16 仲間になりたいそう
男は無精ひげに歯並びが悪く、いかにも犯罪者という顔つきだった。
「俺たちに気づいていたのか?」
「ああ、お前たちが入ってきた時に扉の開く音で目が覚めたよ。また看守が来たのかと思っていたらどうやら仲間を探しに来た奴らだって分かって興奮して目が覚めちまったよ。俺はバンウ・レンソよろしく」
不敵な笑みを浮かべ自分の紹介をした。
「あら聞き耳立てていたのね」
リンイは少し不機嫌そうな顔になる。
「へへ、隣の部屋のアイツが教えてくれただけさ」
「アイツ? あの隣の囚人と知り合いなのか?」
「アイツは相当イかれてるぜ。アイツの腕を見なかったか? 面白いことになっているんだけどよ」
「いや、暗くて腕までは見えなかったな」
それは残念とバンウは話をそこでやめた。
「まあいい、俺を連れてってくれよ、自由にしてくれるのならなんでもするぜ」
男は立ち上がってニヤニヤ笑いながらカズトの前まで歩いてきた。
「どうする? 仲間にしないなら私が眠らせるわよ」
リンイはバンウに聞かれぬようにそっとカズトに耳打ちした。
カズトはバンウの顔をよく見て言った。
「仲間になるのはいいけど戦力が欲しいんだ。他に役に立ちそうな囚人を教えて欲しいんだけど、できれば言う事を聞いてくれそうな」
「ちょっと! カズちゃん」
「おう! それなら何人か心当たりはあったがどいつもこいつも処刑されちまってよ。俺が知ってんのは隣のイかれ男と前の牢屋にいるシュベルコス坊やだ。戦力が欲しいなら……」
バンウは隣の部屋に親指を指した。
カズトはバンウが口にする隣の男が気になっていた。何が気になっているのかは分からないがもう一度会ってみたいと思っていた。
「あの男がなんの罪を犯したか知っているのか?」
「ああ、アイツはカゲロウって名の元軍人だった男だが戦争で敵も仲間も見境なく殺っちまったらしい。それで自分の隊を潰したって話だぜ」
「仲間殺し。仲間には一番したくない人種ね。それじゃあ後はもうシュベル坊やとやらに期待するしか無いようね」
ため息をついてリンイは前の牢屋に歩いていこうとする。
「その男を紹介してくれないか?」
カズトはカゲロウの部屋を見つめたまま立ち止まっていた。
「ん?」
「ちょっと、カズちゃん何言ってるの」