25 遺言
「遺書?」
カズトはそう言ってアガム大臣が懐から取り出した白い封筒に入った遺書を見つめる。
「ここに魔王様は次期魔王となられるお方の名前を残されました。そこにはオシリス公の名が……」
「では魔王にはオシリス公がなることは決定しているのか!」
「いえ、それは分かりません」
「分からないだと、いい加減なことを言うな! その遺書にオシリス公の名があれば時期魔王はオシリス公ではないか!」
「フェミナ、話を最後まで聞け」
息巻くフェミナを竜王は叱りつける。
カズトはただ黙って話を聞いていた。
「遺書にはもう一人名が記されていました。そのお方の名前は……」
カズトはまさかと思った。しかしアガム大臣がここにいるということはそうとしか考えられない。
「タケミ カズト様です」
「ウソだろ!」
カズトは声を出して驚いた。
「なっ、なぜカズトの名が出てくる!」
フェミナも驚き声を上げる。
「遺書にはオシリス公とカズト様が公共の場で三技にて勝負をし、勝者を次期魔王とする。そう書かれてあります。フムフム」
「そんな、なんで俺が選ばれるんだよ」
困惑してカズトは頭を抑える。
「そういうことで、カズトと言ったな。我ら竜国はお前を全面的に協力しよう。そのために貴様には我が竜国の姫の中から一人を嫁にとらせる」
「…………」
カズトはまるで言葉が耳に入らずいた。




