4 魔王様は実は・・・
ダルギスが再びカズトに向けて剣を振るった。しかし今度はそれを後ろに下がってカズトは躱した。
「ちっ、往生際の悪い!」
再び剣を構えカズトに斬りかかる。
「止めろ! ダルギス!」
「!」
アガム大臣の声にダルギスは動きを止める。
「何故止めるのです。この者は神国の密偵なのですよ、生かしておく理由はありません」
「理由ならある。そのお方は魔王様のお孫様にあたる方だ」
「なんですって!」
アガム大臣の衝撃の言葉に驚き騒然と兵士たちもざわめき始めた。
「先ほど使用した魔技は間違いなく我ら魔国の王族のみが使うことのできる伝説の魔技。魔王様はそれを確認するためにお主にカズト様を斬るよう命じたのだ」
ダルギスは驚きながらカズトを見つめる。
「まー、そんなことより、それを聞いて安心したよ、赤スーツのおっさん。正直自分が魔国の王族だなんて信じられなかったんでね。だから目の前にいる魔王様が俺のじいさんかどうか心配だったんだよ」
カズトはホッと息をついて笑いながら魔王を見上げた。
「ふむ……その図々しさはこの魔技を持った者の宿命かの」
魔王は呆れたように長く伸びたヒゲを撫でる。
「魔王様……いや、おじい様! 生きている内に会えてよかったです」
カズトはニッコリと笑って頭を下げる。
「貴様、魔王様に向かってなんという事を!」
「いいだろ別に俺のじいさんなんだし。俺はその孫だから、えーと王子見たいなものなんだぞ。お前こそ口の聞き方に気をつけろよ」
「うっ……しかしですね」
ダルギスはカズトの扱いに戸惑うが敬語に戻す。
「うおっ、本当に敬語にしてくれたよ」
「それで余の孫であるカズトよ……何用で参った?」
魔王は温厚な喋り方に戻りヒゲを撫でる。カズトは二~三歩前に歩いて魔王を見つめていった。
「俺の母親の写真を貰いに来ました」
「写真……だと」
「はい、自分の母親の顔を知らないので一目見ておきたくて、ここにはそのために来ました」
「それだけか……写真を受け取った後は……どうするつもりじゃ」