プロローグ
ドキドキの初投稿です。
「では、キサマは神国からの密入国者ということで間違い無いな!」
警棒を持った憲兵の男が書類を見ながら目の前に縄で縛り椅子に座らせている少年に問いかける。
「だから違いますって、俺は母親が魔族だから魔国には密入したのではなく帰国しただけなんですって。ちゃんと入国許可証も持っているじゃないですかー」
少年は笑顔を作りながら否定する。
「この入国許可証は期限切れなんだよ! それにキサマは神国で軍に所属していた経歴がある。つまりスパイの可能性もあるってことだ!」
「そんなスパイだなんて、僕はまだ子供ですよ、未成年ですよ、お酒も飲めませんし飲みたくもありませんよ。大体なんで大人はあんなにお酒が好きなんですかね? お金の無駄ですよね」
「話を誤魔化すんじゃない!」
「勘弁してくださいよ。僕がスパイに見えますか?」
「当たり前だ……」
そう言いかけ、憲兵の男は少年を下から順に見定めるように見上げていく。
黒いブーツを履いてポケットがやたら多く付いている黒いズボンに黒いシャツ、そして黒のローブを羽織。黒い髪の色に黒色のリュック……。
「暗いわ! 黒、黒、黒! 黒すぎるだろ完全に黒だよ、お前は!」
憲兵の男は口からつばを飛ばすほど大声で少年を否定する。
「いや違いますって、ほら白いと汚れが付いたとき目立つでしょう、だから……」
「言い訳するな! 服の汚れを気にするとかお母さんかお前は! とにかくお前の身柄を……」
遮るように扉をノックする音が聞こえ、書類を持った軍服姿の女性が入ってくる。
「すみませーん、こちらの方もチェックお願いします」
「後にしろ、今取り調べ中だ!」
「……何を言っているんですか」
女性は呆れたように書類を机の上に置いた。
「取り調べごっこは程々にしてくださいよ。仕事は山ほどあるんですから」
「ごっこだと? キサマにはこれがごっこに……」
憲兵の男は縄で縛っている少年を見て、
「へ? ……」
憲兵の男は何がどうなっているのか理解できなかった。狭い個室に扉は一つだけの取調室で目の前に座っていた少年の姿がどこにもなく、最初からそんな少年など居なかったかの様に物音一つ立てず消えていた。
「はぁ~、面倒な憲兵に捕まったな。やっぱり最初から使っとけば良かった」
少年は大きく背伸びをして街の中に歩いて行った。
「にしてもさすがは大国。デカさが違うな」
少年は建物を見上げ微笑えんだ。
「……それじゃあ、会いに行ってみるかな。おじいちゃんってやつに」