27 ご都合主義だった・・
「じゃあ次は……」
リンイはソワソワしながら横にいる人物をチラチラと見ている。
「ちょっと待て! その前にひとつ言わせてもらっていいか」
「どうしたの? カズちゃん改まって」
「こいつは誰だよ!」
カズトはリンイの隣りに座っているスーツ姿の男に指をさしていった。
「誰ってカゲロウちゃんじゃない」
「いや、知ってるけど一応驚いておこうと思って。さっきは何も言わなかったけど変わりすぎいだろこいつ! もう紳士だよ!」
カズトはカゲロウを見ると最初の薄汚れた不気味な囚人とは別人のように変貌していた。長く伸ばしていた髪を後ろで縛り黒いスーツを着ている姿は貴族の生まれなのではと思わせるほど器量だった。
「リンイ聞いておくが、お前カゲロウにキスしたいだけじゃないよな」
「やだ~ カズちゃんまさか嫉妬してるの」
「いやいい、聞くまでもないことだった。早く済ませよう」
カズトはカゲロウの額に唇を近づける。
(大丈夫か?怒って襲ってきたりしないよな……)
そんな心配をしていたが特になにも起きることなくスムーズに進んだ。意外だったのはカゲロウが普通に仲間の証をしてくれたことだとカズトは現実か確かめるように自分の額をさすった。
「僕はしないからな。お前たちとは約束したから仲間になったけどそいつは別だ」
シュベルコスはそう言って腕を組みながら顔を背けた。
「じゃあ、私で最後ね!」
リンイは嬉しそうにカゲロウに迫り寄る。
「キスは額にだからな」
「えっ? なんのこと?」
「カゲロウ嫌なら断っていいぞ」
「…………」
カゲロウは表情一つ変えずにリンイを見つめる。




