14 仕事しろよ
リンイの言ったとおり看守はろくに仕事をしておらず建物の中にすぐに侵入することができた。刑務所の中は汚れていて白い壁はシミや汚れで茶色く染まっており外の悪臭よりも強烈な臭いを放っていた。牢屋の中にはわらが敷き詰められ囚人たち皆眠っていて扉の前に立てられたままの小さなロウソクの灯りを使ってカズトたちは囚人を起こさぬよう足音を立てずに静かに奥の部屋まで進んで行く。
「臭いな、看守たちも良くこんな匂いの中で仕事ができる」
「ここはろくでなしのたまり場だからね」
鼻を抑えながら進んでいくと地下に続く階段を見つける。カズトはリンイに確認するように顔を合わせるとリンイは頷いて先に進み安全を確認するとそれをカズトに合図する。階段を下りてみるとそこには頑丈な鉄の扉が閉まっていた。
「成程、看守が手を抜くわけだ。この扉さえあれば地下の囚人は逃げられないからな」
カズトは扉をなんとか開けられないか色々調べてみるが扉は分厚く頑丈で小さな鍵穴が二つあるだけで看守の鍵がないことにはどうしようもなかった。
「仕方がない俺が看守から鍵を盗ってくるからリンイはここで待っていてくれ」
「大丈夫? 私もついていきましょうか」
「俺はスパイだぞ。鍵を盗りにいって捕まるようなヘマはしない。いいから待っててくれ三分以内に戻ってくるから」
カズトは言ったとおり三分かかったかどうかという様な速さで扉の鍵を持ってきた。
「スゴイは、さすがスパイ」
今度はリンイが惜しみなくカズトを褒める。
扉の鍵穴に鍵を通して回すと鍵が外れる音がし扉は開いた。扉の開くときさびた鉄の軋む音が静かな刑務所内に響き渡りその後静かな静寂に包まれる。
「……セーフ」