5 契約
「ここを去ります。安心を二度と姿を見せることはないでしょうから」
「なんと……」
アガム大臣が何か言いたそうに声を出した。
「ふむ……ならぬ、お前が余の孫であるとしても神国の密偵である可能性は十分にありえるからの……お前には疑いが晴れるまで牢屋に繋いでおく」
「そんな! じいさんが孫を牢屋に放り込む気か! 俺は母親の顔を見てみたいだけだって言っているだろ」
「ならぬ……と言わせぬ方法も一つあるぞ」
「はぁっ? なんだよ、じいさん、面倒なこと言ってないで写真だけくれればいいだろ」
魔王はカズトの言葉を無視して大臣を呼び地図を一枚もってこさせた。そしてその地図をカズトに渡させた。
「そこへ密偵として情報収集してくるのじゃ。もしそれを見事にやり遂げればお前を正式に王族の一員としてこの国に迎え入れ、どんな望みも一つ叶えよう」
「そんなのいいから写真を……」
「ならば……牢屋へ行くか?」
しぶしぶとカズトは地図を広げて見てみる。するとカズトは青ざめた顔で地図の場所を確認した。
「これ……! ふざけるなこんな場所に入り込めるわけないだろう! 俺は死ぬほど母親の写真が欲しいわけじゃない。悪いけど断らせてもらう!」
カズトは魔王を睨みながら右手の甲で地図を叩きつけた。
「リリアがお前に手紙を残している……それでもか?」
「!?……」
時が止まったようにカズトの体が止まった。驚きのあまりに動かない体にカズトは震わせながらゆっくりと口を開いた。
「か……母さんが、俺に…………」
「どうするのじゃ……答えよ」
少し下を向いて考えた後カズトは地図を握り締め返事をした。
「……分かった。そのかわり口だけじゃ信用できないからな契約書を書いてもらうぞ、魔王様」
カズトは冷めた眼で口だけを動かした。
「よかろう……そのかわりお前にも逃げられぬよう発信機具をつけさせてもらう」
アガム大臣が駆け寄りカズトの腕に黒いリストバンドをつけた。
「これでカズト様の居場所を特定することができます。くれぐれも気をつけください」
小説って難しい・・・(´・ω・`)