20 勝ちました
「ちっ! なんだ、こいつは! こんなの聞いてないぞ」
焦るようにセブンは次々とバッグから布を取り出して投げつけるが、カズトに傷一つどころか触れることすらできずにカズトが自分の目の前に迫ってくるのを容易に許した。
「……なんだよ君。君みたいなのがなんで無名なんだよ?」
「…………」
カズトはゆっくりと手を伸ばしてセブンの首元で止めた。
「降参する?」
静かで重く殺気のこもった声でカズトは言った。
セブンは諦めるように顔を落として、
「ああ、そうしよう……かな!」
「!」
セブンは腰にかけたバッグの中から紫の帽子を取り出し帽子のつばの部分でカズトの首を狙って、切りつける。しかしそれもカズトの首に触れることさえかなわずに空を切った。
「……降参するよ」
セブンは汗を流しながら苦笑いをした。
「…………ふぅー」
こうして三技の勝敗は決した。観客には盛り上がりがかけたようで拍手はなかったが罵声が飛ぶことも無かった。
「そんなぁ……」
ドナは崩れるようにへたり込んだ。
「では、姉上私はこれで……」
フェミナは駆け足で特別席を出ようすると扉の所で止まり思い出した様にドナに言った。
「姉上、支払いは分割では困りますから!」
「……!」
ドナに追い討ちを刺すようにフェミナは言い残していった。
「くそ~、フェミナのクセに~!」
悔しそうにドナはスカートの裾を握り締める。
選手の控え室でカズトは息をついて椅子に腰をかけていた。
「よくやった!」
後ろからフェミナはカズトの肩を叩いて労いの言葉をかける。




