18 魔王就任
「……くっ」
カズトは殴られた腕に人差し指を突きつけた。
(撃つ!)
「ぐっ!」
オシリスが腕を抑えた。今度は心の中で念じたが発動に成功した。
「うわぁぁぁ!」
カズトは必死に撃ち続ける。
「ちっ!」
オシリスは被弾覚悟で全身してくる。
「うぅぅぅつ!」
カズトは大声で叫んだ。
「…………はぁ、はぁ……」
カズトの目の前でオシリスが倒れている。
死んでいるのか動かない。
「……くっ」
オシリスの体が僅かに動いた。
「うっ!」
カズトはすぐにオシリスに向けて手を構える。
「撃つがいい、貴様が三国の王となるのを俺は絶対に認めない! この命ある限り貴様に敗北したなどとは認めない!」
オシリスがゆっくりと震える体で起き上がろうとする。
「くそっ!」
カズトは痛みと恐怖でパニックになり。もう一度オシリスを撃とうとした。
「やめて!」
すると誰かがオシリスに覆いかかった。
「……誰だ! …………母さん?」
母親の記憶などないはずのカズトは無意識にそれを口にした。
「お願い! パパを殺さないで!」
「フレアか、余計なことを!」
泣きながら両手を広げオシリスを庇っているのは娘のフレアだった。
カズトはゆっくりと腕を下げる。これで勝利したことは間違いないが今はそれよりもカズトの心には虚しさに包まれていた。
「母さん……」
「フム……お覚えですか? 確かにフレア様はカズト様の母君に瓜二つですからな」
アガム大臣がそっとカズトの肩に手を置いた。
「……俺、これで……魔王かな?」
不安そうにカズトは確認した。
「ええ、勿論です魔王様」
「そうか……いつっ、早く治療してくれないか?」
カズトはニッと笑って座り込む。
鳴り止まない大歓声と観客たちから「新魔王様、万歳」の言葉が耳に響き渡った。




