11 夢をつないでいく
「もしも魔国と神国の王族の間に子供が出来たのならそれは同盟を結ぶことと同じことです。そしてその生まれた子供が大人になって両国を率いる人物になった時、竜国の姫を妻として迎えその者が未来の三国の王となる。……そういう未来を望んだのですが」
「でもそうはならなかった……」
カズトは手を月に向けて伸ばした。
「いえ、まだ終わっていませんよ」
「えっ?」
アガム大臣はニッと笑ってカズトを見た。
月に伸ばした手を背伸びしてさらに伸ばし、カズトは月を掴み取るように握り込んだ。
「なあ、アガム大臣。母さんが……生きていたら俺は愛されたのかな?」
「それは言うまでもありません」
「そうか……」
カズトは自分の握った拳を見つめて笑いながら一滴の涙を落とした。
「母さんとじじいの夢叶えてやりたいな」
「できますとも」
「一人でもできるかな」
アガム大臣は首を振ってそれを否定しカズトに後ろを見るように顔を向ける。
「一人ではありませんよ」
そこにはリンイ、カゲロウ、シュベルコスがこちらをみて笑っていた。
「お前ら……」
「言ったでしょう運命だって!」
リンイはカズトを指差して言った。
「僕は……まあ、もう少し付き合ってやるかな」
「素直じゃないんだから」
リンイがシュベルコスの頬をつねる。
「カゲロウ。お前も俺についてきてくれるのか?」
「……ああ、お前さえ良ければだがな」
カゲロウは今までより少し明るい表情で返事をした。
「カズト様できればもう一人竜人の仲間が欲しいのですが」
「…………」
カズトはニッと笑って懐から一枚の小さな紙切れを手にした。
「そうか、なら連れてくるよ」
月明かりに照らされた白い家は海の中に居るような感覚にさせ、カズトは今までとは違う景色を未来に見るようになった。
「仲間をつくってよかったよ……ありがとう」
その言葉はリンイ達に向けた言葉でも一人ごとでもなくカズトは確かに誰かに礼を言った。それは、今は亡きカズトの過去に生きた者へ、だったのかもしれない。




