02 小さなお姫様 1
ギイィ
小さく扉が開く音がしてカズトは音の方に振り向く。食事なら扉の下に空いた隙間から入れられるはずだが、何か話に進展があったのだろうか。
「…………」
扉を見てみると一人の少女が扉の隙間から顔を半分出してこちらを覗き込んでいた。
白髪の少女で身長は少女という割には大きくカズトとさほど変わりはしないが幼い顔つきがその少女がまだ子供だということをカズトはシュベルコスの一件で理解した。
「その、はいってもよろしいでしょうか」
少女は怯えるようにカズトに言った。
「…………」
カズトは無言のまま返事はしなかったが、少女は中に入り扉を閉めた。
「あのっ、ずっとお部屋から出られないと退屈だろうと思って……本を持ってきました。良かったら……読んでください」
遠慮したような物言いで少女はカズトの座っている目の前の机の上に緑色の表紙の分厚い本を一冊置いた。
「テュ、テュポはテュポと申します。サラマンド王の娘、第五王女のテュポと申します」
少女には堅苦しい挨拶だが一生懸命に自分の紹介をしている姿を見てカズトは思わず吹き出して笑った。
「ぶっ、はは、ははは」
「あ、あのカズト様。テュポは何かおかしな事を言いましたでしょうか?」
「いや別に、悪い。部屋の中は退屈だったからつい……」




