16 競技場15
「げっ!」
カズトはそれを躱す。
「どうした無敵じゃないのか」
「うるさい。撃つ!」
「つっ」
カズトはオシリスの顔を狙って手で相手を撃つ動作をする。
(少しは効いているな)
カズトは続けて撃つ動作を繰り返す。
「無駄だ」
(……なんだ、この魔技は俺の防御魔技をすり抜けてくる。親父が使っていたものと同じ風の大砲なのか? なら早めに倒しておくか)
オシリスは地面に拳を当てると地震のように競技場が揺れた。
「うわっ」
カズトはバランスを崩した所にオシリスは抱き抑えた。
「やばい、風化が!」
「捕まえたぞ!」
そのままオシリスはカズトを抱きしめたまま力を入れる。
「どうだ、心音を聞けば貴様の魔技は発動しない。もう防げまい!」
「よくご存知で……でもその体制じゃ俺は殴れないぞ」
「それならこのまま締め殺すだけだ」
「ぐはっ……」
オシリスは腕をどんどん締め付ける。
「あっ、あんたは母さんがどうして俺を産んだのか知っているのか」
「リリアか……貴様がリリアを母と呼ぶな!」
「ぐっ、俺が魔王になるんだ」
「神国の血が入った貴様に魔王になる資格があるとでも?」
「……その後で竜国の王にもなる……」
カズトは苦しそうにもがくが腕は外れない。
「奇遇だな。俺も竜国を手に入れるつもりだ」
「……その後に神国の王になる……」
「なんだと……欲張りな奴だ。親父とリリアの計画は知っていたが俺には何を馬鹿なことを言っているんだと思ったよ」
「ぐっ……」
「そんなことが実現するわけがない。国を統一したいのなら力しかない! それを未来に懸けるだと、馬鹿馬鹿しい」
「俺は……できると信じてる……」
「何を根拠に信じられる? 一国の王にさえなれぬ貴様が三国の王になれるとでも思っているのか」
「だから俺は生まれたんだ!」
カズトは人差し指をオシリスの足に向けた。




