第一話「菌兆治県」
ここは菌兆治県。田舎といえば田舎ででも、都会と言われてみれば都会でもある。そんな少し不思議な土地である。そんな菌兆治県にある数少ない不動産屋、愛土不動産には様々な物件査定依頼などが舞い込んでくる。
そんな菌兆治県の不動産屋で働く金城瀬奈という男がいた
「かったりーなぁー」
車の運転席に座り悪態をつく男、彼だった
「しょうがないでしょ。菌兆治県には不動産屋が私たちのとこぐらいしか無いんだから」
そういい彼をなだめる女性は、綾瀬川結菜。瀬奈と同じく不動産鑑定士の資格を持ち、物件の査定を主に行なっている瀬奈の相棒である。
「そうだけど…たまに変なとこ当たるのがやなんだよなぁー」
1日前
風通しがいい路地にある一軒の建物の中
はぁ、今日は天気もいいっていうのに働かなきゃなんねぇなんて大人ってのはクソめんどくせぇな。
外の景色は夏らしく青々しい風景が広がっている
あぁー帰りたい。寝たい、めんどくせぇ
机に突っ伏し眠りにつこうとした
「ごめんください」
かすれるほど弱々しい声が聞こえた
夏の猛暑、部屋の中の凍えるほどの寒さが広がる部屋の扉があき、外の熱風が混ざった
誰か来たな…んどくせぇ
顔を上げ目をやるとそこにはやつれた姿の女性が立っていた
こりゃあ、ほぼ確定だな
毎回こういう客のときアタリがくる。物件を隅々まで調査して査定額を出さなければならない不動産鑑定士にとってそういう物件は非常に酷なものである
「はいはーい」
女性は疲れた体をゆらゆらとさせ言った
「あの、早速ですが…その、物件を売りたいんです」
こいつ相当疲れてんな。でも対応すんのめんどいな
こんなときは
「おい結菜!客来たぞ、客」
その声を聞くと部屋の扉を空け結菜は急いで出てきた
「お待たせしました、お客様」
結菜は慌てて客を席へと案内すると慌ただしく準備を始めた
俺は基本手続きとかは全部結菜に任せている。理由は普通にめんどくさいからだ。
こんなに俺が無気力にだらだらと働いていてもクビにならないのはやはり圧倒的人手不足にあるのだろう
取り敢えず結菜に詳細教えてもらえるまで寝るか
「おーきーなーさーい!」
聞き慣れた声で目を覚ますと結菜が席の前に立っていた。あぁ、ここから詳細聞いて、とか色々面倒いな本当
「で?」
「まぁ、ほぼ確ね!あの女性は住んでた一戸建てで不可解な現象に悩まされて、今はアパートを借りて住んでるんだって。でも、生活費に困ってるらしくてね」
「それで売りたいと…」
「じゃあ早速明日行くから」
「はいはーい」
まじか、そういう物件は疲れるんだよな…最悪死ぬことだってある。今日の家は当たり障りのない普通の物件だったけど普段普通の物件も担当してるからこそ不気味さ、危険が伝わってくる。
瀬奈は荷物をまとめ立ち上がった
「じゃあね瀬奈!明日はしっかり来るのよ」
軽く会釈し仕事場をあとにし、その足のままスーパーへと向かった
今日買うものは決まっている
えーと、寿司と肉、コーラとポテチ、それと適当な惣菜、袋麺、冷凍チャーハン、カツサンド、カツカレー、カツ丼、カップ焼きそば
次々と好きなものを片っ端からカゴへと突っ込んだ
こういうアタリの物件に当たった前日、必ず自分の好きなものを全部食べることにしている。本当に命を失ってもおかしくないからだ。できるだけ後悔は残したくないからだ。後悔は霊をこの世に縛り付け人に害を及ぼす可能性があるものにしてしまうことがあるからだ。ああいう物件を回っていると自ずと霊にも詳しくなる
カチャ
家のドアを開け、帰路についた
ワン!ワン!
そういい走って向かってきたのは相棒のゆう、柴犬だ
ひとしきり撫で終えるとそのままソファーへと着いた
惣菜温めるか
一つ一つ惣菜を電子レンジへとほおりこんだ
この作業が地味にめんどい
待ち時間電子レンジ越しに移る自分を見つめて気持ちは落ち着いてることを確認した
唯一の心残りはゆうだけだ
温めが終わると氷が入ったグラスにコーラをなみなみ注ぎ、広いテレビ前のテーブルに料理の数々を並べた。テレビをつけそこまで好きではないが見てると明るくなれるバラエティ番組をつけた
「もう食えねぇよぉー」
んがっ!
目を覚ますと外は明かりを灯していた。今何時だ?5時30か、まだ3時間近くあるな。
「いくか」
そそくさと準備体操を終えると朝のジョギングへと向かった。
帰宅すると、息をつく暇なくシャワーを浴び、着替え、車へと乗り込んだ
「おまたせ」
「ちゃんと来たね、瀬奈」
「行くぞ、乗れはやく」
「うん…」
結菜はゆっくりと、とを開け車へと乗り込み席へと重い腰を下ろした。いつもそうだアタリに当たると少し結菜は元気がなくなる
「ナビよろ」
「まかせて」
会話なんてなかった。今から自分たちが向かう場所におののいていたから、危機を感じ取っていたから




