07 競技場6
「はっはっはっ、相手にならんな!」
オシリスが向こう側のベンチで高笑いをする。
「くっ、次は私が行く!」
フェミナは上着に羽織っていたコートを脱いで薄い緑色の服に甲冑が胸と腰についていた。
するとカゲロウが行く手を遮るようにフェミナの前に火傷の後が無数にある腕を伸ばす。
「なんのつもりだ、貴様!」
「あいつは俺が倒そう。勝算もある……」
「生憎だが貴様は魔族と竜族の血を引いているそうだな。差別するつもりはないがこれは私たち竜族の誇りに関わることだ。私が行く!」
「…………」
カゲロウは静かに腕を引いた。
「……フェミナ」
「おっと、お前は喋るなよ。私のやる気がそがれるだけだ」
フェミナは笑って自分を呼び掛けたカズトの言葉を遮った。
フェミナが競技場に出ると観客から大歓声が起こった。最初に比べて罵声を飛ばす者はほとんどいなくなり皆が競技に熱中していた。
「やれやれ、竜国の姫様のご登場ですか、ここは私が負けて竜族の面目を立ててあげても構いませんが」
「余計な気遣いだな。二勝続けた事で少々自惚れているようだな」
「自惚れ? それはあなた方にそのままお返ししましょう」
「我々が自惚れていると?」
フェミナは納得できないといった顔でクシャムを睨みつける。
「この競技がなぜ三技と呼ばれているかご存知ですか? 言うまでもなく三国それぞれの技を競う場であるからです。しかし竜技などと名ばかりでただの肉体技のみ。私は竜技を技とは認めていません」
辛辣な言葉をクシャムは無表情で言い放った。
「そうか貴様のような奴にはなおさら見せておかねばならないな……」
フェミナは竜技を発動せずに目を閉じた。
「何をです? 速さですか? 力ですか? 頑丈さですか?」
鐘がならされクシャムは無表情から一転して満面の笑みを浮かべた。
その瞬間、また爆発が起きた。
「…………」
「フェミナ! ……」




