19 試合開始
ゴォォン!!
三技の開始を告げる鐘が鳴らされ競技が始まった。
カズトとセブンは静かな立ち上がりで先に動いたのはカズトの方だった。動くといってもそれはただセブンに向かって歩いていくだけだったが。
「おや、ただ歩いてくるだけとは困りますね。接近戦がお望みでしたらそれは叶わぬことです。俺の魔技は遠距離が有利ですから」
セブンは肩にかけた紫色のマントを外して自分の目の前に浮かせた。
「俺の異名はカマイタチ、その名の通りの魔技だ!」
セブンはマントを掴んで思いっきりカズトに向けて投げつける。
「『布の刃』!」
するとマントはブーメランのように勢いをつけ回転しながらカズトに飛んでくる。
「『風化』……」
「どうしました。よけなければ真っ二つに切り裂かれますよ」
しかしセブンの言うとりにはならずカズトはよける事をしなくてもマントがカズトを切り裂く事はなかった。マントはカズトの胴体に近づくと起動を変えて後ろにそれていく。
「? 何!」
カズトはそのまま真っ直ぐにセブンのもとへ歩いていく。
「何だ? 今何をした」
マントは回りながらセブンの手に戻るとセブンはまたカズトに向けて勢いよく投げる。
「さあ、どうする。次もよけないのかい!」
カズトは先ほどと同じで飛んでくるマントをよける事無くただ歩いていく。高速で回転するマントはまたカズトに当たる直前で不自然に曲がっていく。
「……なっ、君は上級魔技の使い手か!」
驚いたようにセブンは後ろに飛び跳ねるように下がった。
「何よ、あの子! あんな魔技は見たことがないわよ」
ドナは立ち上がり窓に手をつけて食い入るように見つめる。
「どうしたのです姉上? 心配しなくても私の部下は圧勝で勝ちます。これで姉上の竜士の仇もうてますよ」
フェミナは笑みを浮かべながら腕を組み悠然と競技を眺める。
「うっ……そうね、勝ってもらわないと困るものね……」
ドナは汗を流して目を泳がせる。




