戦いの決着
それから、三ヶ月。最初は無くなった左目のこと、を問い詰められてり、貴重な次元魔法を使えなくなった彼が何も離さないため、帝国のメイドが付きっきりで看病したりなど、いろいろあった。目の事は無理やりごまかした。本当は、今すぐにでも助けに行きたかったが、それが愚かとわかる彼女は冷静に、死ぬほど自らを鍛えていった。
ステータス
擁名:ロキ
レベル:30
体力:19000
攻撃力:10000
魔力:15000
契約精霊:クロ
沢山の魔法を同時に扱う彼女に敵う者は帝国はおろか、周辺国にすらいなくなっていた。勇者も例外ではなく。勇者の多くは彼女に嫉妬した。それ程までに圧倒だったのだ。
「うし、行くか!」
彼は勇者のリーダー的存在、トウだ。女王に物申した金髪の少年である。見た目とは裏腹にリーダーシップがあり、頼られていた。そして、暗黒大陸を進むこと2週間。魔王城を進むこと4日。とうとう、王の間と思われる扉の前にたどり着いた。
「こ、ここか…」一同の息を呑む声がする。トウが扉を開けると_吹き飛んだ。比喩ではなく、吹き飛んだのだ。王の間は暴風が吹き荒れる。その奥に黒い姿に翼を生やした者がいた。
「まんま、魔王じゃん…」
誰かが呟いたが、そのつぶやきは誰の耳にも届かずに消えた。リーダーが一瞬で再起不能になり、勇者達はタダの烏合の衆となった。風に飛ばされるもの、魔王の魔法に貫かれ死ぬもの、逃げ出して魔族に葬られるもの。見る見るうちに数は減っていった。
「巫山戯るな…」
そう呟いたのはロキだった。
(ここまで来て彼にもう1度会えずに、優人に会えずに死ぬ?違う。私は弱者じゃないんだ。何のためにここまで来た。ここはまだただの通過点だ。)
1人杖をもつ。
「奪い、惑わせ、擁護せよ。対象は我が身のみ」
自分一人分の防御魔法を張り、魔王の鑑定をする
ステータス
種族名:魔王
体力:35000
攻撃力:28000
魔力:9800/15000
(魔力が高くない?もしかしたら勝てるかもしれない。)
現段階でこれだけ消耗していれば、勝ち目は十分にあった。
「ほぅ、小娘よ、この風の中立つか。」
「こんな微風で飛ばされるのが可笑しいだけよ」
「ふん、どうせ死ぬが、記念に名を聞こうか」
魔王はにやりと笑う。
「ロキ。それが私の名前。覚えておいて。貴方を殺すものの名前よ」
「よく回る口だ。すぐに殺してしまいたくなる。ただ、楽しませろよっ!」
「いいじゃない!殺し合いと洒落こみましょうか!」
(主がどんどんバトルジャンキーに……)
クロは1人、この現状を嘆いていた。
魔王から放たれるレーザーのような攻撃。それをあざやかにかわし、「その程度?」と喧嘩を売る。しかし、ロキもかなり消耗していた。このままでは、ジリ貧なのは誰の目にも明らかだった。
(まだ、落ちついて…)
ロキは心を落ち着ける。ひだりから来る斬撃を避けた所で気付く。
(左の斬撃の後に隙ができる……!)
右からの斬撃と火属性の攻撃から、左の斬撃。
(今だ!)
「恐ることなかれ。その名を!?」
唱えている途中に、魔王がにやりと笑う。
「はまりおったな。強さの割に対人経験はあまり無いようだ!」
(最初からわざと隙を作っていた!?)
反射で詠唱を中断する。
彼女の魔力は膨大だったが、魔王を、一撃で落とすとなるとほぼ全てをつかいきる攻撃となる。無駄打ちはできない。
「終わりだ。その魂を、この鞘に刻め!ピエータフ」
避けようにも、膨大な魔力の流れを詠唱中断で無理やり止めた反動で動けない。
(ごめんね……レオ。迎えに行けそうにないや。本当は好きだったよ……)
元より、死は覚悟していた。静かに瞼を閉じる。
しかし、来るべき痛みは来ない。
「……え?」
クロが攻撃をその身で受けていた。
「がはっ」
ボキボキと不吉な音と共に壁際に吹き飛ぶ。
「クロっ!なんでっ!」
「これは、傑作だ!最上位の精霊を統べる精霊王が人を庇うとは。面白いものをみたぞ!」
そんな声を聞かずにクロの元に駆け寄る。
「大丈夫、死なないよ。オレは精霊だ。主の魔力がある限り、何度でも帰ってくる。ただ、今回は少し長めに休ませて欲しい。契約はあるから、魔法は使えるから安心しな」
そういうと、ロキの頬に軽くキスをして消えた。精霊のキスは心からの敬愛と信頼の証だ。ロキはほとんど見えなくなっていた目を見開く。
「どうした?今更、恐怖で動けなくなったのか?」
「そんなわけないでしょ。とりあえずー」
《死ね》
纏う雰囲気ががらっと変わる。ソレは魔王すら畏怖する程の殺気。彼女は知らないが、覚醒と呼ばれるもので、覚醒後のステータスは大きく上昇する。それも永久的にだ。
《恐れることなかれ。化け物の名を。残るのはその血のみだ。》
バシュッと音を立てて魔王の右腕が吹き飛ぶ。
「は?」
《畏怖し、敬い、平伏せよ。王は我だ。逆らう事は赦さない。》
それだけで、魔王は潰れて死んだ。あまりにも呆気なかった。ふらりとロキは倒れた。すると、ゴゴゴと不吉な音を立て城が崩壊していく。
(まじか、聞いてないよ。城が壊れるなんて……)
「急げ!魔力移動の能力者は!こっちだ!」
(リーダーさん生きてたんだ。)
テキパキと指示を出し魔力移動の能力者をロキの元に案内する。
(これで、助か……)
次に来たのは脱力感。
「な、なんで……?」
かろうじて絞り出した言葉。
「そんなの、お前の魔力があれば、みんな助かるからだよ!お前は最初から仲間に含まれない!」
(はは…私……馬鹿みたい。こんなのを守るために戦ったの?)
(こんな世界なら……いっそ…………)
《生命が死を【認識】しました。条件を満たした為、進化を開始します。》
仲間だったものが去る中、頭の中にそんな声が響く。そこでロキは意識を手放した。
下手でごめんなさい。展開が早いです。そんなに長く続く予定は有りません。
時間違え等はしていしていただけるとありがたいです!