12 競技場11
「どうしてだ。カゲロウの方がオシリスに攻撃しているのに?」
カズトは不思議に感じた。
「フム。オシリス公がまさか防御の技まで習得しているとは……」
アガム大臣は額から汗を流す。
「防御? だってオシリスは一つしか魔技を使えないんだろ?」
「はい、昔はそうでしたがオシリス公は二年の間各地の戦場を回っていました。恐らくその間に習得したのでしょう」
「どういった魔技かわかるのか?」
「およその推測はできますが、もしかするとカズト様の風化と同等の力を持つかもしれません」
「なんだと! こっちは攻撃技もないのにか!」
「オシリス公の魔技は破壊を司ります。それを防御に回したということは」
「まさかダメージを破壊とかないよな」
恐る恐るカズトは聞いてみた。
「……フム」
アガム大臣はカゲロウの方を険しい顔でいた。カズトも見てみるとカゲロウの拳はオシリスに当たっているのにオシリスは微動だにしていなかった。
「カズト様こうなればやはり昨日私が言ったことを実行するしかありませんな。」
「えっ、冗談だろ。俺にそんなことができるわけがない!」
「いえ、可能です。私はカズト様の魔技にはこの世界の誰よりも詳しいですから」
「俺とじいさんの魔技は本当に同じなのか?」
アガム大臣は確信を持つように頷いた。
「……でも向こうは破壊でこっちは風だろ? 勝ち目とかあるのかな」
「確かに破壊と風では力関係では向こうが上です。しかしカズト様の魔技は正確には風ではありません」
「風じゃない?」
そう言うと、競技場から大きな歓声がした。カズトは慌ててみるとオシリスの拳を腹に直撃しているカゲロウの姿があった。




