15 ハメられた・・
「じゃあ、あいつが最初に提示した金額は?」
「…………ある。それもギリギリ」
フェミナは不思議そうに顔を上げた。
「どういうことだ、何故奴が私の財布事情を知っている?」
「そういえば、どうしてお前はこんなことになったんだ?」
「まさか……」
「うおっ、急に引っ張るな!」
フェミナはハッとしてカズトを引っ張って階段を上がっていく。
競技場の上の階段を登っていくと長い通路に出た。その通路から歩き進むと透明な窓ガラスから競技場が見渡せる特別席があった。フェミナは扉の隙間からその部屋の様子をうかがった。
「ちょっと話が違うわよ、私は二百万って言ったでしょう」
「ほほ、向こうから言ってきたんですよ」
(なっ、セブン? 何故姉上がセブンと……)
「本当に頑固な子なんだから。ぷっ……あはは、お腹が痛いわ。あの子負けたらどうするつもりなのかしら。もしかして私に貸してなんて言わないわよね。あははは」
腹を抱えながら高笑いするドナの姿を見てフェミナは目の前の光景を疑った。
「それにしても四百万か、それだけあれば欲しかったバッグでも宝石でも全部買えるわ」
「全く私が怪我をしたなどと嘘までついて。心が痛まないのですかドナ様。実の妹君を騙して」
「だって~、どうしてもバッグが欲しいんだもの」
「ほほ、いいではないですか。これで私も楽をしてランキングを上げることができます」
「そうそう、いいじゃない。あはははは」
聞こえてくるドナの笑い声にフェミナは歯を食いしばる。隣で見ていたカズトはその様子に恐怖した。




