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別れと決意

「私の名前はアイシャ・クラーク。この国の第一王女です。まずは、いきなり連れてきてしまったことをお許しください。」

そう言ってしたお辞儀からは気品を感じた。金髪青目という要素をもつアイシャ王女の謝罪に、みんなは(主に男子)「顔を上げてください!!」挙動不審になるものが続出した。これをわかった上でアイシャに一番最初に話してもらっているのなら、国王はかなりのやり手なのだろう。「一つの空間にいたあなたがたを無理矢理こちらの世界に連れてきました。いきなり知らないところに来るので知り合いの方が心強いでしょう。そして、本題です。皆様には、魔王を討伐していただきたいのです。もちろん、討伐までは帝国が全力でサポートさせて頂きます。討伐した後には最高の生活、地位、お金、私達の可能な限り希望を叶えましょう。」

反対意見が出ると思ったが、きっと甘い言葉に酔っているのだろう。誰も文句をいわない。王女がこの世界について話し続ける中、莉子は興味なさげに、自分の現状を整理していた。

(落ち着いてみよう。私は遠月(とおつき) 莉子(りこ)。16歳で同級生と一緒にこっちに連れてこられたのか…え?)

周りを見る。おかしい。全員の下に魔法陣が現れたはずなのに、ここにいるのは私の知らない25人ほど。会話のノリなどから、知り合いなことがうかがえる。

(せめて優人たちはー)

仲のいい友達を探す。如月優人、水無月奏、望月蒼。全員、名前に「月」が入るからといったとても些細な理由からよくつるむようになった。最も、実際の友達は優人だけで他のふたりは優人が好きで一緒にいたと言った感じだったが。

「あのー…このクラスの人じゃ無いですよね?」

遠慮がちに聞かれた。どこか優しい雰囲気を感じさせる少年。莉子は無言で頷く。女王はそれを聞き

「あなたがこちらに来た時の状況を教えて頂けますか?」

莉子はざっくりと魔法陣がいきなり現れたことを説明した。

「もしかしたら、時間が歪んだのかも知れません。おそらくは、次の代の勇者なのでしょう。」

「待てよっ!次の代の勇者?魔王倒したら終わりじゃねーのかよ!」

金髪の見るからに悪そうな少年が叫ぶ。王女は冷静に話を進める。

「落ち着いてください。この世界には現在、2人の魔王が確認されています。あなたがたには片方を討伐して頂きたいのです。もう片方は現在、眠っています。国を襲ってくる心配は無いのです。」

「何で、魔王と戦うんですか?」

莉子がそう言うと、みんな呆然としていた。

「えーっと、王女様の話は……」

「すみません、ぼーっとしてしまっていました。」

「えっとね……」

優しい雰囲気の彼の話を要約すると、こうだ。

この世界には魔王や魔物、魔族、エルフや獣人が存在しており、魔族の住む場所を暗黒大陸と呼ぶららしい。エルフや獣人は奴隷としてあちこちにいて、彼らの国は昔に滅び、今では小さい集落程度だという。そして魔法があるらしい。精霊との契約と魔法適性で魔法は使えるらしい。属性は火、風、土、水の主要属性に光、闇の強いが、使い手の少ない属性。さらに神樹があり、神樹の結界の中では魔族は弱体化してしまう。その神樹の結界内にある数少ない国の中でも最も大きいのが、この帝国、ノーザン・クラークである。ということらしい。

「次は擁名(ようめい)を決めていただきます。擁名とはこちらの名前に似せた偽名のようなものです。1度だけつけることができ、その言葉にはマナが宿ります。そうすることで、ステータスを見たり、この世界の言葉や文字、常識の理解ができるようになります。」

莉子はさっさと変えることにした。

(莉子……riko……roki!)

簡単なローマ字の並び替え。彼女の名はロキとなった。

「名前が決まった方からステータスと、言ってください。確認次第、こちらに持ってきて頂きます。」

「「「ステータス」」」

莉子同様に、改名をさっさと終えた者達がか呟く。

擁名:ロキ

レベル:1

体力:100

攻撃力:100

魔力:150

魔法適性:all

契約精霊:なし

スキル:成長促進、上位鑑定、魔法創造、進化

(うーん、この世界の平均は10程らしいから強いのか……でも、魔王に勝てるのかなぁ)

レベルは平均30~50ほど、王国騎士団長で100程らしい。上限は確認されていないとのこと。

(そもそも、進化って何?)

《スキル、上位鑑定を使用します。パッシブ化が可能です。行いますか?》

(とりあえず、はいでいっか。)

スキル:進化

神を超える可能性のあるもの。極限状態に自らの肉体を変質させる。

(…鑑定さん優秀ね。)

ほかのスキルは

スキル:魔法創造

思い浮かべた魔法を生み出すことが出来る。

スキル:成長促進

獲得経験値が倍増される。成長率が上がる。パーティーメンバーになることで、効果を共有できる。

(スキルチートじゃん!)

案の定、王女は

「す、素晴らしい!これほど恵まれたものがいるとは!」

他の者達も強かったのだろう。ただ。スキルは別らしい。生まれると同時に目覚め、変更や増やす事は出来ない。それがこの世界のスキルらしい。一部の者から向けられる恨みがましい目を向けられながら、どうしよっかなーなんて事を気ままに考えていた。

それから1ヶ月ほど、近くの平原でレベル上げをしてステータスは

擁名:ロキ

レベル:6

体力:600

攻撃力:600

魔力:900

契約精霊:なし

(スキルなど変化しないものは省略します。)

成長促進のせいで大変な事になっていた。しかし、この場所に来て以来のステータス確認以来、見られていないのでこの事は誰も知らなかったが。

「お疲れさま。」

横からの声でロキが振り返ると優しい雰囲気少年ことレオがいた。あの時以来パーティーを組んでいるのだ。レオはイケメンなのに組む人はいないのだろうかとロキが考えていると女子達がお互いを牽制しあい、声を掛けられないようにし、男子はそれを良く思わずに彼を嫌っているといった様子だった。ちなみにレオのステータスは

擁名:レオ

レベル:6

体力:500

攻撃力:700

魔力:500

魔法適性:風、土、火、水

契約精霊:なし

スキル:飛翔、遠視、(成長促進)、進化

レオも人間離れしていた。本来魔法適性は一つ。多くて二つだ。そして、進化のスキルがあることからもしかしたらレアではないのかもしれない。(王女の話だと聞いたことがないらしい。)

そして、今日精霊召喚の儀式を行う。お城に戻ると

「訓練、お疲れ様です。、1人ずつ神殿の方へ」

言われたとおりに神殿へ行くと王女から、儀式について説明された。ほかのものは結界の外から見る見ている。

浮かんだ言葉を詠唱とするらしい。


紡ぎ、誘い、唄え。

この身と共に

朽ちる覚悟のある者よ。


発光したと思うとそこにいたのは黒髪のイケメンだった。すっとした赤い目に細身の体。人間にしか見えなかった。

「貴方の名を。」

「ロキ」

「ロキ。我が主。この一生をもって、共に。」

不思議な感じだった。前からずっと一緒にいるような心地よさ。口をぱくぱくさせる王女を気にすることもなく、ロキは精霊と話していた。

レオは少し小さい女の子。小学校低学年くらいの見た目だ。ロキが

「ロリコンだね。うん。似合ってるよ。ふふ。」

とからかうと怒っていた。

王女曰く、人型精霊は各属性のトップだという。本来、属性の色が髪に出るらしい。だが、黒と美しい白。光と闇と思うが、光と闇の人型精霊はかつての勇者と共に果てたらしい。

「ねぇ、クロ。」

「なんだ。主よ」

「クロって何属性?」

「我は光と闇を司るものだ。そしてあの、優男の精霊は四大属性を司る。」

クロとはロキが付けた彼の名である。

それから、全員が召喚をおえ、彼女の部屋に

レオ、クロ、リズ(レオの精霊)で集まって話していた。

次の瞬間。レオとリズが消えた。そう、消えたのだ。

「どういう事!?クロ!」

「テレポートだ。魔力は隣から来てる。」


「あはは、ふふふ、あひゃひゃっ!!!」

隣の部屋で時の精霊(他属性を使えなくなる代償にテレポートが使えるようになる)に認められた彼は、ロキが好きだった。なので、レオが気に食わず、飛ばしたのだ。

ばぁんっ!ドアを無理矢理壊す音と共にロキは彼に近づく。

「ロキちゃん!邪魔物は消したよ!ぼくと一緒に…「黙れ。」

セリフを遮って怒りを顕にする。

「現像せよ、我が怒りを表現せしもの」

彼女の手に現れたのは銀のナイフ。それを首に突きつけ言う。

「レオをどこにやったの?」

「あんなやつ「質問にだけ答えて。」魔窟だよ!騎士団長すら近づかない暗黒大陸の!」

ロキはすこし考えて、

(クロ、彼の能力を奪うことはできる?)

念話を使って話しかけた。

(主の魔法創造で可能だ。ただ、次元魔法の持つ力は膨大だ。かなりの代償が必要になるだろう。主の魔力を持ってすれば死にこそしない。我の目を代償にすればいい)

(……わかったわ)

《スキル、魔法創造を使用しました。新魔法、アンチシーフを作成しました。》

「な、何なんだよ…さっきからなんでだまってんだよ!?」

「嘲り、做す。抗いしものへの天罰として。我が目を代償に盗め。アンチシーフ」

左目に信じられないほどの痛みが走る。ただ、彼女は笑っていた。

「あ、あ、あぁあ」

少年は足元に黄色いシミを残して気を失った。

目から血を流し、笑う少女。その手のナイフは自らのクビを捉える。恐怖だったのだろう。そのとき、

「主っ!なぜ!我が目と言っただろう!なに、馬鹿なことをしている!」

「クロ、落ち着いて?」

「落ち着けるかっ!俺は…俺はっ!」

ロキはそっとクロの頬に手を当て包み込む。

「大丈夫だよ。」

「……俺が、主の目になろう。」

人間は片目を失うと高い確率でもう片方も失明する。

「ふふ、それがホントのクロの喋り方?そのままでいいよっ!」

「ああ、わかったよ。主よ、今後はどうするつもりだ?」

呆れ気味のかおを正し、真剣な顔で問う。

「とりあえず、レベルを上げて魔王を倒すよ。暗黒大陸の魔窟は魔王も拒むらしいから、魔王程度が倒せないとどうにもなんないよ」

とりあえずで魔王討伐を目標にした彼女は訓練を今まで以上にこなし、夜はこっそりダンジョンへと潜っていた。

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