表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

魔剣使いと女の子3

 ヤマトとラクスは闘技場の中央で向かい合っていた。

 ヤマトの手には黒い鞘に納められた刀が一振り。 服装も普段着のままだ。

 それに対してラクスは、武器こそ身につけてはいないが右手と左手に色の違うブレスレットを付け防御魔方陣が組み込まれた防護服を身に纏っている。 この防御魔法陣は、魔力を通すことで魔昌獣が持つ魔力障壁と同じ障壁を作り出すことが出来る。 

 魔法士同士の戦闘では、攻撃魔法によって怪我をする者や魔法の制御に失敗して怪我をしてしまう魔法士が多く、幾ら体の傷を治す事の出来る回復魔法があるとは言え致死性の怪我や部位欠損までは回復魔法でも直ぐに治す事は出来ない。

 魔法とは万能であって万全ではないのだ。

 そこで、魔昌獣の魔力障壁をヒントに魔法士の保護を目的に開発されたなのがこの防護服だ。

 魔昌獣が使う魔力障壁に比べれば性能は劣ってしまうが、防護服に組み込まれた防御魔法が一定の攻撃を防いでくれる為、魔昌獣との戦闘でも魔法士同士の戦闘でも怪我を負う率が格段に低下している。

 ただ一つ問題をあげるとすれば、この防護服に組み込まれた防御魔法は魔力の質によってその効果が魔法士それぞれで違ってしまい、一定の防御力を出すことが出来ない。 その為、魔法師同士の対人戦において魔力の高い者の張る防御魔法を抜くことが出来ず時に一方的な戦闘になってしまうこともあるのだ。

 まぁ、防護服の性能自体に問題はないので、魔法士の実力だと言ってしまえばそれまでなところもあるのも事実で、問題視される声はあれど学生の間でも普通に使われている装備だ。


「アンタそんな武器で私とやるつもりなの......」


「そうだけど、何か問題あるか?」


「アンタねぇ、いくら田舎から出てきたとは言え、魔法士同士の戦いで魔力障壁が働くこと知らないわけじゃないでしょ....」


「それ位知ってるさ。 魔力障壁は魔力を持った武器じゃないと突破出来ないって言うんだろ? あぁ、これが通常武器に見えるって言うなら、心配しなくてもこいつはちゃんと魔力の通った武器だから魔力障壁も打ち破れるぞ。 それよりも、お前の方こそ武器を持たなくて平気なのか?」


「ホントに何も知らないのねアンタ........まぁいいわ、特別に後で教えてあげる」


 ラクスが話しを中断しそちらの方に視線を向けると、闘技場の客席にツバキの姿あった。


「二人とも準備は出来ているな.....それではこれより模擬戦を開始する。  過度のオーバーアタック、致死性のある攻撃は禁止とする。 勝敗はどちらかが降参するか戦闘不能になった時点で終了とする。 お互い魔法士として、秩序と誇りを持って試合に臨むように。 準備はいいな二人とも?」


「はい」

「問題ないぜ」


「では........試合開始!」






「さっきの続き.....私が何故武器を持っていないのか、その答えがこれよ! 来なさいレーヴァテイン!」


 ラクスが右手のブレスレットに魔力を込めて空に掲げる。

 右手のブレスレットは、ラクスの魔力得て光を放つとその姿を武器の形へと変化させていき、光が消えていくとラクスの右手には自分の身長と同じく位大きな大剣が握られていた。


「イマジネーションウェポン......創造する武器、私達魔法士は|ARS≪アークス≫と呼んでいる対魔昌獣用の新世代武器がこれよ」


 イマジネーションウェポ......それは、ブレスレットの装備者が魔力を流すことで、ブレスレットに組み込まれた解析装置が装備者の身体情報・魔法適正を流し込まれた魔力から解析し、その形を装備者の願う最適解の武器へと変化させることの出来るものだ。

 ARSは創造された個々に特別な能力を宿し、その能力は装備者の能力を100%以上に引き出してくれる優れ物だ......最適にして最高、同じ物は存在しない唯一無二のオリジナルの武器。 

 それがARSだ。

 しかも、一度魔力を読み込ませたARSは魔力を読み込ませた本人しか扱うことが出来ず、武器形態にない時はブレスレットとして身近に身につけておくことが出来るので生活の邪魔にならないと言う利点までもある魔化学武器の最先端がこれだ。


「そして、これが私のレーヴァテインの力よ! 舞い踊れ業火の炎よ!」


 ラクスがレーヴァテインに魔力を通すと、大剣の刃が炎の刃に変化した。 そのままレーヴァテインをヤマトに向け縦に振り下ろすと、大剣の炎がヤマト目掛けて勢いよく襲い掛かった。

 ヤマトはそれを、持ち前の身体能力を持って交わしラクスから距離をとろうとするが、


「逃がさないわよ!」


 炎は、まるで意思を持った生き物のようにヤマトを逃がすまいと追いかける。

 

「その炎の刃は私の魔力から作られているから、私の意思一つで自由に方向を変えられるのよ。 さらに、これもくらいなさい...ヴォルカニックレイン!」


 ラクスがレーヴァテインを握っていない左手を空に掲げ火球を放つ。

 放たれた火球は、闘技場の天井近くまで上がり弾けると、地上へ所狭しと火の雨を降らせる。


「剣だけじゃなく魔法まで使えるのか.....っと、流石に普通にかわすだけだと厳しいかな.....」


「ふん、流石に身軽のアンタでもこれだけの攻撃をかわしきるのは無理みたいね」


 ラクスの攻撃は実に巧妙だ。

 レーヴァテインの炎でヤマトがかわす方向を限定して、ヴォルカニックレインの攻撃が当たる場所に誘導している。

 おまけにラクスは、試合開始からまだ一歩もその場から動いていないのに対し、ヤマトの方は試合開始から攻める暇も与えてもらえないほど攻撃を受けて動かされている情況だ。 この状態が長く続いたとして、魔力を消費しているラクスと体力を消費しているヤマトどちらが先に参ってしまうかは一目瞭然だろう。





「ユーラリア王国第三王女ラクス・スカーレットレイン。 16歳。 魔法適正は火属性、魔力保有量はSランク。 学園序列は5位で所属チームはなしと。 その類まれなる容姿に、貴族家からは縁談が毎日のように後を絶たなかったが、本人の苛烈な性格も相まって全ての縁談を物理的に拒否。 学園には中等部より在籍と」


 ツバキは手元の資料と戦っているラクスを見ながら彼女を評価する。


「人気先行で、そこらのボンボン貴族連中と同じかと思っていたけど、案外実力の方もしっかりしてるみたいだねぇ。 ただ、やっぱりこの子もARSに頼り過ぎてる所があるかなぁ......まぁ、魔力がある子にとっては仕方がないことなのかもしれないけど、それじゃヤマトには勝てないよ.....なぁ、ヤマト」 






「そうだな....このままの状態が続けば流石に俺の方が厳しいかな。 だったら、こっちもギアを一つ上げさせてもらうぞ........クサナギ流歩防術『|桜舞≪おうぶ≫!』」


 その瞬間、明らかにヤマトの動きが変化した。

 あれほどギリギリでかわしていた攻撃を、まるでくる場所が分かっているかのように洗練された動きで読みきってかわしていく。

 その風に舞う桜の花びらの如く、早く、繊細で、流れるように美しい動きは何者も触れることを許さない。


「何で......何で当たらないのよ......おかしいわ」


「何もおかしな事なんてないさ、魔法を使わなくてもこれくらい長年やり続ければ誰でも出来ることさ......そろそろこっちも反撃させてもらうぞ」


 ヤマトは手に持った黒い鞘から刀を抜くと、降り注ぐ魔法の雨を刀で捌きラクスへと迫る。


「くっ、それ位でいい気になってんじゃないわよ!」


 ラクスはレーヴァテインを縦に横にと振り、縦横無尽な炎の刃の動きでヤマトを牽制するが、桜舞の華麗な身のこなしでそれら全てをかわしてヤマトは進む。


「隙だらけだぞ.....クサナギ流居合い術『|烈空一文字≪れっくういちもんじ≫』......」


 ラクスのレーヴァテインの死角をついて、ヤマトは刀を即座に納めそのまま一歩踏み出すと同時に居合いから斬撃を飛ばす。


「っつ! これ位なんとも.....」


「そう、それは囮だよ」


「えっ?」


 ラクスは斬撃を大きく横に跳んで何とかかわしたが、ラクスが跳んだ先で刀を構え待ち構えるようにして待つヤマト。


「攻撃をかわす時は常に最小の動きで最低限の移動に留めること、じゃないとこんな風に相手に大きな隙を与えてしまうことになるうだ。 と言うわけで、一撃もらうよ」


 そう言ってヤマトは刀を振るいラクスを攻撃するが、


『カ~ン!』


 刀がラクスに触れる直前、甲高い音を魔力障壁に跳ね返された。

 そこでヤマトは攻撃を中断し、ラクスから離れ一度距離をとる。


「......アンタひょっとして魔力障壁も抜けないほど魔力が低いの.....それとも、やっぱりその武器が......」


「いやいや、こいつ自体はちゃんと魔力を通せば魔昌獣の魔力障壁だって破れる武器だよ。 問題があるのは俺の方。 魔力が低いんじゃなくて魔力が0何だよ俺」


「は? 魔力が0ってそんなわけないでしょ? この世界に産まれる者は、必ず魔力を体に宿して産まれてくるそんなの子供だって知ってることよ。 私を馬鹿にしてんのアンタ?」


 魔力を持たないそれは本来ありえないことだ。

 そもそも魔力とは、血液と同じで産まれたときから自然と体の中に流れているもので、それが存在しないということは、空気中の魔素を体に取り込み魔力に変換することすら出来ないということに他ならない。

 それだと当然の如く魔法は使えないし、魔法障壁を張って体を守ることも出来ない。 ましてや、魔力障壁を張れる魔法士や魔昌獣に攻撃を当てることすら出来ないことになる。

 言うならば魔力0というのは、裸のまま戦場を歩き回るのと同じことであり、幾らヤマトの回避力が優れていても素の身体に攻撃を喰らってしまえば大怪我は必須だ。


「馬鹿にするも何も事実だから仕方ないだろ。 それに、うちの里の奴らは皆魔力がないから俺一人だけがってことでもないからな....そういう奴も中にはいるってことだろな」


「そういう奴って.....じゃぁ、私の魔力障壁を抜けないその武器でどうやって私に勝つつもりなのよ.....私に勝つって大口叩いたあれも嘘なわけ?」


「言ったろ、俺は女の子には嘘をつかいない。 だからきちんとお前には勝つさ。 その証拠を今から見せてやる......やるぞウロボロス」

【マスター、思いの他魔力が吸収出来ていません。 この状態での魔剣開放は危険ですので使用を控えることを推奨します。】


「そう言うけど、現状であの魔力障壁を抜くにはやるしかないだろうが。 魔力障壁さえ抜ければ後はこっちで何とかするさ」

【.....承知しました。 ですが、今回は魔剣開放をするだけの魔力がかなり不足していますので、使用時間はかなり限定的なものになりますし使えて3分がいいところかと。 さらに、使用後はしばらく魔力吸収に時間を費やさないといけなくなりますのでご注意を】


「了解......行くぞ魔剣開放!」

【承認。 魔剣ウロボロスを|破壊≪ブレイク≫モードで展開します】


続きは明日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ