22 勧誘されました
「欲しいって、俺は便利なペンじゃないぞ」
「いやなのか、私の部下になることはとても光栄な事だ。違うか?」
フェミナは立ち止まってカズトの服の襟を掴んで顔を近づける。
「なんだよ、最初は俺のことを殺そうとしていたじゃないか」
「そんな事は忘れた。私は今お前が欲しいのだ。そうすればお前を罪人として扱わずに済む言い訳にもなる!」
「はぁ、竜族の連中は自分の意見をすぐに言えていいな」
子供のように感情の起伏が激しいフェミナの様子を見てカズトはため息をつく。
「俺も正直に言えば、そうしたい」
「そうか! やはりそう思ってくれるか!」
フェミナは嬉しそうに笑った。カズトはその顔を見て呆然とした。
「なんだ? ジッと私の顔を見て、何か私の顔についているのか?」
「いや……フェミナが笑う顔を俺は今初めて見たんだと思って」
「私が笑うのは変か?」
「変じゃないけど……この国に来てからなんだかすごく安心している気がする」
「ふふん、当たり前だ。この竜国は世界一最高の国なのだから」
フェミナは自慢げに紹介するように町に手を伸ばす。夕日に照らされた町は美しく全てが夕日で赤く染まっていた。
「……俺もこの国に生まれたかったな」
カズトはとても穏やかな表情で橋の上から町を見渡した。その顔を見てフェミナの顔も赤くなった。なぜ赤くなったのか分からずにフェミナは自分の頬つねった。
「フェミナ!」
「はいっ!」
急に緊張してフェミナは背筋を伸ばした。
「ありがとう誘ってくれて。……でも少し考えさせてくれないか」
「あっ、ああ構わない。どうせお前が決めても決めなくても私の側からは離れられないのだからな」
フェミナは鎖を引いて歩き出す。
「おいっ、急に歩き出すなよ」
つまずきそうになりながらカズトは後ろを付いて歩く。




