06 竜国
― 竜国 ―
「カズトよ、我娘テュポが貴様のことを大層気に入っていたぞ」
竜王はご機嫌で、その隣には竜国の姫三人と竜王の騎士スイリュウがいて後ろの扉は二人の兵士が扉を固めている。
「それはどうも……」
竜王と違ってカズトは不機嫌だった。周りが自分を利用しようとしているのがわかっていたからだ。逃げ出そうと考えたが見張りが多いうえにフェミナには魔技の能力を知られているため迂闊に逃げ出すことは出来なかった。
「ようやく時期魔王の座をかけた三技の日取りが決まったぞ」
「! その事ですが、俺は魔王になるつもりなどありません。もし竜王様が俺を魔王にすることで戦争が回避できると思っているのならそれは思い違いですよ」
「ほお、それはどういうことかな?」
カズトの周りの視線は冷たかった。唯一テュポだけが心配そうにカズトを見つめていた。カズトはフェミナの方を見るがフェミナの視線は変わらず冷たかった。
「まずこの三技でたとえ俺が勝とうと魔族の民が素直に俺を魔王と認めるとは思えない。その時点でこの勝負は最初から勝ち目がありません」
「それは問題ありません」
ドナが冷たく言った。
「もしそなたが魔王の座についた暁には我らが妹テュポをそなたの妻として、また同盟の証として今後竜族は魔族との友好関係を築いていくことを約束しましょう」




