなあのはるか先生が泣くほどに思う人なら…」
翌朝タケ島から迎えが来て、リートんおやっどが礼ば言うちょった。
純血んエルフらしく、長か耳ん尖りよっイケメンおんじょじゃった。
しかも漁師ち言うだけあって、結構むきむきじゃっど。
「はるか先生、いつもうちのリートが申し訳ない」
「何の、ちいとも構わんでね」
「しっかしリートから聞いてはいたけど、あの『はるか先生』が男とはね」
「むひょ。やっぱいおかしかね、男で『はるか』ち名前は。
『悠』ち書くから字面は普通じゃけんど…」
リートんおやっどもきっと、おいがこげんむきむきんおんじょでがっかいしちょっ。
「悠」はけ死んだおっかんが付けてくいた名前じゃった。
由来は知らん、じゃどんおいはこん名前んせいで苦労して来た。
まず「はるか」ち読めん、高確率で「ゆう」ち読まれっ。
そいからおなごんごたち良う言われちょっ。
おっかんはおいが3つん時にけ死みよった。
焼死じゃった、じゃどんわっぜおかしかけ死み方じゃった。
家ん近くん外苑が青か芝生ん中に、骨しか残っちょらんかった。
芝生も燃えちょらん、警察がいくら捜査してん結局何もわからんかった。
リートがおやっどと帰っと、おいは直さんが部屋に忍び込んだ。
「どうした? 私が他人の女とわかって、少しは燃えてくれたか?」
「直さんごめん、昨日…」
「あそこでお前が飛び出して来なくてよかったよ、もう気にするな。
それに…お前には見られたくない」
ベッドに腰掛けちょっ直さんは視線ば床に落とした。
「はるか先生、ここにはもうあまり来るな」
「なして…」
「だんながいつ来てもおかしくない」
「だんなち…直さんおまんさあん男ん事、ちいとも好いちょらんが。
なしてそげん男と結婚ば…」
直さんは少し笑ろっせえ、言うた。
「もちろん国王だからさ…あんな男嫌いだし、あんな男の子供など欲しくもない。
はるか先生とだったら欲しかったけど、もう四十を過ぎた。子は諦めた」
…若う見えてん、直さんおいよか年上じゃったか。
「私はあの男とではなく、国と結婚したと思っている。
私の夫がこの『はやとん国』ならば、その人民は私の子。
私は人民解放の母になる…はるか先生は父になってくれるか?
私と一緒に、人民解放の父と母になってくれるか?」
…おいんごた男と、こげん見事なおなごが釣り合うとか。
直さんは顔ば上げっせえ、おいが事じいっと見つめよった。
「なっど…」
おいは直さんが事抱きしめっせえ、唇ば奪うた。
目ば開けっと直さんは笑うておった。
「これはこれは…私の事、惚れてくれたかな?」
「わからん、じゃどん…じゃどんおまんさん事思もたら、おいは苦しか。
胸んきゅう痛となっ、わっぜ苦しか…」
おまんさん事思もたら、おいはただん男んなっ。
隣んおって欲しか、触れたか、抱きたか。
直さんが全てば欲しか、おいだけんもんにしたか…。
「私は苦しくないね」
直さんはぷっと吹き出した。
「何おかしか」
「はるか先生を思う時、私は全てを忘れられる。また前を向ける、頑張ろうと思える。
はるか先生だから…ほら、『ユー・キャン・セット・ミー・フリー』てやつだよ。
好きにしていいよ、はるか先生…だから早く私を欲望から解放するのだ…ぐへ」
「もう、直さんは…良かよ、しちゃっ。おまんさなんかすんぐ妊娠すっど。
ひいひい泣かしちゃっ。じゃどんそいはまずおまんさん事解放してから…」
ドアん外で足音がすっ、国王が踏み込んで来っとか。
無粋じゃっどね。
ドアが開きよっ、おいはジャケットんポケットに手ば突っ込んだ。
来やんせ国王さあ、おいが敵。




