15 牢屋
リンイが冷や汗をかきながら引きつった笑みを浮かべた。
地下の牢屋は全て鉄の扉でできた個室になっていてずらりと壁に扉が並んでいた。
「どうする? 面倒な奴に当たると騒がれた時厄介ね、扉閉めとく?」
「いや、もう一度あの軋む音を聞きたくはないな。奥の奴を誘おう」
地下の牢獄は上とは別の意味で嫌な臭いをさせていた。暗闇の中ロウソクの灯りだけを頼みに進んでいくと二十メートル程歩いた所で一番奥の牢屋についた。
「ここにするの?」
「ああ、気をつけろ。死刑囚だからな突然襲いかかってくるかもしれない」
「嬉しいわ、心配してくれるのね~でも大丈夫よ、聞き分けのない子だったらすぐに眠ってもらうから」
リンイは右手の小指から順に指を折り曲げて握りこぶしをつくる。
「頼もしいな、じゃあ開けるぞ」
看守か盗ってきた鍵を扉に書かれた番号と合わせて鍵を開けた。扉は手前に開き二人は中をロウソクで照らした。
死刑囚の収容されている牢屋は狭くトイレとベッドが置かれその横に人が通れるほどのスペースしかなかった。そんな狭い中に二人が想像していた凶暴な犯罪者とは裏腹な黒髪の長髪の男がベッドの前にかがんでいた。その男は両手に手錠をかけられ髪で顔が隠れていて起きているのか寝ているのかも分からなかった。あまりの不気味さにカズトは開いた扉をすぐに締め直した。
「カズちゃん次に行きましょう。あんな幽霊みたいな子仲間にしたくないわ」
「そうだな……んっ!」
「どうしたの、カズちゃん?」
「なんかさっきの奴がつぶやいてる……」
カズトは扉に耳を当てて中の言葉を聴いてみる。
「……れた、…………た」
「やっぱ何か言ってるけど声が小さくて聞き取れないな」
「もうっ、いいじゃないあんな子! それより次の子にかけましょう」
リンイは無理やりカズトを扉から引き離して次の扉の前まで引いて行った。
カズトは先程の男が少し気にかかったが気を取り直して次の扉の鍵を開けた。するとその部屋には待っていましたと言わんばかりに黒い長髪の先程の男より痩せ干せた男がロウソクに明かりを灯して座っていた。