10 競技場9
「アガムがいるのなら俺の魔技は聞いているだろう?」
「ああ……」
オシリスとカゲロウは向かい合うように立っていた。二人の身長はほとんど同じでオシリスよりも細身の分カゲロウが少し小さく見えていた。
鐘がならされ競技が開始した。
「……なんのつもりだ? 競技はもう始まったんだぞ」
「知っている」
「貴様……」
腹を立てたようにオシリスがその場に立ったまま拳を固めてカゲロウに拳を振ってみせる。すると空気が破裂したような轟音とともにカゲロウの頬が切れる。
「…………」
オシリスがニヤリと笑った。
「何?」
カゲロウはそれにひるむことなく前進していく。
オシリスはカゲロウにめがけて拳を振るう。
カゲロウはそれを躱して懐に入る。
「俺を相手に拳が届く距離で勝負する気か貴様!」
オシリスは笑って拳を連打する。
「…………」
カゲロウは全てをそらすように躱し逆にオシリスの懐に蹴りをいれる。
「ぐっ」
するとカゲロウは両腕を燃やすように炎をまとった。
「ふぐっ」
その腕でオシリスの腹を殴りつけた。
「すごっ! これ俺が魔王になれるんじゃないの?」
「フム。最も危険な接近戦も竜技で肉体を強化した竜族には最も安産な場所になるとは……しかし一撃で終わってしまうことには代わりのない危険な場所です」
カゲロウの体をかすりながらオシリスの拳が通りすぎる。
「貴様なぜ接近戦にこだわる! それにその魔技貴様は」
「二年前のイデルカでの戦争を覚えているか?」
「二年前?」
二人は戦いながら話をした。




