06 認めてやる
カズトは歯を食いしばって涙目で拳を見つめた。
すると拳が当たる直前にフェミナは握っていたカズトの腕を胸から離した。
「わあああああ!」
拳はカズトをそれて真横にすぎた。
その風圧で王室の床はえぐれて壁にまで衝撃がいき大きなひびが入った。
カズトは魂が抜けたように呆然と立ち尽くしていた。
「ふむ……ふっ、がははははは!」
竜王はカズトの様を見て大きく笑い出した。
「父上これで賭けは私の勝ちですね!」
フェミナがニヤリと笑った。
「がはは、全くこの竜王の拳を真っ向から受けようなどとふざけた男だとは思わなんだ」
「カズトやったぞ! これで私達の婚儀を父上も認めてくださる」
呆然と立ち尽くしたカズトの体を揺らしながらフェミナは言った。
「へっ……どういうこと?」
恐怖でカズトの体はまだ硬直していた。
「実はお前が来るまでの間に父上と賭けをしたのだ。お前が私のために命を張れるお男なら結婚を許すと、そういう賭けだ」
「ふんっ、フェミナの腕を振りほどいて逃げれば滑稽だったのだがな」
「父上はフェミナを手放したくなかっただけでしょう」
ドナがクスクスと笑いながら竜王に言った。
「まあ、私は元から結婚には反対しませんよ。とっとと魔国に嫁ぎなさいなフェミナ」
ドナはニッコリと笑い顔を見せる。
「ありがとうございます姉上。ですがあの時の賭けのお支払いが済んでいませんが?」
「ほほ、なんのことかしらねー」
フェミナは笑い返すとドナは苦笑いをしてごまかした。
「ええいっ、もう気にすまい! 新たな我が息子を祝ってやろう!」
竜王は吹っ切れて家来に酒の準備をするように言った。
「祝杯だ! 息子よ、我に酒を注げ!」
「カズト……いや魔王だったな、それにこれからは私の旦那になるのだ。カズト様と呼ぼう」
フェミナは少し照れて言い直した。
「カズト様、父上にお酒をお注ぎいただけますか?」
「さっきまで反対していたくせに竜族は極端だな……勿論だ!」




