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第二章その④

ここまで一気にアップしましたかきくけ虎龍です。

今年、GAに応募しようとおもっている作品です。

いろいろなご指摘等がありましたら宜しくお願いします。

「ミンメイがそこまで下等な妖怪(かまいたち)と赤ん坊を庇われるのでしたら何か意図があるのでしょう。了解いたしました、学園都市への入園許可を発行いたします」


闇の世界から学園都市を守護するための前衛施設内応接室にて量産型魔装少女を束ねる第二自警団長フレアは細い目を更に細めて正面のソファに座るミンメイに正規入園許可書を手渡した。


年のころは二十歳前だろうか。御簾のように垂れた前髪から覗くキツネ目が特徴的な魔装少女だ。バランスよく実ったおっぱいとお尻を包み込むセクシーな水着に似た魔装具は量産型と同じものにみえる。


「同期のフレアが新生第二自警団長様だなんてとっても驚きましてよ」


「私も驚きだよ。昨日部下達が捕獲した者が第三自警団……いや、魔装少女の憧憬と羨望の的だった天才魔装少女ミンメイ第三自警団副団長ですもの。学園本部ではカナンなるもの達が巣食う闇の世界への遠征に赴いた第三自警団は壊滅、生き残りはいないとの見解だった」


「わたくしは運が良かったのです」


ミンメイは上品にティーカップに注がれた紅茶を一口含んで見せるとおどけたように空ぼける。その声は酸いも甘いも見え隠れした拒絶が見て取れた。


「運だけで生き残れるほど闇の世界は甘くない。私は所属していた第二自警団は第三自警団遠征に続く第二陣として出陣したが闇の領域の入り口にて大群のカナンなるものと遭遇、激戦の末敗北……魔力を使い果たし無力化した魔装少女がいたぶられながら捕食される阿鼻叫喚の世界から私と僅かな生き残りは仲間を見捨てて退却した」


暗澹たる記憶の吐露。その想いをぶつけられるほどフレアはミンメイを信頼していた。同時にミンメイも苦悩する知己の邂逅に煩わしさを感じることもなく静かに頷いた。


「だからこそ聞きたい。ミンメイ……何故生きているの?」


フレアの声は悲痛な叫びにも類似していた。自ら体験した闇の世界、そのもっと先を進軍していた第三自警団。

その生き残りであるミンメイにフレアは矜持を投げ捨てても聞かずにはいられなかった。


「フレア、そんなことをわたくしに聞いてどうするの? わたくしは生きているこれは事実以外の何物でもないですわよ」


ミンメイはわざとらしく少し肩をすくめるとティーカップをソーサーに置く。そして「あかねや与太丸ちゃんがお部屋で熟睡していて助かりましたわ」と小さな声がピンク色の唇からこぼれた。


「かつて地上で栄華を誇った旧人類や神や妖怪たちがカナン(、、、)とカナンなるものに滅ぼされたと称されています地球規模で勃発した戦争の際に世界の(ことわり)がカナン(、、、)により書き換えられたことはご存知ですわね」


「それは承知している、カナンは地球において三つの理を書き換えた」


「ご名答、一つ目は魔を宿す者達すべてに呪いがふりかかり女性しか産まれなくなったこと。二つ目は世界を非被ばく系酸素放射能で充満させわたくしたち魔を宿した新人類以外を死滅させること。三つ目は地球全域を闇の領域に変えたこと」


「闇の世界で跳梁跋扈しているカナンなるものの捕食対象(エサ)は何かしら?」


「一般定義上は魔力を操る魔装少女や妖力を操る妖怪。もしくは忍の隠れ里にいるとされる旧人類とされているはず」


「さすがはフレア第二自警団長、博学ですわ。そこがポイントでしてよ。各種族とも共通していることがありますの」


「共通していること?」


フレアは前髪をいじると頬に手を当てて首をひねった。

まったく答えが見えないといった様子だ。


「ええ、それこそがカナンやカナンなるものの討伐に必要な要素。とても稀有な存在であるわたくしと有能でありながら散っていった魔装少女との決定的な違いですわ」


「決定的な違い?」


「そうですわ、高貴なわたくしは男の子。股にりっぱなおちんちんがついていますもの」


「な、なるほど……カナンやカナンなるものの捕食対象(えさ)は強力な力を秘めたメス。いや、まてそれよりも生き残ったミンメイはオス。すなわち男ということなのか!?」


驚愕のあまり細い目をいっぱい見開いたフレアはティーカップの紅茶がこぼれたことも気に留めず悠長に紅茶を飲んでいるミンメイにがぶりよった。


「そ、そんなはずはない! 私たちは研究施設の試験管で培養された精子によって生み出されたはず、確かに共に学校に通っていた頃はお股についていなかったぞ。私とともに水泳の時間補習をしたときもスクール水着だったではないか!?」


 視界の真正面から半眼で迫り来るフレアに片膝を抱えたミンメイは表情を曇らせる。あの頃はスレンダーボディが素敵な魔装少女候補生だった。主席を争ったフレアとともに唯一苦手な水泳で共に苦虫を噛んだ。そんな尊い想い出が頭の片隅で踊っている。


「わたくしは遠征に行くまでは魔装少女でしたわ」


「当たり前だ! 私たち試験管ベビー第四世代は全て女で産まれたはず。そうでなくても遺伝子コピーによって生み出された量産型で人員を補充しなければならないほど学園都市は追い詰められているのだぞ。もはや旧世代の歴史書などにしかのっていない希少価値溢れる男などが産まれれば即座に捕まって死ぬまで精子培養の糧にされるぞ」


 フレアの驚愕ぶりは当然だろう。フレアからしてみれば行方不明だった同期のライバルが男になった上に捕縛の対象である妖怪(かまいたち)や赤子(天然の赤ちゃん)などを連れているのだから感服する以上に呆れてしまいたくなる。


「そんなことはわかりきっておりましてよ。めんどくさいことになりそうでしたので今まで人目を偲んで闇の世界に隠れて暮らしていましたの」


「だったらどうして……学園都市が疲弊しきった今になって姿を現したのだ!? カナンなるものの動きが活発になっている昨今、あのような妖怪(かまいたち)や赤子(天然のあかちゃん)を連れて……それに偏屈極まりないミンメイの心を動かしたものはなんなのだ?」


 そんな言葉にミンメイは口元に微笑みを湛え当時の記憶を思い出しているような顔で人差し指をくるりと回してみた。その仕草はとてもたおやか、思わずフレアは見入ってしまった。


「あかねや与太丸からめんどくさいことの先に楽しさがあることを教えていただきましたの。それに……」


 ミンメイの言葉を遮るようにズドンと大きな地響きが部屋を揺らす。それは空から何かが落下した衝撃にも似ていた。前衛基地に激突した何かから複数の気配が広がっていく。

 それを感じ取ったミンメイの表情から笑みが消えた。


「お話はここまでですわ。わたくし馬鹿家族(、、、、)をたたき起こして先を急ぎます」


「そうだな」


 前衛基地に広がっていく気配は殺意に変わる。

 そして、拡散的思考の終点であろう結論を示す言葉がスピーカーを媒体にして前衛基地全域に流れたのである。


――上空よりカナンなるもの来襲―― と。


いかがでしたか?

新作のたんぽぽ荘とともに宜しくお願いします。

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