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忘却の儀式

作者: みゅる

7時ちょうどに目覚ましが鳴った。

毎朝きっちり鳴るのはありがたいが、ふと、秒針がずっと動いていないように感じる。

昨日も同じ時間に、同じ鳥の声で目を覚ました気がする……。

気のせいだと思い、学校の支度をしたあと、鏡の前に立ち、笑顔を作った。

これが、いつしか自分の習慣になっていた。

中学生ながら、毎日親がけんかする姿を見ているからこそ、自分だけは笑顔でいようと決めたのだ。

けれど、家族同士で怒鳴り合う声を聞くのは、やはりつらい。そんな気持ちを胸に抱えながら、僕は今日も学校へ向かった。


そんなある日、不思議な噂を耳にした。

「今日、放課後の音楽室で“おまじない”をやるらしい」

内容はわからなかったが、なぜかそれを聞いた瞬間、両親を仲直りさせる手がかりになる——そんな根拠のない確信が湧いた。

放課後、音楽室に行ってみると、自分を含めて4人の生徒がいた。

その3人にはどこか見覚えがあった。初対面のはずなのに、会ったことがあるような奇妙な既視感。

すぐに「同じ学校だからだ」と自分に言い聞かせたが、その違和感は残ったままだった。

三人の特徴は、一人は、服が少し汚れており、頬にはあざがついている子、もう一人は、気が強そうな子、最後にかなりやせ型でいかにもしゃべるのが苦手そうな子がいた。僕が付いた瞬間「これでまじないができるのか?」「これで全員?」と各々言い始めた。


「で、どうやってやるの?」

気の強そうな女子が唐突に声をかけてきた。あまりに自然な口ぶりに、僕は少し戸惑いながらも、

「この中の誰かが、知ってるんじゃないの?」と返した。

他の3人は口々に、「どういうこと?」「だまされた?」「聞いてないよ」などとつぶやき始める。

その中で、あざのある男の子が少し明るい声で言った。

「いったん、自己紹介しない? 俺の名前は斎藤和彦」

続いて、気の強そうな女子が面倒くさそうに眉をひそめながらも、

「わたし、桃瀬綾乃」と名乗った。

次に、しゃべるのが苦手そうなやせた男の子が、おずおずと手を挙げる。

「ぼ、ぼくかな……」

少し焦りながら、か細い声で続けた。

「お、小畑です……覚えなくて、全然大丈夫です……」

最後に僕が口を開いた。

「最後に僕かな? 近藤相馬って言います。」

こうして、ぎこちない自己紹介が終わった。


しばらく沈黙が続いたあと、斎藤くんが音楽室の奥を指差してつぶやいた。

「あそこの机に、なんかプリント……落ちてない?」

一斉にそちらを見ると、確かに一枚の紙が乗っていた。

「僕が取ってくるよ」と言って歩み寄り、それを手に取る。

紙には、儀式のような手順が丁寧に書かれていた。

タイミング的にも、内容的にも、ただのイタズラとは思えなかった。

僕たちは、疑いつつもその手順に従って準備を始めた。


特に難しいことはなく、準備はスムーズに終わった。

儀式を始めた瞬間——


……何も起こらなかった。


「やっぱり嘘だったのね」

桃瀬さんが呟き、それに皆ががっかりした様子を見せたそのとき、

突然、あたりが暗くなった。

漆黒の霧のようなものが音もなく音楽室を包み込む。

グラウンドで遊んでいた子供たちの声も、いつの間にか聞こえなくなっていた。

冷たい汗が背中を伝い、僕は身をすくめた。


斎藤くんが一番に願いを口にし、それに続くように他の3人もそれぞれの願いを告げた。

すると、霧の奥から声が響いた。

「代償として、今日の出来事はすべて失われる。だが——願いを一つだけ叶えよう」

次の瞬間、霧はふっと消え、音楽室にはまた、日常の光と音が戻ってきた。

僕たちは疲れきった顔で顔を見合わせ、無言でうなずき合うと、軽く挨拶を交わしてそれぞれ帰っていった。

家に着くと、僕はすぐに眠りに落ちた。


誰もいなくなった音楽室。

静寂の中、机の上のプリントがひらりと床に落ちた。

そこへ、何者かの足音が近づき、プリントを拾い上げる。

裏面には、小さな文字でこう書かれていた。

「願いの対象は一人まで」

そのことに気づいた者は、誰一人としていなかった。


朝。

7時ちょうどに目覚ましが鳴った。

毎朝きっちり鳴るのはありがたいが、ふと、秒針がずっと動いていないように感じてしまう。

自分が何かを忘れている気がした。夢を見ていたような、ずっと前に誰かと話していたような——けれど、思い出そうとするたびに頭が痛くなる。

悪夢でも見たのかと思い、僕はいつも通り学校に行った。

初めて作成した作品です。温かい目で見てもらえると助かります…

何回か推敲を重ねていますが、誤字や、表現としておかしなところがあればご報告お願いします。


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