09 競技場8
すると空気が破裂したように衝撃波の爆発がクシャナとフェミナを直撃した。
「…………」
フェミナは地面に膝をついて意識を失ったクシャナを見つめた。
「バカが、あれほど自分で竜技は肉体強化だと言っておいて……」
「フェミナ!」
カズトがフェミナに笑顔で駆け寄ってくる。
「……お前のは爆発しないな……」
フェミナは眠そうにカズトに寄りかかる。
「悪いが私は休ませてもらうぞ」
「ああ。後は任せてくれ」
カズトはフェミナを抱えクシャムの方を見ると彼女も眠るように気を失っていた。
「さすがは竜国の姫と言ったところか」
倒れているクシャムを肩に乗せてオシリスがカズトに笑みを見せる。
「あんたがオシリスか」
「様をつけろ、俺は一応貴様の叔父にあたるのだぞ」
「……そうは思っていないように見えますけど」
カズトはオシリスを見上げた。竜族のように身長が高くがたいのいい体にカズトは気圧されそうになった。
「くく、まあいい。俺はクシャナと違い優しくはない。命の保証はしない、特にお前にはな」
オシリスは笑いながらクシャナを担いでベンチに戻っていく。
「……」
「オシリス公に対しては幾つかの対処法をご存知です」
アガム大臣がカズトとカゲロウに話しかける。
「オシリス公は『破壊神』と呼ばれるほどの魔技の使い手です。しかしその能力は至ってシンプル、拳で殴ったものを破壊するというそれだけです」
「それって一撃食らったら終わりってことだよな?」
カズトが冷や汗を流した。
「……問題ない」
カゲロウは静かに競技場に向かった。
「カゲロウ! 死ぬなよ!」
「分かっている。俺が死ねばお前は泣いて戦えないからな」
「……そうじゃなくて」
カズトは心配しながらカゲロウを見送る。
「フムフム。随分自信家なお方ですな。カズト様と彼はそんなに親しいのですか?」
「いや、カゲロウはそう言う意味で言ったんじゃないから。それに俺とカゲロウは別に……」
どうしてアイツは俺について来てくれたんだろう? カズトはそう思った。最初にあった時からカズトは死刑囚で仲間殺しと呼ばれるカゲロウを仲間にしたが、これまで自分と過ごした中でそんな素振りは一度として見せなかった。
「死ぬなよ……」
カズトは小さく呟いた。




