11 競技場10
「お前の率いる軍の中に死霊使いがいたはずだ」
「ほう、貴様はあの時の生き残りか。殲滅したと思っていたが……そうか貴様が赤竜か!」
「……」
オシリスが嬉しそうに笑った。
「確かにお前のいたイデルカの町だけ落とすのに兵を多く失ったのを覚えている。あの時は歯がゆい思いをさせられたぞ。貴様の名は俺の兵たちを伝わって良く聞いたものだ。こうしてまた相まみえるとは奇妙なものだ。久々に胸が踊るぞ」
「俺はお前に興味などない、死霊使いはまだ生きているのか?」
「死霊使い? 知らんな、俺はいちいち自分の兵の魔技など覚えていないからな。だが、たしか貴様の所に向かわせた兵は全滅している恐らく生きてはいまい……」
「そうか……」
「ちょうどいいあの時の雪辱を晴らしてくれる」
オシリスは今までと違い腕を小さく素早く振った。
「ぐっ……」
よりカゲロウの体を際どくかすりつける。
「くく、無理をするなよ。俺の拳がその距離でかすっているのだ。直撃せずとも相当なダメージのはずだ」
カゲロウはそれでも前に出続ける。
しかし次第にカゲロウの動きが落ちていく。
「お前……まさか……」
カゲロウがオシリスを疑うように睨む。
「くくっ、気づいたか。貴様も魔族との戦争を経験しているのなら分かるだろう」
オシリスは不敵に笑みを浮かべた。




