表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ

見ないとお仕置きだからね!(笑)

  魔科学それは魔法と科学が融合して発展を遂げた近未来の技術であり、この世界のものは皆魔法の源となる魔力を持っていた。

しかし、そんな近未来の技術にも弊害が存在する。 あらゆる物から、魔法の源となる魔力を喰らう怪物”魔昌獣”である。

そんな魔昌獣の脅威から人々を守る為、魔法学園でも若い魔法士の育成が進んでいた。

時を同じくして、一人の少年が魔法学園に呼ばれたことで物語りは動き始めることになる。



一台の馬車が街道を物凄い速さで駆け抜けていく。


「もっとスピードを上げなさい! 追いつかれるわよ!」


「これ以上は馬車が持ちません! このまま何とか街の近くまでやり過ごすしか.......」


 

馬車に乗った女性が声をあげる。 その後方からは、黒い霧で体を覆った巨大な狼が大地を踏み鳴らしながら馬車を追いかけてきていた。

 

「まさかこんな街の近くで大型の魔昌獣が出るなんてね......十分に警戒していたつもりだったのだけど流石にこれは予想外だわ....」


 魔昌獣。

 それは、魔科学と呼ばれる魔法と科学が融合し発展したこの世界の敵である。

 この世界の者は誰しもが魔法の適正を持ち、体の中に魔力と呼ばれる魔法の元となる力を持っている。

 魔法を使用すると魔法の力に応じて体内に蓄えられた魔力が減少し、魔力を失うと体は極度の疲労状態に陥り体が動かなくなってしまう。 魔力は一定の時間を掛け、空気中に存在する魔力の元となる魔素を時間を掛けて体に取り込むことで回復することが出来るのだが、実はこの魔素は毒である。

 一定の量の魔素ならば問題ないのだが、大量に魔素を取り込み過ぎると魔素が魔力のみならず体までを侵食し、その姿形までも異型の存在へと作り変えてしまう。 

 それが魔昌獣である。


「ガァアァアア!」


 馬車に追いついた魔昌獣が体をぶつけて馬車を弾き飛ばした。 

 弾き飛ばされた馬車は、2回、3回と激しく横回転を繰り返しながら地面に叩きつけられ近くの木にぶつかり大破。 乗っていた二人は馬車の外に投げ出され地面に転がっている。


「......ん、うっ......」


 幸いにも投げ出された二人に大きな怪我はなかったが、体中を激しく打ち付けた為に直ぐには動くことが出来そうにはなかった。


「ガルゥルル」


 魔昌獣はそんな情況を見逃してくれるはずもなく、その巨体を揺らしゆっくりとこちらに近づいてくる。



「......私も潮時からしらね.....」


 女性がそんな事を考えていた時であった。


「はあっ!」


 突如現れた細身の剣を手に持った黒髪の男が、魔昌獣の横っ腹を剣で一閃。 しかしその攻撃は、魔昌獣の魔法障壁に弾かれ魔昌獣そのものに傷を与えることは出来なかったが、攻撃の威力で魔昌獣の体が流れる。

 それを見逃すことなく、地面を蹴った男は魔昌獣の隙を付き剣を当てていくが、それ等すべての攻撃が魔昌獣の魔法障壁が弾き返されてしまう。


「魔力を持たない通常武器では魔昌獣の魔法障壁を抜く事は無理だ! 私達のことはいいから君だけでも逃げなさい!」


 魔昌獣と言う名は、体の中に魔素を大量に取り込んで魔力が変質した水晶を持つことからその名が付けられている。 

 この水晶は、空気中の魔素を取り込み魔力に変換する力を持つと同時に、自身を守るように魔法の壁を展開する力を持っている。

 それが魔法障壁だ。


 魔力障壁は魔力を伴った特別な武器以外では打ち破ることが出来ず、さらに魔昌獣の強さによって魔力障壁の強度も変わると言う厄介な性質を持っている。

 この世界の者は誰しもが魔力を持っているとは言え、魔昌獣の魔力障壁を打ち破り魔昌獣と本当の意味で戦える者は極僅かしかいない。

 ましてや、通常武器で大型の魔昌獣と戦う事など本来ならば自殺以外の何物でもない......そう本来ならば..。



「.....破壊しろウロボロス」


 男が呟くと、手に持っていた剣が黒い炎を包まれる。


「ガァアァアア!」


 まるでガラスが割れるかのように、男が振るった黒炎を纏った剣が魔昌獣の魔法障壁をぶち壊し魔昌獣の体を切り裂いた。

 魔昌獣はダメージを負った痛みからか大声を吼える。

 そして傷を与えた男を射殺すかのように鋭く睨むと、鋭い爪と牙で男に襲い掛かった。

 

 鋭く振るわれる爪。

 その一本一本が岩をも砕く鋭利な鋭さ持ち、風圧で地面が爪の形に抉れるほどの力を持ち合わせた凶器の攻撃だが、男はそれをひらりひらりとまるで桜の花弁が宙を舞うかの如く綺麗な足捌きでかわしている。


「何て洗練された動きなの......」


 男の動きは、見るものを魅了する美しく無駄のない動きであったが、それは動きだけではなく剣の方にも言えることで、相手の攻撃をかわしたすれ違い様に黒炎を纏った剣で魔昌獣の体を切り裂きしかっりとダメージも与えていた。

 気づけば魔昌獣の体には無数の切り筋が残されており、目に見えて魔昌獣の動きが落ちてきていた。

 そして、やや大振りになった攻撃をひらりとかわした男は上段に構えた剣を一気に振り下ろすと、魔昌獣の体を綺麗に二つに切り裂いた。

 切り裂かれた魔昌獣の体の真ん中には黒く濁った水晶が.......。

 体と同じく二つに裂かれた水晶はその機能を停止し砂の様に砕け散ると、核を失った魔昌獣の体もまた砂の様に灰となり消えていってしまった。


 それを見届けた男は倒れている女性の方に近づいていき、


「すべてをあるべき姿へと戻せ......」


 黒炎を纏っていた剣が、男の一言で今度は白き光を纏った剣の姿へと変わる。

 男はその剣を女性の方にそっと当てる....女性の体が温かい光に包まれると自然と体の痛みが消えていき、怪我を負う前の綺麗な女性の姿がそこにはあった。 魔法での治療とは全く違った特異な現象を目の当たりにして、女性は何かを言いたそうな顔をしていたが、男はそれに付き合おうとはせず倒れているもう一人の方にも近づき同様に治療を施していった。

 さらに、壊れた馬車も同様にこれで直してくれていた。

 人だけでなく、物までもこうもあっさりと元に戻してしまうその様は、治療や復元と言うよりも『再生』と言った方がしっくりくるだろうか......。

 

 事を終えた男は静かにその場を離れて行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ