11 仲間が1人出来ました
リンイは真実かどうか確かめる術がないので、ただカズトの声を聞いて判断した。
「じゃあ私は王女様になれるって事!」
リンイは驚いてカズトを見る。
「いや、それだけは死んでもないな!」
契約書をしまいながら絶対の自身をもってカズトは言った。
「へー、王子様に出会ったと思ったら本物の王子様だなんて、運命よ! これは運命!」
両手を合わせ神に感謝するように目を輝かせながらリンイは空を見上げる。
「悪いけど俺は魔王の息子じゃなくて孫だから王子じゃなくて王孫だよ」
「もー最高! 夢のようだわ!」
リンイは完全に興奮していて今は何を話しても聞こえない様だ。
「リンイいいのか? 俺は魔国のスパイだぞ、竜国の敵ってことだぞ」
「ん? いいのよ、別にどうせ国が私に何かしてくれるわけでもないし、それより王子様に会えた事の方が最重要事項だわ!」
踊るように夜の道の中でリウイは鼻歌を歌った。
しばらくしてリンイが落ち着いた頃にカズトは自分の目的を詳しく話した。
「だからリンイこの刑務所に収容されている、できれば死刑囚で死刑の期日がもうすぐの囚人を仲間にしたいんだ」
「成程ね、だから刑務所に忍び込むわけね。けどどうして死刑囚を選ぶの? 処刑日が近いなら最初は言う事を聞くかもしれないけど死刑になる様な奴らはすぐ言う事を聞かなくなると思うし自由になった途端に何をするか分かったもんじゃないわよ」
「刑務所に入れられる奴らの中には反省してる奴もいるだろう。それに善人もいることが多い」
ポケットからカズトはアメを取り出して口に入れ一つはリンイに渡した。
「善人?」
アメを口に入れリンイは先程のカズトの言葉に疑問に思った。
「警察は基本極悪人は捕まえないんだよ。頭の良い極悪人っていうのは代わりを立てるかコネや金でなんとでも出来るからな。本当の極悪人っていうのは大金を持っている奴らのことだ」
「ふーん、金持ちが極悪人っていうのは賛成だわ、でも都合良くそんな運のない子がいるかしらね? 言っておきますけど戦力になってもブサイクな男は仲間に入れないわよ!」
「それはリンイに関係ないだろ」
「関係あるわ! 私はもうアンタに一生従いていくって決めたのよ」
リンイが胸に手を当て真剣な表情でカズトに顔を寄せた。
「おい、今日あったばかりの俺に良くそんなこと言えるな」
呆れたようにカズトはリンイが本気なのか確かめる。
「リンイは別に犯罪者でもなんでもないだろ、そんな簡単に決められても覚悟がない奴は仲間にしたくないんだが」
「覚悟なら決まっているわ!」
リンイは空に光る無数の星に指差して叫んだ。