6 竜国
「くそ……神国とは違うと思っていたのに……」
小さな声で吐き捨てるようにつぶやいた。
二日後、地図に書かれた目的地にカズトはたどり着いた。そこは魔国より険しい土地柄をしているが建物や人の活気に溢れていた。
― 竜国―
渡された地図に載っていた場所は三国の竜国だった。竜国は三国の中でも一番小さな国だが竜技と呼ばれる大地の力を使い自然と共に生きる誇り高い種族だ。しかしそのプライドの高さゆえに気性が荒い者が多く他国に影響されにくいため文明も独特に発達している。
「思っていた所より都会だな」
カズトは辺りを見渡しながら竜国の町の中を歩いていた。建物は魔国はほとんどレンガで建てていたが竜国はレンガではなく何か光る宝石のような石で家や店を建てているため町がとても美しく見えた。
「なんですって、ゴラァ!」
「なんだ?」
可愛くドスの効いた声が路地裏から聞こえた。
「もういっぺん言ってみなさいよ、アァン!」
カズトはこっそりと覗いてみるとそこには長身のピンク色の髪をした美女がチンピラらしき男二人のむなぐらを掴み怒鳴りつけていた。
「悪かったもうオカマなんて言わねえからさ! だから許し……ぐはっ」
するとその美女(?)は拳を振り上げ男達を殴りつける。
「だ・か・ら! アンタ達のそのオカマって言い方がムカつくのよ! オラァ!」
「げびぇ……すび……ばぜん」
カズトは美女の胸を見てみると確かに女性の膨らみは無く服は白いYシャツに男とは思えないほどのジーパンの片足の破れた部分から見える太ももはオカマだと言われなければ気づかないほど魅力的だった。
「ぐへっ……」
「オラァ! どうしたの? この程度でへばってんじゃないわよ!」
もう意識が飛んでいる相手に美女オカマは構わず殴り続けた。その拳には相手の血がベッタリとついて真っ赤になっていた。
「おい、もうやめろ! 死んじまうぞ」
カズトは美女オカマの肩を掴んで制止する。
「アン! 誰よアンタ、気安く私に触るんじゃないわよ」
「いいから離してやれよ、血を出してるじゃないか」
「そんなのアンタには関係ない……でしょ!」
美女オカマは止まらずまた殴り出した。
「おいっ! いい加減にしろよ、オカマやろう! 無い乳をもんでやろうか!」
「あんだと……テメェブッ殺してやるよ!」
言葉遣いは悪いが声が可愛いせいで全然迫力がなかった。
美女オカマはカズトに殴りかかった。すると美女オカマは拳を振り切った直後、いつのまにか自分が空を見上げていることに気づいた。