デビちゃんの警告
ここはとある豪邸。
広い広いお城のような建物。まるでお姫様でも住んでいるのではと思うほど豪華。
それらは全てロックブラックの趣味であった。
しかし、その屋敷には警備員もいなければ使用人もいないし、防犯カメラの一台だって設置されていない。
なにせこの豪邸に住んでいるのはロックブラックただ一人。
その屋敷はロックブラック一人のために建てられた、世界一の無駄遣い豪邸だった。、
そしてロックブラックの部屋。豪邸の最上階にある広い部屋の窓がコンコンとノックされた。
ベッドに寝転がっていたロックブラックが知っている窓からの訪問者などデビちゃんしかいなかった。ロックブラックは窓を開けた。
「デビちゃん」
「よぉ。ロックブラック」
デビちゃんは窓からふわふわと部屋に入り、そしてベッドのぬいぐるみの隣に着地した。
「こんな時間になんの用? 私を叱りにでも来たの?」
ロックブラックはデビちゃんを反抗的な態度で出迎えた。
しかしデビちゃんはロックブラックの反抗的な態度を気にもせず、テーブルの上に置いてあった色とりどりのお菓子の中からピンクの飴を選んで口に放り投げた。
デビちゃんはお菓子を頬張り「こんな時間にお菓子食べたら太るぜ」などと言いながら尻尾を振った。
「そんなことを言いに来たの?」
ロックブラックは窓を閉めてから、ロッキングチェアに腰掛けてデビちゃんを見下ろした。まるで高飛車なお嬢様のようだった。
「そんなわけないだろ」
そう言いながらデビちゃんは浮遊して、ロックブラックの目線よりも高く位置取り、私を見下ろした。
そして言った。
「ただ、警告をしに来たんだ」
「警告?」
警告という不穏な単語を使われ、ロックブラックは少し身震いした。
「ああ。警告だ。ロックブラックよ。お前、契約を忘れたわけじゃないだろ?」
デビちゃんはそう言いながらぐちゃりと笑った。
「俺はお前らのことを嫌いなわけじゃない。ただ、契約は絶対だからな。そこに私情は挟まない」
デビちゃんは厳しい声色で続けた。
「……魔法少女をやめるか。続けるか。どっちだ」
ロックブラックは思わず俯いた。
(話の展開が急すぎる。そんな決断を、今ここでしろと?)
ロックブラックは歯を食いしばり、手を強く握った。
「……続けないって言ったら、どうなるんだっけ」
デビちゃんが冷たく告げた。
「もちろん契約の不履行により、"処理"だ」
沈黙した。
「……お前らには同情する。だが、契約は契約だ。一週間待つ。それまでに答えを出せ」
そう言ってお菓子を頬張り、デビちゃんは窓を開けた。
最後に小さく、しかしロックブラックには確実に聞こえる声で呟いた。
「……シザースグレーを一人にしてやるなよ」
そしてデビちゃんは羽ばたき、ロックブラックの豪邸を後にした。