病院にて
シザースグレーが目覚めたのは見知らぬ天井の下だった。意識が明瞭になってくると、耳元からすすり泣く声が二つ聞こえてきた。
「う」
揺れる頭を押さえながら、ゆっくり体を起こすと、一足先に目を覚ましていたロックブラックが、シザースグレーに抱き着いた。
「シザースグレー!」
シザースグレーはロックブラックの体重を支え切れず、せっかく体を起こしたのに、また病床に押し倒された。
「ちょ。ロックブラック……」
抱き着いてきたロックブラックの背中を優しく撫でた。
「よかったぁ。よかったよぉ」
ロックブラックはシザースグレーの胸に顔を埋め、服に涙を染み込ませながら泣いていた。シザースグレーは思わず、彼女の背中を撫でるのをやめて、その小さな体を抱きしめた。
「このまま死んでしまうのかと思いました……」
ペーパーホワイトがシザースグレーの手を取って強く握り、自分の額に押し当てていた。彼女は「うう」と声を漏らしながら、静かに泣いていた。
「二人こそ、死なないで良かった……」
シザースグレーがそう言うと、ロックブラックが私の胸に顔を埋めたまま「ごめんなさい。ごめんなさい」と呟き始めた。
シザースグレーはロックブラックの頭を優しく撫でた。
「どうして謝るの? 私は二人が生きてて良かったって言ってるんだよ?」
ロックブラックは「だって、だってぇ」とぐずりながら顔をあげた。
「私がシザースグレーを一人で戦わせたからぁ……」
ロックブラックのぐちゃぐちゃになった泣き顔につられてしまったのか、静かに泣いていたペーパーホワイトまでが、シザースグレーに抱き着いた。
「シザースグレーぇぇ……」
「ああ、ああ、ペーパーホワイトまで、もう、よしよし」
そう言って、シザースグレーは二人が泣き止むまで甘やかし続けた。