第3話 初めての戦闘と共闘です
サクラ>クエスト終えて無事魔法ゲットしたぞ!
ジン>乙おめ〜其れでどんな魔法覚えたんだ?
サクラ>其れは見てからのお楽しみ!さっきの噴水で待ってるぞ〜
ジン>オッケー
音声チャットを終えると先程迄居た噴水の縁に腰を下ろしてジンを待っていた。どうでも良いが、さっきから遠巻きにプレイヤーたちがこちらをチラチラと見ている。魔法職のプレイヤーがそんなに珍しいのだろうか?
こうやってプレイヤーを眺めていると、何が人気なのかとかがよく分かる。今のところ俺以外に魔法職をほとんど見かけない。大体3/100位だろうか?其れ位人気が無い。もしかしたら此のゲームでは不遇扱いなのだろうか?其れも仕方ないか。何の魔法を覚えられるのかランダムらしいからな。ちなみに魔法より人気が無いのは恐らく弓矢。今だに1人も弓を装備しているプレイヤーが居ない。此の手のゲームでの弓の扱いが不遇で育てれば強いみたいなのが相場と決まっているが、此処もそんな感じなんだろうか?
「お、本当に魔法を覚えたみたいだな」
「思ったより早かったな」
「まあな。其れでどんな魔法覚えたんだ?」
「さっきも言ったろ実際に見てのお楽しみ。其れで此れから何処に行くんだ?」
「そうだな、初期費用で装備とかアイテムを揃えるのもありだが、どうせなら早速狩りに行くか!サクラがどんな魔法を覚えたのか見てみたいしな」
ジンの提案で俺たちは狩りへ行く事にした。俺たちが来たのは"クワエトの森"通称東の森と呼ばれている場所だ。
「クワエトの森か。此処が低レベル向けのエリアなのか?」
「まあ、そうだな。周るなら東西南北の順だな。特に北!あ其処はかなりエゲツないからスキルとか装備をちゃんと揃えてから行く事だな」
「そんなに敵が強いのか?」
「いや、ステータス自体は東とも大して変わらない。ただ、スキルとステージの環境がな……俺も少しだけ行ったが危うく死ぬところだった……」
「そういえば、此のゲームでのデスペナルティはどうなるんだ?」
デスペナルティ、略してデスペナ。オンラインゲームでは大抵HPが0になると、ゲームオーバーになり最初の街へ強制的に戻され、一時的にステータスが下がったり、アイテムの使用制限が掛かったり等、プレイが不利になる制限が掛かったりするのだ。
「ん〜、難しい質問だが正確に言えば此のゲームではデスペナは無いんだよ」
「え、そうなのか?玄人向けゲームなのに其処は優しいんだな。意外だ」
「優しい?まさか!此のゲームは鬼畜だよ!」
「え、そんなに難しいのか!?」
「そうじゃねぇよ。此のゲームがリアル寄りなのは知ってるだろ?」
「そりゃあもちろん」
そう、此のゲームはなるべく現実に似通る様に制作されたゲームなのだ。例えばスキル、現実では1つの事を極めようと思えば努力はもちろん所謂才能が必要になる。更に其の人に向き不向きがある。此のWLOでは其の才能の再現としてスキルを覚えるのにランダム性を取り入れたらしい。
「ん?リアル寄り?……まさか!?」
「ゲームオーバー、つまり其れはキャラの死亡。要するに強制キャラ削除だ」
「何だよ其れ!?ほぼ糞ゲーじゃないか!!」
「まあな、ただ検証班の調べによれば死亡時にログアウト迄にしばらく時間差があるらしい。そこから考察班がWLOにも蘇生魔法やアイテムがあるのではと考えているらしい」
「其れはだよな……回復魔法やアイテムもあるんだから当然だよな。まあ、HPも有るし強い相手とか一撃死系のスキルとかに気を付ければ良いか……」
「HP?無いぞ」
「は?」
「此のゲームには魔法やスキルを使う為のMPと走ったり戦う為に必要なSP事スタミナポイントだけだ。実際もうSPの最大値が少し減ってるだろ」
正直どれがSPバーか分からない。だが確かに左上に2本バーがある。そして上のバーには変化が無いが、其の下のバーは確かに最大値が減少していた。
「え、此れってMPとSPバーなのか!?HPとMPバーじゃなくて!?」
確かに回復魔法の説明をシスターから受けている時に、シスターは決して回復魔法でHPが回復するとは言わなかった。傷や異常状態を治すと言っていたのだから。
「つまり、例えばゴブリンが俺の首をチョンパされれば……」
「蘇生魔法やアイテムが無ければ其れでゲームオーバー、今のサクラというキャラは削除されるな」
俺は其の時、文字通り膝から崩れ落ちた。
何という無理ゲー……此のゲームには所謂メインクエストやストーリークエストと呼ばれる物は無い。だが、此の手のタイプには其れ其れのフィールドにフィールドボスと呼ばれるエネミーが居る。つまりそいつらを最悪初見で撃破しなければならないのだ。
「あ、おれようじおもいだしたから此れで」
「こらこらこらこら、逃げるな。其れに、碌に装備やアイテムを揃えないで来たのはお前の方だろ。其れってつまり実際に戦ってみたかったって事だろ?」
「ゔっ」
図星だ。
「心配するな。前衛の俺がちゃんとヘイト稼いでやるから!ただ、魔法を俺に当てるなよ!」
*ヘイトとはゲーム用語で、エネミーの敵対心が自分に向かい、攻撃対象になる事だ。此れは敢えて自分や仲間に向かわせて、味方が安全に攻撃や支援が出来る状況にする事をヘイトコントロールと言われる。
「分かったけど、お前も気をつけろよ。目の前で死なれたら普通にトラウマだぞ」
そんな訳で俺たちはエネミーと戦う事になった。
「ファイヤー・バレット!」
ファイヤーバレット、複数の小さな火弾を同時に相手へ放つ攻撃魔法。現在火弾は1つのみ。
「ウォーター・ウォール!」
ウォーターウォール。水の盾で相手の攻撃を防ぐ防御魔法。現在は小さな盾1枚のみ。
「エアー・バレット!」
エアーバレット、複数の小さな風弾を同時に相手へ放つ攻撃魔法。威力は火魔法と同文。
「ストーン・ウォール!」
ストーンウォール、土の盾で相手の攻撃を防ぐ防御魔法。威力は水魔法と同文。
「ライト・レーザー!」
ライトレーザー、光を収束した光線を放つ攻撃魔法。現在の威力は糸の様な細いレーザー。
「ダーク・ニードル!」
ダークニードル 、対象の影や足元に針の様な剣山を生やす攻撃魔法。現在の威力はまきびしの様な小さな針を生やすのみ。
「ヒール!」
ヒール、傷を癒し治す回復魔法。現在の力では切り傷を治す程度。
複数のエネミーとの戦闘で一通り魔法を試した。ただ、まずい事に現在MPが0になっており取り敢えず街に戻ろうとジンに提案しようとすると、ジンは何故か先程の俺の様に膝を地に付けていた。
「何やってんだお前?」
「何で……」
「は?」
「何で、お前7種類も魔法が使えるんだよ!?まさか他にも使えるのか?!」
「い、いや、火水風土光闇回復の7種類だけだ」
「マジかよ……設定以外で聞いた事ないぞ複数属性持ちなんてよ……」
「ん?え、複数属性持ちって俺だけなのか!?」
「あ、ああ、魔法職が少ないのもあるが何故か誰も居ないんだよ。其れにしても参ったな……」
「何がだ?」
「お前が唯一の複数属性持ちって事だ。考えてみろ、其れが出来る唯一のプレイヤーそんな事を他のプレイヤーが知ったらどうなるか。簡単だ、クランへの酷い勧誘やアカウントをリアルトレードの誘い、下手をしたら他のプレイヤーにお前を渡さない為にPKまがいで、お前のキャラを削除させるかもな」
マジかよと俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。確かに戦闘は楽しかったし、魔法を使うのも楽しかったが、未だ俺は此のゲームが好きになった訳じゃない。だが、流石にいきなりPKでキャラ削除されてはたまったもんじゃない。
「というか、此のゲームPKとか出来るのかよ……やっぱり無理ゲー……」
PKプレイヤーキラーの略称。主に強いプレイヤーが自分より弱いプレイヤーまたは初心者プレイヤーを倒し、経験値にアイテムや金を効率よく入手する為の方法。基本的にマナー違反と呼ばれておりPKを行うプレイヤーは他のプレイヤーから忌避されている。
「いや流石に当人同士の許可の無いPVPは出来ない様になってる。ただ、其れであってもそういう奴等は裏口見つけてPKしてくるだろうって話だ。とりあえず、お前はしばらく俺以外とパーティー組まない方が良いな。とは言っても、俺はもう別の奴らとパーティー組んでるからそんなに頻繁に組んでやれないんだよな〜あ"ー!もう、此れは流石に想定外だ!!」
「ははは、まあ其処等辺はゆっくり考えようぜ。MPも未だ未だ回復してないから、とりあえず街に戻ろう」
「其れもそうだな」
俺たちは重い腰を上げ、街へ戻る事にした。戻る道中、俺はジンに気になる事を聞く事にした。
「そういえばよ、戦闘中や戦闘後にも思ったんだけど、エネミーや其のドロップ品、其処等辺に生えている薬草みたいなアイテムに名前の表示が出ないのは何でだ?」
スライムみたいなエネミー、ゴブリンみたいなエネミー、狼みたいなエネミーと戦いドロップ品も手に入れた。大体此の手のゲームにはプレイヤー名のAR表示みたいに、エネミーやドロップ品薬草の様なアイテムにも名前が表示される。だが、今回戦ったエネミーや得たアイテムにも其れが無かったのだ。
「ああ、其れはお前が初めて戦った相手だからだ」
「ん?初めてって其の後何度か同じ奴ともやり合ったけど表示されてなかったぞ。もしかしてバグ?其れとも回線の不具合か?」
俺が悩んでいるとジンが「ぷっ!」と吹き出して笑いだした。
「何だよ、大事な事だろうが。最悪ゲームを再インストールしなきゃならないんだから」
「ああ、すまんすまん。バカにした訳じゃないんだ。ただ、懐かしくてな。俺もβ時代に同じ事を思ったからな」
「β時代にもあったという事は、此れは不具合とかじゃなくて仕様って事か」
「まあ、此れもWLOの魅力ってやつだよ。いきなり訳の分からない仕様を見せてプレイヤーを困惑させるのは」
「開発者絶対ドSだよな」
「ちゃんと教えてやるから安心しろ!」
街に戻った俺たちが最初にやって来たのは"旅人の館"冒険者ギルドと呼ばれている建物だった。中に入ると見た目通りかなりの大きさと広さだ。ジンは入り口正面にある受付ではなく、迷う事なく左側の受付に足を運んだ。
「ドロップ品の買取をお願い」
「かしこまりました。買取の場合金額に不満が有ってもキャンセル出来ませんがよろしいですか?」
「ああ、良いよ」
そう言ってジンは先程のドロップ品を全て出した。すると受付のお姉さんは「分かりました。少々お待ち下さい」と応えてドロップ品をテーブルに並べて査定を始めた。1分と掛からずに査定は終了した。
「お待たせいたしました。こちらが査定結果の明細になります」
そう言ってお姉さんは色々書かれた紙を取り出したが、何が書かれているのかさっぱり分からなかった。というか読めなかった。
「すみません、俺ら字が読めないのでどれが幾らか教えてもらって良いですか?」
「かしこまりました。まず此のゴブリンの耳が50G次に此の……」
其の後お姉さんが、どれが幾らかの解説が始まった。
「以上で合計1000Gになります。ありがとうございました!」
俺たちは金を受け取り早々に其の場を離れると、すぐに別のプレイヤーが買取の手続きを行っていた。するとすぐに別のプレイヤーたちが其の後ろに並んでいた。買取出来るのが此処しかないのは少し不便だなと思った。
「で、買取の流れはこんな感じだ。はい、此れはお前の取り分。其れで此れを見てみろ」
ジンは俺に買取金額の取り分を渡し、取り出したのはゴブリンの耳だった。だがさっき迄AR表示が無かったのに【ゴブリンの耳】と表示されていた。
「此れってどういう事だ?」
「要はお前が此れを何のアイテムか知らなかったってだけだよ」
ジンの話をまとめると、例えばスライムみたいなエネミーが居たとして、其のエネミーのちゃんとした名前は知らない。其のエネミーのドロップ品を冒険者ギルドで鑑定または査定してもらい、そうする事でドロップ品やエネミーの名前が分かる様になるということだ。
「なるほど、でも最初明細みたいなのを渡してくれたよな?あれが読める様になれば一々解説してもらわなくても良いんだよな?」
「ああ、ただどんなに解説してもらっても字が読めないからな。恐らく語学系のスキルが必須なんだろう」
「そっか……まあ、其処は色々調べてみるか。今回はありがとうな色々助かった」
「こっちこそ、色々面白かったぜ!なぁ、良かったら俺のパーティーで一緒にやらないか?お前のスキルの事は喋らない様よく言っておくからよ」
「いや、いいよ。俺は基本ゲームは1人でマイペースにコツコツやるのが性に合ってるからな。其れに、お前のペースに合わせるのはキツイ」
「そっか、じゃあしょうがないな。何かあったらすぐにチャットしろよすぐ駆けつけるかなら!後、スキルの事は気を付けろよ!」
ジンと別れた俺はとりあえずどうするか考えていた。
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