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遠くからはるか☆IF YOU CAN  作者: ヨシトミ
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第1話 イフ・ユー・キャン

挿絵(By みてみん)



第1話 イフ・ユー・キャン


ただ、他人より勉強ばしたかっただけじゃった。

そいがなしてこげん事になっ。


「待てハルカ!」

「悠!」


おいは春ん夜ん荒野ば駆けっ、アメリカん訓練施設から逃亡中じゃった。

逃げてん逃げてん、追っ手はちいとも諦めん。

まだこまんか頃、おいはただ勉強ばしにアメリカん渡った。

アメリカにゃおいんごた、もっと勉強ばしたか子どんがためん教育施設があっち、

そげんばばどんが教えてくいた。


最初んうちは良かとこち思もちょった。

こげん高度な教育は日本じゃ受けきらんち、おいも喜んじょった。

じゃどん、そんうちにおいにゃ特別な能力があっち言うて、別ん施設に移された。

そこは能力者んためん訓練施設で、おいはそこで訓練ばされっせえ、

能力者ちもんに仕立て上げられた。


おいが能力は遠隔操作、遠かもんば操作すっ事。

テレキネシスでん、テレパシーでん、「テレ」が付くもんじゃったら大体得意じゃっど。

なんせおいが名は「悠」ち書きっせえ、「はるか」じゃからな…!

施設じゃおいよか凄か能力者がようさんおって、そん能力はわっぜ役ん立ちよった。

警察捜査、鉱脈探査、発作予知…そん中でおいが遠隔操作ん能力は、

案外役ん立たず、施設でん使い道ん困っちょった。


かといって国外には出しとはなからしく、おいは施設ん中で飼い殺し状態じゃった。

おいが教育も訓練も放棄されてしもた。

おいがやれっ事は施設ん部屋で、くる日もくる日もゲームばかいすっ毎日じゃった。

はっきり言うて廃人ちもんじゃった、まこちそいしかやっ事がなか生活じゃった。

アメリカが親元に何ち言うちょっかわからん。

日本のじじどんやばばどん、おやっどが生きちょっかもわからん。


36ん誕生日ん夜、おいは施設から逃げ出した。

こんまま40んなっとは、こんまま施設ん中で一生ば終えっとは勘弁じゃっどね。

ただん能力者がなしてアメリカん支配ば受けにゃいけん。

おいはおい、そい以外ん何者でんなか。

おいは自由んなっど、貴様らが支配はもう終いじゃっど。


テレポーテーション、まずは施設ん外ん出た。

民家んガレージからバイクば盗み出しっせえ、能力ば使こっせえ鍵ば回す。

エンジンばふかっせえ街ん外れへ、暗か荒野へと走り出す。

じゃどんそこは能力者ん施設、ばっちり対策済みじゃった。

能力者ん能力ば無効んすっ「アンチ・サイ」ち能力者が、能力者ん逃亡から守っちょった。

おいは把握されっせえ、あっという間に施設ん職員に追いつかれてしもうた。

おいは能力で沿道ん建物の窓ガラスば破いた。

破片が意思ば持ちより、後方ん追跡者へ向かう。


「ハルカ! 逃がさぬ!」

「国家機密がそう易々と逃げられると思うな!」


能力者んなったおいはアメリカん国家機密じゃった。

当然じゃっど、おいはアメリカん能力者ん訓練施設ん存在も、そん訓練内容も、

アメリカん国家機密ん何もかも知ってしもたから。

担当ん先生もおらんようんなった…たぶん国に消さいた。

俺はバイクば捨てっせえ必死で夜ん荒野ば駆けっせえ、施設で盗んだ拳銃ば発砲しっせえ、

一歩でん遠かとこへ逃げようち必死じゃった。


「止まらぬか…是非もなし」


施設ん職員は、ジャケットん内側から拳銃ば抜きよった。

おいが事ばうっ殺すつもいか。

そうじゃっどな…こげん役ん立たん能力者なんぞ、貴様らにゃリスクでしかなか。

引き金は引かれ、弾が飛んで来よっ。

絶体絶命じゃっど、新井悠…!


「捕まえられっもんなら捕まえてみやんせ、キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン…じゃっど!」


おいはテレポーテーションば発動した。

アンチ・サイがおっ…無理じゃっどか。

じゃどんどげん事か、そん時だけはテレポーテーションが上手く発動した…。

おいは夜ん荒野から、意識ん空間へと飲み込まれた。

…行っど、GOじゃっど悠。


行き先も決めず能力ば発動したもんじゃから、おいは意識ん空間ば彷徨い続けた。

…どっか遠かとこへ、出来っとならアメリカやなかとこへ、故郷へ。

桜田門が前ん、ぴょこん飛び地んごた飛び出しちょっ新井ん家へ。

キモオタ異世界ファンタジーなデザインばかいしちょっけんど、優しかおやっどん許へ…。



海ん鳴っ音がすっ…。

目を覚まっせえ、起き上がっと港ん倉庫ん脇においはおった。

何ねここは。

辺りを見回すと、近くん街が見えっ。

建てもんがめったやたらと乙女チックじゃっどな…。

中世ヨーロッパち言うもんけ? 石造りに深か橙ん屋根ん、揃いん町並みに、

街ん奥にゃ同じ揃いん屋根ん尖った教会もあっ。

城も見えっ、何の城ね。鶴丸城け?


こいからどげんしたら良かか…おいは港から街を目指っせえてくてく歩いた。

とりあえずおいはこん国じゃ異邦人ち事んなっ。

色ん黒か、ひげん汚か、丸顔んおんじょは目立っせえ、通行人からじろじろと見られた。

街に入ると建てもんこそ中世ヨーロッパじゃったが、文化は日本そのままで、

食堂ん食べもんもカレーライスやラーメンがあって、おいは腹ば抱えくそ笑うた。

何ね、こんおかしか国は。まるでゲームか何かん世界んごた…。


そげんしっせえしばらくぶらぶら歩いちょったら、おいは突然男らに囲まれてしもた。


「何ね貴様きさんら」

「やっぱり。この辺に異邦人が歩いていると聞いたが…お前は敵か?」

「敵ち何ね、おいは…」


男らは見た目ヨーロッパ人ごたじゃったが、日本語ば話しちょっ。

そいでこいまた中世ヨーロッパ風ん武具ば身につけちょっ。

どいつんこいつん、皆無駄に装飾ん多か事。アホん集団け。


「貴様らこそ何ね、他人が事捕まえっせえ名乗りもせんち…!」

「?」

「どうやら日本人じゃないらしい、言葉が半分しか通じない。ハーフか何かか?」


男ん一人が首ば横ん振った。

失礼じゃっど…!

テレキネシス…おいは一切ん手ば触れっ事なく男ん首ば捻った。

男は口から泡ば吹きっせえ、小便ば漏らっせえ、絶命しよった。

そいで勇者んつもいけ? 弱かね。


「おいはハーフやなか、おいは新井悠…日本人じゃっど」

「何だ今のは、チートか…!」

「チートやなかでね、おいはちいとん使えん男…強うはなか。

単純に貴様らが弱かだけじゃっどね…!」


ごちゃごちゃ無駄ん装飾ん多か男らは、束んなっておいにかかって来よった。

テレポーテーション…おいは男らん手ん内から消えた。

捕まえてみやんせ、出来っもんならな。

イフ・ユー・キャンじゃっど…!


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