23 脱獄成功
リンイに抱えられながらカズトは竜族に驚きと尊敬の念を思わずにはいられなかった。魔族より神族よりも優れ秀でた身体能力をもつ竜族の力はただ走るだけで芸術に見えるほど美しい走りだった。カズトはようやく止まった涙を拭いて目を凝らして竜族の走りを見続けた。
走り出した竜族に拳銃の弾なんて物は何の意味もなさなかった。青く幻想的に光るその足は一瞬にして刑務所から離れていき刑務所を囲う巨大な壁をいともたやすく飛び越えていった。
「すげえな……竜族」
呆然と思わず口に出したカズトの言葉にリンイは嬉しそうに笑顔見せた。
「2回目ね……」
「好きな所に座ってて。私はシャワーを浴びてくるから、あっ、戸棚の中にお菓子があるから食べていいわよ」
小さな部屋の中でカズト達はリンイの住んでいる借家の一室にいた。
部屋の中片付いていて女性的な小物やカーテン、くまのぬいぐるみを見たときはカズトは少し吐き気がした。
「勘弁しろよな……あの顔じゃなかったらとても付き合っていけないぞ」
カズトはくまのぬいぐるみを手に取りながら呆れたようにベッドに倒れ込んだ。
「ちょっと、あんまり色んなところを漁っちゃダメよ」
「うおっ!」
「うわっ!」
「…………」
風呂場の扉からリンイが顔を覗かせ皆の部屋を漁られてないか確認する。
カズトとシュベルコスはシャワーの途中で頭から水を垂らしながら顔と共に覗かせる腕や肩に視線がいった。その姿は本当に女にしか見えず本当に女だと思っているシュベルコスには刺激が強すぎたようで顔を真っ赤にしてリンイから慌てて視線を外した。
「分かったからとっとと風呂に戻れよ!」
本当は女じゃないと分かっているカズトにもリンイの裸は魅力的だと感じてしまいそう感じてしまうことが恐ろしく不快だった。
「あとカゲロウとシュベル坊は次一緒にお風呂入りなさいよ。アンタ達は汚いんだからそれまでベッドとかには座っちゃダメよ!」
「…………」
「返事は!」
「わっ 分かったよ!」
「…………」




